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「孤独を解決する会社」を目指す
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「孤独を解決する会社」を目指す
オンラインサロンの人気などにより昨今、注目を集めつつあるコミュニティマーケティング。ソーシャルメディアから小さくて身近なコミュニティへと時代の価値観が少しずつシフトしていく中、コミュニティ運営プラットホームで注目を集める株式会社AsobicaのCEO・今田孝哉さんの話を伺う。
写真=三輪憲亮
feverにおいて、コミュニティの成功のため大切なことは何か。まず大事なのは、コミュニティを自走させることだ。そのためにはプラットホーム側が過度な先導をしないことが大事。まずは熱量の高いユーザー数人を見定め、彼らをしっかりと味方につける。そして、彼らのリーダーシップによって熱量の高いメンバー達がしっかりとまとまる状態を作り、その熱が徐々に他のメンバーに伝わっていくのを待つ。
「僕らはそれに加え、月に一回程度、コミュニティマネージャーを集めたオフラインイベント(Community Summit Tokyo)を開催しています。狙いは、コミュニティマネージャー同士の横のつながりを作り、ノウハウをシェアすること。イベントでは、各企業のコミュニティマネージャーに登壇していただき、成功要因や失敗のエピソードなどを話していただき、みんなでディスカッションをしています。
というのもまだまだ業界の知見が蓄積・共有されていなくて、企業がコミュニティを活用する場合って具体的に何をすれば良いの?という方が多くいらっしゃいます。なので、弊社としても業界の知見を底上げしていきたと思っていて、その一環として実施しています。
あとはサービスに関しても、正直自分達が思い描いてる世界から比べるとまだまだ1割程度のサービスしか実現できていないのが現状です。まだまだやりたい事が膨大にある状態です(笑)」
feverの認知を上げ、コミュニティをより活性化させたい。そのために大切なのは、たくさんの成功例を作り、それを世の中に伝えていくことだ。
「例えばアメリカではAminoというコミュニティサービスが若い人を中心に盛り上がっています。日本でいうとガラケー時代に流行したミクシィ以降、まだコミュニティにおけるプラットホームというものがない。スマホ時代に最適化されたコミュニティのインフラがまだないので、それを僕らが作っていきたい。
また昨年末には、法人向けにファンを増やすための、コミュニティ構築サービス『fever for business』の提供を開始。ユーザー主体の時代だからこそ、多くの企業が今顧客の満足度を高めたいと強く考えていて、その一つのソリューションとしてのユーザーコミュニティがより重要になっていくと思っています。有難いことに問い合わせもどんどん増えているので、非常に手応えを感じています」
今田さんがコミュニティに着目し、自らオンラインコミュニティを立ち上げ・運営。そしてAsobicaを創業した背景には、ある大きなテーマがあった。
「会社を作ると決めた時に自分の人生のほとんどの時間をそこに投下するという覚悟を持って始めました。その中で自分が人生をかけて取り組むべき大きなテーマはなんだろう、とずっと考え続けていました。
そこで出た答えが『孤独の解消』でした。前々回に言いましたが、僕自身も孤独というものが原因で、多少なりともつらい思いをしてきました。その原体験もありますし、何より孤独の解消は今後間違いなく、社会の大きなテーマになっていくと確信しています。
なぜなら、テクノロジーの発展が進めば進むほど、孤独な人がどんどん増えていくからです。例えば人工知能などの発達により、今後、人間が働く時間はどんどん減っていくと言われています。働く時間が例えばもし半分になったら、余った時間で何をしますか?
きっと、所得の多い一部の人はたくさん遊べると思います。でも、多くの人は働く時間が減っても給与が上がるわけではない。ベーシックインカムなども徐々に広がっていくと思いますが、一人当たりにそこまで大きなお金を付与できるかというとそれはあまり現実的ではない。となると、一人で家にいたり、お金を使わずカフェなどで過ごす人が増えると思うんです。つまり人によって孤独の時間というのは増えやすい社会になる。また孤独は、認知症患者や自殺の増加につながりやすいということがデータなどでも検証されていますので、そういったネガティブな要素は解決していく必要がある大きな課題です。
そういった意味でコミュニティは間違いなく、孤独という大きな問題への一つのソリューションになると考えています。そして『人の孤独を解決できる会社』こそが次の時代、ビッグカンパニーになる。そういった背景からこのテーマを選び、Asobicaを創業しました」
そんな今田さんは先日、アメリカの経済誌「Forbes」により「30歳以下のアジアを代表する30人」の一人に選出された(ファイナンス部門)。
「これからの時代、『非合理』がキーワードになると考えています。テクノロジーによって合理化された社会だからこそ、逆に『共感』だとか『なんとなく好き』といった感覚が大事にされるはず。全ては揺れ戻しなので、人がオープンに繋がりを求めていたと思えば、次は友人同士のクローズドな繋がりを求め、NetfrixやAmazonなどの、自分にあったものをレコメンドで届けてくれるようなAI等による合理化が進めば進むほど、次は非合理な体験や感情が大事にされるようになるはずです。
いわゆる熱量を生み出せる人や場所の価値がどんどん上がっていく。そういった意味でAsobicaは熱量や熱狂を生み出せる体験を増やせる会社にしたい。その思いは創業当初から変わっていないですし、会社名やサービス名全てにそういった意味を込めています。
とはいえ自分自身は、まだまだ経営者として未熟。多くの方に支えられながら、ようやくスタートを切ったところです。Asobicaの創業当初から言い続けている、日本を代表するグローバルカンパニーへの実現に向け、引き続きチャレンジし続けたいと思います」
Asobica(遊び化)というのは熱狂を生み出すという意味を持つ。feverというサービスはそのファーストチャレンジになるようだ。一貫した強い想い、そして今田さんのこれからの企みに、大いに期待したい。