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「プロダクトアウト」から「ミッションアウト」へ

滝村 雅晴 たきむら まさはる さん (株)ビストロパパ 代表取締役

Part.4

 

■「独立準備」。それは、永遠に終わらないもの…。

 

 滝村さんのセルフブランディングのスタートは、デジタルハリウッド在籍時代にブログを毎日書くこと。そこからのパパ料理研究家として独立は、いたって自然な流れだった。

 

「独立起業をした方の半分以上は、決して最初からそのつもりではなかった気がしますしたいと思うことをするうちに、自然な流れで結果的に起業していた。そんなケースが多いように感じます。

実は、独立の準備とは永遠に終わらないものです。『もうちょっと勉強したら…』『あと少しで売り上げのメドが立つから…』とやっているうちに『今の仕事も忙しいし…』となり、いつまでも始められない。そんなものです。

結局、足りないものは、独立してから必死になってかき集めたり、伸ばすしかない。僕も、タイミングを計って『今はパパ料理研究家の仕事があるぞ!』と営業しに行ったような経験はありません。パパ料理を広めたい、という思いが先で会社を飛び出し、今がある。それだけです

 

 オンリーワンな自分自身を、いかにプレゼンするか。そのために、滝村さんが独立前に行っていた習慣を紹介したい。それは、自分がラジオ番組に出演したことを想定するロールプレイだ。

 

 

『本日はパパ料理研究家の滝村雅晴さんに来てもらいました。よろしくお願いします』

 『滝村さん、まず、パパ料理家って聞き慣れない言葉ですが、どういう意味ですか?』

 『まず、パパ料理と男の料理って違うんですよ』

『ええっ! そうなんですか!?』

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「こんなやり取りを、一人で延々とするんです(笑)。要は『自分がしたいことを言葉でどう伝えるか』という訓練。『そのラジオ番組にはどんな理由でゲストに呼ばれ、どんな面白い話を聴視者に話せるのか』。そのポイントを自分自身が理解し、第三者にきちんとプレゼンできるか、ということです。

 

そもそも、どこにでもいる人を呼んでも番組になりませんよね。そして、ラジオ番組です。ビジュアルに頼らず、すべてを言葉だけで説明する必要があります。この番組の構成が成り立つ=エッジが立っている、ということ。そうなれば、ネット検索でも見つけてもらいやすい、オンリーワンの存在ということです。自分にとっての根っことなるものは何か。それを考え続けることが大切です」

 

滝村さんのこういった発想は、いわゆる料理研究家のものではまったくない。

 

「前職の経験が大きいですよね。学校の宣伝の仕事は、すごくいい勉強になった。4月に入学し、3月に卒業する。そのサイクルを僕の場合、14回もやってきましたからね。キャンペーンのネタなんてもう考えられない、それでもひねり出す。そういった経験はとても大きかったです」

 

ミッションという変わることのない志を掲げることで、幸せを創造する。滝村さんは、それこそが今後の社会において欠かせないことである、と語る。

 

一般的な幸せは『早い、安い、今すぐほしい』という目先のことが多いものです。でも、それが未来永劫その人を幸せにするとは限らない。それらだけでなく、もっと心を豊かにしてくれるものがたくさんある。

 

何でも自由に手に入る世の中だからこそ、『これをしたらみんなが幸せになる』という、今の世の中の半歩先にある気づかれていないものを探し、広めていきたい。僕にとっては、それがパパ料理なんです。今、パパが家族のためにご飯を作り、一緒に食卓を囲む時間を大切にする。それは子供のためだけじゃない。パパ自身も『あの時に一緒にご飯を食べておいてよかった。あの時の思い出があるから、今、仕事を頑張れるんだな』と気づくことができるんです。その素晴らしさを知ってもらうのは時間がかかりますが、とても価値のあることだと僕は考えています。

 

モノを作ったら売れる=プロダクトアウトの時代はすでに終わった。今の時代に必要なこと。それは、多くの人が幸せになるためのミッションを世の中に伝えることだと、僕は思います。自分なりのミッションを掲げ、ビジョンを導き、それを一つ一つ達成していく。時間はかかると思いますが、その積み重ねがトレンドに乗り、大きく花開くかもしれません。

 

『パパ料理を通じて、家庭を幸せにする』という、滝村さんだけが気づいたミッション。それを世間に伝え、多くの人を幸せにする。滝村さんはそれを『ミッションアウト』と呼ぶ。

 

「プロダクトではなく、ミッションを外に出すわけです。それが徐々に浸透していくと、さまざまな人が『じゃあ滝村さんこんなイベントやろうよ』といった形で、ビジョンをインしてくれるようになる。もちろん、そこまで行くには時間がかかります。でもミッションの志がブレてさえいなければ、必ず世の中に伝わると思います」

 

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左:「ママと子どもに作ってあげたい パパごはん」 右:「パパ料理のススメ

 

■独立して頑張るのなら『石の上にも三年』は短い!?

 

今、滝村さんはビストロパパの活動に大きな広がりができてきたことを実感している。そのうちの一つが、この春に立ち上げた「日本パパ料理協会」である。

 

「パパ料理が世の中を幸せにするし、これからの日本に必要なライフスタイルになる、と言っているうちに、思いを同じくする仲間ができてきた。そこで、日本パパ料理協会を立ち上げました。

 

ぜひホームページを見ていただきたいのですが、時代設定を幕末ならぬ"卓末"として、志士は"飯士"。『世の中の食卓が乱れているのは、個人が好き勝手にご飯を食べて、家族で食卓を囲まないからだ』という考えのもと、目指すのは共食の復活。共食維新ですね。例えばバレンタインデーにチョコレートを作るように、母の日に赤い色を取り入れた料理を作ろう、というように、1年の節目節目でさまざまな提案をする。そして、料理をみんなで楽しむためのきっかけを生み出していこう、というのが、基本となる考えです」

 

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また今年に入り、新たな3つの縁によって、ビストロパパ代表に次ぐ新しい肩書を得ることができた。

 

「まず、内閣府の食育推進会議の専門委員に任命していただきました。食育に関するプロが集まる会議で、国としてどのようにして食育を推進していくかを、任期である2年の中で検討していきます。

 

2つ目がラジオ番組。NHK第一の『すっぴん!』の中で、毎週水曜朝9時33分から『パパッとパパ料理』というコーナーを任せていただいています。1年を通じて、お勧めの料理をご紹介していくものです。そして3つ目ですが、この4月1日から大正大の客員教授になりました。大学の広報に関するアドバイスをするとともに、食関連のプロジェクトにも携わっていきます。

 

これらのご縁は、5年やってきたからこそ。もし4年で辞めていたら、ゼロでした。だから思います。独立して頑張るなら『石の上にも三年』じゃ短い(笑)。5年です

 

 滝村さんの今後の大きなテーマは、70歳まで元気に働き続けるためのパパ料理レシピ、そして食生活習慣の提案だ。

 

「今後どんどん労働人口が減っていきます。その点、今の60~70歳は仕事をリタイヤする必要のない人も多いですが、傍らで、体調を悪くする人も増えている。それはかなりの割合で、食生活に起因すると僕は思っています。お腹が減ったらただ食事をする、という考えではダメ。健康でいるためには、食生活を考えねばならない。そのためにも、パパ料理は必要なもの。ずっと好きなことをして働き続けられるお父さんを、一人でも増やしたいです。

 

そして個人的な目標は、90歳になった時、80歳のおじいちゃんに料理を教えること。その時は日本で唯一の『ジジ料理研究家』として、ぜひもう一度取材して下さい(笑)

 

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(おまけ)取材時に、滝村さんが取材チームに作ってくれたナポリタン
 

(終わり)


プロフィール
滝村 雅晴

滝村 雅晴 たきむら まさはる

(株)ビストロパパ 代表取締役

1970年京都府出身。採用PR会社勤務後、デジタルクリエイターを育成するデジタルハリウッドの設立とともに入社。広報、宣伝、新規拠点立ち上げ事業などを行う。在籍中からパパ料理研究家として、パパ料理を通じた啓蒙活動を行い、2009年退職。同年、株式会社ビストロパパを設立。

※ 会社、役職、年齢など、記事内容は全て取材時のものです

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