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ユーザーと共に作る「共創」の形を、どう実現するか
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ユーザーと共に作る「共創」の形を、どう実現するか
オンラインサロンの人気などにより昨今、注目を集めつつあるコミュニティマーケティング。ソーシャルメディアから小さくて身近なコミュニティへと時代の価値観が少しずつシフトしていく中、コミュニティ運営プラットホームで注目を集める株式会社AsobicaのCEO・今田孝哉さんの話を伺う。
写真=三輪憲亮
新たな事業を作り出したい。そんな想いを持っていた今田さんは、大学在学中、いくつかの事業にトライした。しかし、どれもなかなか大きく育ってはいかなかった。
「やはり、自分はまだまだ未熟。そこでいったん会社に入り、学び直すことを決めました」
今田さんは「世界一多くの起業家を輩出する」というビジョンを掲げるファインドスターグループに新卒で入社。そしていくつかのSaaSツールを手がけたことで、サブスクリプション事業のさまざまな課題が見えてきた。
「サブスク事業をやっている企業にとって特に重要視されるのは解約率。解約率を下げるにはサービスの改善か、カスタマーサクセスを頑張るか、大きく分けるとそのどちらか通じて顧客の満足度を上げることになると思うんですが、後者のCSの重要性は凄く高いだろうということで当時カスタマーサクセスを効果的に行なっていける様にするためのSaasツールを作りました。そこに関しては今振り返っても良かったと思っていますし、実際にそのサービスも現在伸びています。
ただ、一方でユーザーが増えてくると1対N型のカスタマーサクセスだけではどこか限界がくるのではないかということも感じていて。そこでSpotifyやAirbnbなどの海外の成功企業を見ていくとユーザー同士で助け合うコミュニティに注力していることがわかったんですね。
つまり、CS(1対N)だけではなくユーザー同士(N対N)で助け合いながら満足度が上がっていくコミュニティが非常に重要なものになる、というのを感じました」
そこで今田さんは、まずは自らが当事者になって課題を肌で認識しようということで、オンラインコミュニティを立ち上げることに。
「当時、25歳以下の若手社会人向けに学びの機会を作ろうということで、月額型の教育サービスを作りコミュニティを最初から設置しました。具体的にはfacebookグループを活用しオンラインコミュニティを運用していきました」
ただし、運用していくと次第に課題も見えてきた。どうすればユーザーが主体的に行動し、コミュニティが活性化していくのか、今田さんは考え続けた。
「どういう事を実施すればユーザーと共に作る”共創”という形が実現できるのか、色々模索していました。雑談をすれば良いのか、何かテーマを設定してそこに対してコメントを募集する形がいいのか、色々と試していきましたが、中々ユーザー側が投稿してくれないことも勿論多々ありました。
その中で”助け合い”というのは非常に重要な意味を持つんじゃないか、というのを感じていったんですね。例えばAirbnbで言うと、Airbnbに関しての疑問をユーザーが質問しユーザーが回答していったり、ホスト側が売り方のノウハウをシェアしたりといった形でユーザー同士のコミュニケーションが活発に行われています。いわばyahoo知恵袋的なイメージですね。
知恵袋を見るとわかると思いますが、何も見返りはないけど誰かの役に立ちたい、という思いで回答をする人がたくさんいます。
というのも質問を答えてもらった側からすると、サービス提供者側が回答をもらった場合“答えてくれて当たり前”になるのですが、ユーザーが回答すると、“わざわざありがとう”という形で嬉しい体験になります。つまり、回答者も質問者もどちらにとってもハッピーで、結果としてユーザーの熱量が上がっていく。なので疑問の解決やノウハウのシェアといったユーザー同士の助け合いはコミュニティにとって非常に需要なポイントになると思ったんですね」
コミュニティを運営していく上でもう一つ重要なことは行動するモチベーションの設計だと今田さんは考えている。
「例えばfacebookグループ内に投稿し、その投稿に対して『いいね』がたくさん集まったとしても、そのいいねがユーザーの評価として資産になっていかない。twitterにフォロワー数の可視化がなかったら結構寂しくなると思うんですね。twitterに時間を使ったのに、自分の評価が上がらないのであれば、時間が勿体無いみたいな感覚で。
なので、コミュニティも同様でそのコミュニティ内で貢献をしたらその貢献度に応じて、例えばマイページなどに何かしら数値として可視化してあげる必要があると思います。質問に対する回答数だったり、投稿数だったり、もしくはそれらをベースとした会員ランクなどなど。
こういった考え方ってサービスを作っている人にとっては当たり前のことなのかもしれませんが、コミュニティとなるとそういった部分を疎かにするケースも実は多い。なのでそういった部分を仕組み化し、コミュニティにとって最適なサービスを作ることができれば、コミュニティをベースとしたユーザーの熱量を上げることの再現性を高められると考えています」
最終回となるPart.4では、feverの課題とこれからの展開について、話を聞いていく。