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MAツールを入れさえすれば大丈夫、という考えは甘い

田中 亮大 たなか りょうだい さん タクセル(株) 代表取締役

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MAツール「KAIGAN」をリリースし、中小企業のBtoBマーケティング支援事業を手がけるタクセル株式会社。KAIGANはツール使用料金を無料化し、MAアシスタントによる運用代行をリーズナブルな価格で提供。中小企業のBtoBマーケティングというブルーオーシャンを切り拓くとともに、地方在住者に向けてMAアシスタントという新たな職を創出する。そんなタクセル株式会社の代表取締役・田中亮大さんの企みをお聞きする。

写真=三輪憲亮


Part.1

 

■『入れたら何とかなりますよ』では、結局どうにもならない

 

 タクセルが昨年リリースしたMAツール「KAIGAN」は、ツール使用料金を無料化する代わりに、MAアシスタントによる運用代行サービスを提供。これまでインサイドセールス事業で培ってきた豊富な運用ノウハウとリソースを用いて、リード(見込み客)の創出・育成・管理を自動化。古くからの中小企業に多くある「気合と根性の営業スタイル」を大きく変えていく。

 

「KAIGANは機能面においては、他のツールとの違いは特にありません。違いは運用の仕方です。通常20~30万円かかるツール料金と利用料金はいっさいかからず、その代わりにメルマガ作成やランディングページ(LP)の制作、ウェブサイトのトラッキング、そしてシナリオ構築、運用プランニングといったツールの運用を、MAアシスタントがリーズナブルな価格で代行する、というスキームです。

 

 

特にBtoBビジネスにおいては、中小企業はMAツールを導入してもきちんと運用できていない場合がほとんどです。日本でMAツールを導入している会社はおそらく3000社ぐらいかと思いますが、導入費に数百万をかけられるような大企業が多い。彼らの場合、しっかりとしたリードありきで問い合わせの質を高め『いかに効率よく成約に結びつけるか』をテーマにMAツールを導入することがほとんど。それに対し、いわゆる中小企業は『問い合わせがなくて困っている』状態です」

 

 

語るのは、タクセル株式会社の代表取締役・田中亮大さん。多くの中小企業が抱える問題は、MAツールを魔法のツールのように期待してしまうことだという。そしてツールの導入側とベンダー側の感覚にも、大きな認識のずれがある。

 

ツールを入れさえすれば大丈夫、という考えは甘いと言わざるを得ません。最先端のMAツールは顧客対応がすべて自動化されていて、勝手に成約まで持って行ってくれるはず。そんな過度な期待を持たれてしまいがちだし、そもそもツールの導入側もベンダー側も、それぞれのニーズを理解していない。『入れたら何とかなりますよ』では、結局どうにもならないんです。

 

そして導入後、ベンダーからの一般的なフォローアップとして『じゃあ、オウンドメディアを作りましょう』『リードを増やすために広告を打ちましょう』といった提案がなされる。正直、何をやっているんだと思ってしまいます。その前に、ツールの運用に関する事前設計をきちんと行うことから始めるべき。顧客にどのようなメッセージを与えるかを戦略的に考えながら、ある意味、泥くさく運用していく必要があるのです」

 

 

■MAツール導入における4つの問題点

 

 田中さんは企業のMAツールの導入において、現状、

1.事前のシナリオ設計ができていない
2.コンテンツのクオリティに関するミスマッチ
3.導入コストの高さ
4.使いにくさ

という4つの問題があると分析している。

 

「いくら"オートメーション"といっても、人間が売れるまでのシナリオを考えなければどうにもなりません。その点、BtoBビジネスを行う中小企業の場合、その事前設計が導入前にできていないことがほとんど。仮にできていたとしても、シナリオに乗せるコンテンツがなく、それを制作する体制もない。

 

これが問題の一つ目です。今まで夏季休暇や年末年始のお知らせぐらいしか送っていなかった会社が『じゃあコンテンツを作りましょう』となっても、メルマガすら書けない。そんな現状かと思います。

 

もう一つが、コンテンツのクオリティに関するミスマッチ。制作会社が提案してくるコンテンツは、クリエイティビティに優れたものがほとんどです。じゃあ、例えばランディングページのデザイン性が高ければ、商品やサービスは実際に売れるのでしょうか? 違いますよね。問題は、ツールの導入側が制作側に自分達の考えを適切に示せず、制作側も最適な提案ができないこと。だから、とりあえずかっこいいデザインにしておきましょう、となる。このミスマッチが課題の二つ目です

 

 

3つ目が金額の高さ。そもそもツール代だけで20~30万円で、クリエイティブ制作やシステム設計を含めると100~200万円かかってしまうこともあります。そこを考えると、気安く導入できるものではありません。

 

そして4つ目が使いづらさ。多くのMAツールはとにかく使いにくいし、難しい。正直、困ったものです

 

 これだけ問題が存在するにもかかわらず、MAツールが今後どんどん広がっていくなどと、どうして言えようか。

 

「KAIGANはこれら4つの課題をどうフォローするかというと、まずはツールの値段を0円にします。そして運用チームを組織化し、ツールの運用代行を行います。

 

そもそもMAツールとは、見込み客を管理し、追客し、休眠顧客を掘り起こすためのシステム。運用のすべてにおいて、人間が関わります。そこで僕らは、デザインを作る人、コンテンツを作る人、システムの設定をする人などをクラウドワーカーで組織化。ワンストップでお客様に提供する仕組みを作りました。

 

 

これによって、4つの問題をすべて解決できるわけです。僕らはMAツールのベンダーとしては後発ですが、BtoBマーケティングという市場の中で、十分に価値を発揮できる。その確信があるからこそ、この事業に踏み切ったのです」

 

 Part.2は引き続き、KAIGANのビジネスモデルについて。

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プロフィール
田中 亮大

田中 亮大 たなか りょうだい

タクセル(株) 代表取締役

1985年山口県出身。大学卒業後、外資系製薬企業に入社するも2009年に独立。アメリカの能力開発プログラムの販売員として独立。プッシュ型セールスを行わない独自のマーケティング手法で日本一の販売実績を挙げる。
2011年に日本最大の経営者動画メディア「社長.tv」を運営する福岡のベンチャー企業に役員として参画。インサイドセールスにて、5000社以上のクライアントを新規開拓する。
2015年には、インサイドセールス専用ウェブ会議システム「ベルフェイス」の開発会社を共同設立。販売会社の社長に就任。
2016年にタクセル株式会社を設立。MAツール「KAIGAN」をリリースし、中小企業のBtoBマーケティングとセールスの支援を行う。

※ 会社、役職、年齢など、記事内容は全て取材時のものです

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