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ユーザーとコンテンツのマッチングを、最適化する

麓 俊介 ふもと しゅんすけ さん (株)トピカ 代表取締役


メインサイトを持たず、Facebook、Instagram、YouTube、Twitter などSNSのプラットフォームから直接、情報を発信する分散型メディアは最近、徐々にメジャーな存在となりつつある。今回は動画メディアの運営、動画マーケティング事業を行う株式会社トピカ代表取締役・麓俊介さんのお話をうかがう。

写真=三輪憲亮


Part.2

 

■すべてをルール化する

 

 約50万人のファンを持つ男性向け料理動画メディア「GOHAN」。レシピ開発についてはチーム。外部の男性料理研究家と運営チームが互いの得意分野を擦り合わせながら行っている。

 

「料理研究家や外部スタッフの方から、どの食材を使ったらどういうレシピができるか、という構成を考えていただき、そこから運営チームがタイトルと方向性を打ち出し、決定していくイメージです。例えばうどんであれば、うどんに何を掛け合わせるか。例えば明太子は普通なので、そこにもう一品何かを入れたいので考えていただく。そういったやり取りを常にしています。実施にご提案いただく中から約半分を採用し、実際に作って、そのうちの半分ぐらいが実際に配信されます。つまり約25%ぐらいでしょうか。

 

スケジュールについては、いつどんなレシピを配信すればヒットするかを、過去の傾向分析、または祝日や国民の行事などに基づいて組み立てます。例えば8月11日は山の日なのでアウトドア料理、という感じで決めて、そこから逆算してスケジュールを組みます。実際にレシピが決まってからはだいたい1週間以内で撮影までを終わらせ、それを1週間かけて編集して終了です。

 

 

必ず1分でまとまるよう、レシピ段階からそれは考慮し、間引ける工程は間引きます。実はルールをすべて決めてありまして、使う調味料、お皿やボウルの数の他、まな板で切る回数までルール化しています。なぜかというと、ユーザーさんが作る時に洗いもの多かったら困るでしょうし、工程が多かったら作る気にならないから。それらをすべて考慮した上で、レシピを決めていますね。これは、意外と珍しい考えかもしれません

 

雑誌などのレシピはコンセプトがあり、これを作って下さい、というものですよね。通常の料理は"足し算"によって味の深みを出したりしますが、GOHANは作ってもらっているシーンからまず想像し『これは大変だからやめとこう』『面倒だからこれは減らそう』という引き算を多数します。いわゆる"男の料理本"にあるこだわりのレシピなどは、趣味の領域としてすごく大事。それとは別に、もっと一般的でリアルな実情に即した形を求めるなら、安く手に入りやすい食材で、楽に作れることを突き詰めなくてはいけません。そこまでしないと、実際にユーザーさんに喜んでもらえるものにはなりませんから」

 

 

 そして、SNS上での拡散されやすさも考慮している。

 

「入り口として、共感を重視しています。大事なのが、それが『自分事』かどうか。例えばオープニングの箸上げの3秒カットで『うまそう!』『食いたい!』と思わせればOKで、そのための仕掛けは重要です。映像は通常の場合、起承転結で進んでいきますが、GOHANの場合、結を頭に持ってきます。つまり『結起承転結』。その作り方が、ユーザーが見た瞬間に共感を得られる仕組みになっていると思います

 

 またこの5月、ヤングマガジン(講談社)に連載中のグルメ漫画『侠飯-おとこめし-』とのコラボ動画をリリースした。

 

「講談社さんから『侠飯の第2巻の発売に伴ってSNS連動キャンペーンをやりたいと考えていて、コンセプトがよく似ているから一緒に何かしたい』という打診を受けたのがきっかけです。普段、漫画を読まない人達の目に留まってくれたようで、明確な数字は公表されていないのですが非常に好評でした。今後はこのような形で、食品メーカー以外とのタイアップなどもやっていきたいですね。男性ファンが多いコンテンツを有する会社と、積極的に組んでいきたいと考えています」

 

 

 

■分散型メディアとウェブメディアは、役割が異なる

 

 GOHANはFacebook、Instagram、Twitter、YouTubeの4つのSNSプラットフォームに向け料理動画を配信。他にもLINEやSmartNewsとコンテンツパートナー契約を結び、各アプリでも料理動画の視聴が可能である。

 

「この中で最もビューが多いのはFacebookで、全体の約7割。あとはInstagramが2割で、残りの1割がTwitterとYouTubeです。それぞれ役割を設定しており、Facebookは収益を上げる場。動画のフォーマットも最適化し、積極的に数字を取りに行きます。InstagramはFacebookのオプション的役割。Twitterは正直、あまり重要視していません。そしてYouTubeは、動画SEOの勉強の場として考えています。

 

 

当然、それぞれで微妙に見せ方を変えたりなどはしています。例えばInstagramならば、オープニングにいきなり『ガツンと食らえ、オニオン豚野郎』なんて文字が入ったらフォトジェニックじゃない。でも逆にYouTubeだと、クリックしてもらうために大きめに文字を入れたり。各メディアで使うシチュエーションや用途が異なるので、それに合わせて微調整しています。

 

当然、各メディアのアルゴリズムの解析も必要。プラットフォーマーの動きに大きく左右されるので、それぞれの攻略を常に意識して毎週、数字の振り返りを行い『こういったアルゴリズムが適用されたのではないか』『こういう傾向にあるのではないか』という仮説を立てて、翌週の運用を行っています。でも正直、裏で何をしているかはわからず、明確な答えも出てこないので、いいものを作るしかありません

 

 現在、分散型動画メディアの人気は高い。これは、どのような時代背景から来ているのだろうか。

 

世の中の情報が多様化し、メディアも分散している中、何が自分にとって有益な情報なのかがわかりにくいし、探すのも大変。分散型メディアが生まれた背景には、こういった状況があります。結局はユーザーの行動の変化だと思います。今、ブラウザによる検索は本当に減っていて、僕も実際にブラウザを立ち上げる回数が減りました。なぜなら、ほしい情報がSNSのタイムラインに流れてくるし、ハッシュタグを使って検索ができるから。文字を入力しなくても情報が手に入る状況になっているんですね。

 

これは"可処分時間の分散"と言えばいいのでしょうか。ネットもあるしアプリもあるし、本もあればテレビもあればゲームもある中、自分が最も使うものの中で情報を得られることが、ユーザーにとっては楽。つまり、自ら積極的に情報を取りに行くという行動が、SNSのタイムラインによってどんどん減らされているのです。

 

 

僕が考える情報と人間の関係性の未来は、例えばテレビをつけた時、自分にとって最高の番組が必ず放送されている、というもの。きっと今後、テレビのザッピングはなくなると思います。『次へ』というボタンを押せば、次に見たいものが出てくるような、ユーザーとコンテンツのマッチングが最適化された未来が絶対に来ると思っていますし、そんな未来を実現するのがトピカの役割だと考えています。

 

僕らは今『どうすればユーザーが見に来てくれるか』より『どのユーザーにどのコンテンツを正しく届けるべきか』を考えています。探して来てもらうのではなく『これでしょう?』と、最適なコンテンツが自然に出てくる世の中にしていきたい。そのためにも各SNSのアルゴリズムを細かく研究しています。彼らのプラットフォーム上で踊らされるのではなく、いかにきれいに踊るか。それが大切だと思います」

 

 ただし分散型メディアには、デメリットもある。それは「送客のしにくさ」だ。

 

「分散型メディアの役割は、その場所にいるユーザーに適切な形で情報を届け、完結させること。つまりユーザーはそこから外の情報を見に行かないので、他のサイトなどへの送客がしにくいんですね。『自分のSNSアカウントの中だけで情報が得られるって最高』という環境が今です。そこからあえて腰を上げ、他のページに行くのは大変なこと。そこが分散型メディアの難しさですし、結局、役割が違うのだと思います。

 

だから分散型メディアはあくまで分散型メディアであり、ウェブメディアはウェブメディア。役割が違うので、そこを意識しなくてはいけません。いわゆるホームページやウェブメディア、キュレーションメディアなどは、コンテンツをストックして検索されやすくすることで、ユーザーに探しに来てもらうもの。それに対して分散型メディアの役割は、SNS向けに最適化されたコンテンツを流通させること。つまり攻め方が真逆なんですね。だからファンとコミュニケーションを取ったり、ファンへの情報認知を目指すなら、どちらもやるべきかと思います」

 

 次号Part.3では、麓さんのこれまでのキャリア、そして今後の戦略について、話を掘り下げていく。

 


★『GOHAN』の人気メニューを紹介!★

「極ウマ油そば」


プロフィール
麓 俊介

麓 俊介 ふもと しゅんすけ

(株)トピカ 代表取締役

1989年兵庫県出身。中学1年からプログラミングを始め、ホームページ制作やアフィリエイト、ネットゲームなどを個人で開発。2009年に新卒でECサイト開発・運営会社に入社。2010年からは株式会社ポケラボにて、ゲーム開発に従事。プログラマー、ディレクター、プロデューサーを経験。株式会社セガと協業で作った『運命のクランバトル』は年商20億円規模のヒットとなった。20165月に株式会社トピカ設立。

※ 会社、役職、年齢など、記事内容は全て取材時のものです

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