日本の企業にはまだまだ少ないCMOの存在意義とマーケターの価値を上げるために、CMOやマーケティング部門の責任者はどんな職業なのか & 活躍している人を紹介。読んで欲しい読者はこれからの日本の未来を背負う若者たち!

CMOって?

Chief Marketing Officer (チーフマーケティングオフィサー)= 企業におけるマーケティングの最高責任者。部署ごとに存在する様々なマーケティング要素を横断的に統括し、企業の売上拡大とブランド力の向上をドライブさせていくポジション。その具体的な役割は企業によって様々ではある。

多聞 (たぶん) くん

さいたま市在住。好奇心旺盛な高1の男子。大学どうしようっかな、将来何になろっかな〜と漠然と考えているが、世の中にはどんな仕事があるのかがまだよくわからない。なので、最近はとりあえず目についた横文字職の人を手当たり次第質問攻めにするブーム中!(イラスト: 死後くん)

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インタビュー

  • 自己紹介をお願いします!

  • フジモトHDでマーケティングの全責任者を務めています。
    私たちピップグループは『ピップエレキバン』『スリムウォーク』などの日用品の製造販売を行ってきましたが、創業は1908年(明治41年)。実に110年以上の歴史があるグループなんです。

     

     

    これだけ歴史がある会社であっても、存続していくためには改革が不可欠です。経営トップは感度が高く時代の変遷、スピードというのを痛感していますが、100年以上に渡って培われてきた企業風土、体質というものを変えるのは簡単なことではありません。そこで、「消費者起点のマーケティングカンパニーを目指したい」という社長、「時代がどんどん変わる中、ワクワク、ドキドキがある会社にしていきたい」という副社長、2人の意向のもと、外部からマーケティング改革責任者を招聘することになりました。こうして私がCMOに就任し、改革を進めることになったわけです。

     

    私がCMOとしてやることは、すごくシンプルです。社長と副社長が描いている夢、ビジョンをどうやって形にしていくか、ということ。具体的には、ホールディングス内のグループ会社についてブランド力を向上させる取り組みを進めていく。そして、マーケティング人財の育成や採用、そしてメーカー事業の改革にも取り組んでいます。実際の改革については、これから話していきましょう。そうそう、社外では明治大学兼任講師、早稲田大学非常勤講師としてマーケティングの講義も持っています。企業人と先生業の両立しています。

     

  • この仕事ってむずかしい?楽しいことは?

  • マーケティングの面白さ――それは正解がないことだと思っています。教科書があっても、決してその通りにはいかない。それがマーケティングです。正解がない世界では何が求められるか? 私はイノベーションだと思います。

     

    もともと、私は人と同じことをするのがつまらないと思うタイプ。誰もやったことのない、未知の世界に飛び込むのが好きです。マーケティングは、すべてが未知の世界。これほどワクワクさせてくれて、面白いものは他にありません。

     

    マーケティングには正解がないと言いました。だけど、それぞれが考え、導き出していく「答え」はあります。僕はマーケターですから、「答えは現場にある」が信条。だから、フジモトHDに入ってすぐ、会社の全部署に足を運んで、いろんな人に会いました。70人以上と話をしたかな……当グループはメーカー事業と卸事業がありますが、私は卸の経験はほとんどなかったので、物流センターの現場に足を運んで、ロジスティックス最前線の話を聞きました。研究所で開発の先端に触れたこともありましたね。

     

     

    マーケティングはワクワクさせてくれるものですが、これは当社の根幹になるモノづくりにもつながります。手に取る消費者の気持ちを考えて、こう使ってもらえたら喜んでくれるかな? 感動してもらえるかな? と、プロダクトはそんな風に考えて創り、育てていくものではないでしょうか。

     

    去年のクリスマスのことです。そういえば、当社には季節感がないな……そう思った私は、クリスマスツリーをネットで取り寄せました。そして、当社が手がける様々な商品のパッケージをオーナメントにし、ツリーに飾り付けたんです。いらっしゃったお客様も、そして社員たちもこぞって写真を撮って、楽しんでいました。

     

    私が何を社員に伝えたかったのか? それは、ワクワク感を大切にして自社ブランドを構築していく、ということです。サンタクロースを待ちながらツリーを飾るときを思い出してください。誰もがワクワク、ドキドキしながらオーナメントを付けていったでしょう? そのワクワク感、ドキドキ感が見る人に伝わったから、みんなが楽しく写真を撮ってくれたと思うんです。

     

     

    こうして、世界に一つしかないクリスマスツリーができました。しかも、お金はほとんどかかっていません。お金をかけなくても、オリジナルなものができる。すべてはクリエイティブ、アイデア次第です。自分の中のワクワク、ドキドキを引き出しながら考えたら、アイデアなんていくらでも出てくるもの。ツリーを通して、私はマーケティングのエッセンスの一つを伝えたかったんです。

  • 例えば、この1週間はどんなことをしていたの?

  • ある商品のブランド担当からマーケティング戦略の相談を受けましたし、製品開発会議にも出席しましたね。これは、商品を発売するための承認会議です。やはり、ブランディング、商品開発に関する動きが多いですね。一方、メディアとのやり取りも欠かせません。

     

    さらに、テレビ局から舞い込んだ社長取材の打ち合わせがありましたし、広告代理店の部長と今後の番組・CM戦略の意見交換をする機会もありました。また、最新のマーケティング事情、そしてテクノロジーへの目配りも欠かせません。マーケティング系の学会に出席しましたし、AIマーケティングを手がける企業、2社とミーティングを重ねています。

     

     

    CMOの役割で説明したとおり、マーケティング人材の育成も重要な役割です。「久保田塾」と銘打った社内研修の講師としても活動中。消費者起点のマーケティングカンパニーを目指すため、力を入れていきたいところです。

     

    マーケティングとは何か? どういうものか? これまでの自分の経験、考えを必死に伝えています。目を輝かせて聞いてくれる若い人もいますし、研修が終わった後は「変わらなきゃいけないと痛感しました!」と、感動を伝えてくれる社員もいます。打てば響く手応えを確かに感じています。この手応えを結実させるべく、いかにして体制を作っていくかも考える。マーケティングよりも組織づくりに近いかもしれませんが、これも私の役割なのです。

  • どうしてCMOになれたの?

  • 私の高校時代の夢は「ドラマのプロデューサー」でした。テレビっ子だったのでドラマが好きで、中でも「月9」に夢中になり、あんなドラマを作ってみたい、と強く思っていました。今思えば、「ストーリーを作ること」が好きだったのかもしれません。これは今のCMO、マーケティングにつながる要素の一つですね。

     

     

    大学では、好奇心が旺盛で何事にもチャレンジするような学生でした。これは就職し、社会時になってからも変わりません。イノベーションが好きで、人がやったことのない分野、自分しかできないことをひたすら追求し続けた。サラリーマンという言葉が嫌で、「企業にいながら起業家マインドを持ち続ける」と言っていました。管理職になってからは「前例のないことにチャレンジし、新たな価値を創造します」というフレーズを、どんな仕事に就いても、どんな部署にあっても掲げていました。それは今でも変わりません。最近社内で話すプレゼン資料の筆頭にはこのモットーを掲げているんですよ。

     

    あらためて振り返ると、「ストーリーを作るのが好き」で、「好奇心が旺盛」。「常に人と違ったことを考え続け、チャレンジする」ことを突き詰めてきたこと――これが、CMOにつながっているのかもしれません。

  • これまでのキャリアでターニングポイントになった経験があったら教えて!

  • テレビドラマのプロデューサーに憧れ、在京キー局に就職するには難関大学に入学するのが一番近い道と考え無名高校から目指した難関大学受験。就職後、法人営業からマーケティングのトップになった時。化粧品会社で起業家の下で働き、レッドオーシャンにおけるマーケティング戦略を実践的に学んだ時…これまでターニングポイントはいくつかありますが、最も大きなポイントは旅行会社に入社した時かもしれません。

     

    ドラマのプロデューサーに憧れて受けた在京キー局すべてに落ち、就職活動は惨敗。挫折感を抱えた私は大手の旅行会社に入社しました。しかし、そこでは先輩の勧めもありってエンターテインメントの会社に営業をかけることができました。夢をあきらめきれない私は、様々な提案、企画をしてエンタメに関する旅行業務の開拓に取り組んでいきます。

     

     

    レコード会社の海外出張を取り扱うところから始まり、スタッフと仲良くなったらライブに誘われるように。そこでは芸能事務所のスタッフとも縁ができてファンクラブのツアーを担当し、コンサートの移動、宿泊やタレント、アーティストの個人旅行を取り扱うことにもなりました。

     

    こうして企画、提案を繰り返していくうち、いつしか私は社内にエンターテインメント専門のセクションを組織。CDのジャケット撮影の企画提案や、間接的にTV番組の制作に携わるなど、エンタメ業界のクリエイティブにも関われるようになりました。挫折感を持って入社した旅行会社でしたが……どうでしょう? 自分の好きなことを芯にしていたら、いつしか自分が目指していたエンタメの世界に携われるようになっていたのです。たとえ遠回りであっても、志がブレない限り、必ず目標に近づいていく。そんな確信を得ることができたターニングポイントだったと思いますね。

  • 今、気になってるヒト、モノ、コトは?

  • 「CMOの1週間」のところで、AIマーケティング企業とのコンタクトについて話しましたが、AIについてはもちろん注目しています。まだ統計学の領域から抜け出るには至っていないと思いますが、近い将来はマーケティングにおけるデータ分析、サジェッションにもAIが力を発揮すると考えています。ですから、AIに関するカンファレンスがあったら極力参加し、最新の情報を収集しています。

     

     

    注目している企業はアリババ、Amazonなど。海外市場はアジアを中心に今後かなりの伸びていく要素があり、積極的に進出を考えています。そこで気になるのが、世界のあり方をガラリと変えるような仕組みを構想するアリババ、Amazonなのです。両者には製品やサービスの信頼性があり、誰もがイメージしやすいブランドもある。追いついていくため、気にかけてウォッチしています。

  • これからの未来をどうおもしろくしようとしてるの?

  • 消費者起点のマーケティングカンパニーを目指す。その改革を実行するため、私がCMOに採用されました。まずは社内の意識改革が先決だと考えています。先に言ったように社内研修や様々な取り組みを通してマーケティング人材を育て、少しずつ改革を進めていきたい。ロードマップとしては、2025年にはマーケティングカンパニーとして認められたい、と考えています。

     

    社員の意識改革と並んで、「社外からどう思われるか」というブランディングも重要です。ピップエレキバンなど商品ブランドはある程度世の中に浸透し、根付いているかと思いますが、企業ブランドというと、まだ途上かもしれません。当グループが目指すのは”THE WELLNESS COMPANY”(人々の身心の健康に貢献する企業)です。ピップグループと聞いたら、どんな人にも「あ、健康の会社だよね」と思ってもらえるようになれたら。これも、2025年に向けて地道に進めていくべきでしょう。

     

     

    そこで軸になるのが、商品の品質とファン作りです。商品、サービスの品質がよくなければ2度と購入して頂けません。しかも、ただいいいものを作るだけではなく、消費者の期待を上回るようなもの、感動を与えるようなものでなければ。

     

    感動からリピートしてくれたお客様がファンになり、ブランドを支えてくれる。ここで求められるのが「ドキドキとワクワク」。つまりマーケティングなのです。

  • 趣味や好きなことはなんですか?

  • 趣味の第一は、何と言っても仕事ですね。人を感動させたりワクワクさせたり、何? と興味を喚起したりする。それがマーケティングというものですから。24時間365日、マーケティングを起点にして、ずっと考え続けていても楽しいんですよ。

     

    もちろん、マーケティング以外にも夢中になっている趣味はあります。それが、大学時代からずっと続けているヨット、そして車とスポーツ観戦、グルメ。スーパーカーブームの世代だから車への憧れは強いし、一番お金をかけている趣味かもしれません。

     

    母校の明治大学が色々なスポーツで強いこともあり、東京六大学野球や大学ラグビーを観戦して盛り上がることも。ラグビー部故北島忠治監督の「前へ」という言葉が心の支えです。どんな困難な仕事になっても「前へ」進もうと思います。そして、美味しいご飯を食べることも大好き。知らないところに足を運んで、未知のお店を探す瞬間がたまりません。開拓して常連になったお店もたくさんありますね。

     

     

    我ながら多趣味だと思いますが、第一の趣味である「仕事」に次ぐのはヨットですね。今でも神奈川県の葉山に足を運んで、時々乗っています。このスポーツの魅力は何か? そうですね、どこか仕事につながる部分があるところかもしれませんね。
    たとえば、チームワークがすごく重要だけど、それだけじゃない。風をしっかり読まなきゃヨットでは勝てません。マーケティングという仕事もそうですよね? メンバーが団結していても、世の中の風が読めなければ結果につながらないこともあります。仕事に通ずる奥深い魅力があるから、大学時代から長く続けてきたのかもしれませんね。

(多聞くん)

ありがとうございました!
とっても参考になりました♪
これからも頑張ってください!

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プロフィール
久保田 達之助

久保田 達之助 くぼた たつのすけ

フジモトHD(株) CMO

執行役員 CMO(最高マーケティング責任者)。
早稲田大学非常勤講師。明治大学兼任講師。明治大学政治経済学部経済学科卒、慶應義塾大学大学院経営管理研究科修士課程修了。大手旅行会社で事業開発部長。大手化粧品会社で取締役マーケティング部長兼海外戦略部長を務め、2018年6月にフジモトHD株式会社のCMOに就任。明治大学・早稲田大学でも実践的なマーケティングに関するゼミ、講義を担当しており、マーケティング人材の育成にも尽力している。

※ 会社、役職、年齢など、記事内容は全て取材時のものです

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