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若い世代にとってのインターネットは密につながれる場所
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若い世代にとってのインターネットは密につながれる場所
オンラインサロンの人気などにより昨今、注目を集めつつあるコミュニティマーケティング。ソーシャルメディアから小さくて身近なコミュニティへと時代の価値観が少しずつシフトしていく中、コミュニティ運営プラットホームで注目を集める株式会社AsobicaのCEO・今田孝哉さんの話を伺う。
写真=三輪憲亮
「今、若い世代のコミュニケーションは、ソーシャルメディア等のオープンな会話からクローズドのコミュニケーションに変わっています。
特に、僕より若い10代から20代前半の人達はtwitterのアカウントに鍵をかけ、instagramで友人同士でDMをしながら、LINEで仲がいい者同士でグループを作ったりと、限定された小さなコミュニティの中で本音をやり取りする。彼らにとってはそれが普通です」
語るのは、コミュニティ活性化プラットフォーム「fever」を運営する株式会社Asobica代表取締役・今田孝哉さん。feverは世界中にあるコミュニティのエンパワーメントを目指し、2018年4月にローンチ。現在300以上の企業や団体のコミュニティがサービスを導入している。
「インターネットが世界中に広がり、ソーシャルメディアがあらゆる人と人をオープンな形でつないでいきました。でも生まれた時からそれが日常的な若い世代にとっては、密な繋がりこそが特別な体験なんです。
いいねをもらえるのは普通。いいねじゃなくて、インスタグラムのストーリーでスタンプをもらったり、コメントをもらって、そこから始まるコミュニケーションを楽しんでいる」
そしてコミュニティ化が進む理由はそれだけではない。
「今って、情報を信頼するのが結構大変だと思うんです。いろんな情報が混在していて、どんな情報が正しいのかの判断が難しい。それに毎回この情報が真実かどうかを判断するのは人間にとってそもそもコスパが合わない。
でも、人を信頼するのであれば、比較的簡単ですよね。この人が好きだとか、共感するだとか、単に実績を出しているだとか、一度人を信頼してしまえば、その人から発信される情報は全て信頼する。となると人はより一層特定の人やコミュニティから情報を受け取ったり、サービスを受けるようになるので、人間関係がどんどん狭く深くなっていきます。
そして今後AIの発展により、時間が余り、多くの人が孤独を感じるようになると思います。働く時間は減る一方で、一般的な平均所得は増えないとなると、家にいたりカフェにいる時間が圧倒的に増加するでしょう。そんな時代の流れの中で重要なのは、人と人が密に繋がり、お互いが無条件で信頼できるコミュニティ。feverはそういった温かい繋がりを形成していけるような場所にしていきたいと考えています」
例えばオンラインサロンなどコミュニティの運営形態はさまざまだが、それを支えるプラットフォームとして、多くのサービスが存在している。その中でfeverの大きな特徴は、感謝の可視化とメンバーのマッチングだ。。
「メンバー間では日ごろの感謝の気持ちを伝えるためにコイン(ポイント)を自由に送り合うことが可能です。ありがとうという感謝のメッセージとともにコインを送り合うことで、今まで見えなかった感謝や貢献度を可視化することができる。
また、溜まったコインは誰かのスキルやサービスを購入するために活用できるため、メンバー同士の助け合いや出会いが生まれ、コミュニティ内の活性化に繋がっています」
ネット上に数あるコミュニティは大きなものは数百人~数千人規模、小さなもので10人~30人程度のものもある。例えば幻冬舎の敏腕編集者、箕輪厚介氏が率いるクリエイティブ集団「箕輪編集室」や、メンバー同士が互いに刺激し合いながら、ビジネスの最初のチャレンジャーになることを目指す「ファーストペンギン大学」など、さまざまなコミュニティがfeverのプラットフォームを活用している。
「コミュニティの種類はさまざまです。食をテーマにしたコミュニティもあれば、クリエイターが集まるコミュニティもあります。
例えばあるコミュニティでは、メンバーの一人が農家出身で自身の野菜を提供したり、飲食店の人がいたら特別に50%オフのメニューを出したり、美容師の人が髪を切ったり、というようにそれぞれの得意なものを提供し合っています。それを、日ごろのやり取りで得たポイントないしはコインと交換していくわけです。すると、コインを貯めれば、野菜を食べられて食事もでき、髪も切ってもらえるという風になる。実際に議論メシというコミュニティの中では、日本円を使わず、コミュニティ内のコインだけで一定期間生活している人もいます」
feverのプラットフォームを活用するコミュニティの大きなポイントがユーザー同士のインタラクションにある。
「1対多ではなく、ユーザー同士のコミュニケーションを活性化することが、自分達が初期からずっと大事にしている部分です。現在はその手段として、ポイントの送り合いやスキルのマッチングといった機能をメインに提供していますが、それらは自分達が実現したい世界において、ほんの一部分、あるいは一機能でしかありません。
昨年12月にリリースさせていただいた法人向けのサービスでは、ユーザー同士のFAQがメインコンテンツだったりします。そういった意味で、僕たちは人と人の繋がりを密にしていくということを重要視しながら、小さなコミュニティを支えていけるようなサービスを作っていきたいと思っていて、それらの実現に向けた挑戦はまだまだ続きます」
次回Part.2では、今田さんがfeverを立ち上げた背景などについて、話を掘り下げていく。