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お寺でパーティ、映画館でセミナー。ユニークな場所とのマッチング

重松 大輔 しげまつ だいすけ さん (株)スペースマーケット 代表取締役

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スペースマーケットは、企業、団体、個人の持つ遊休スペースや利用時間外のスペースを、会議や研修、株主総会、イベント、撮影などに貸すためのマーケット プレイス。お寺や映画館、古民家、さらには野球場に至るまで、ユニークなさまざまな場所を時間で貸し出している。大手企業からベンチャーを経て、今年の春 にこのプラットフォームを立ち上げた代表の重松大輔さんに、ユニークなサービスの詳細とこれまでのキャリア、そして今後の戦略などについて、お話をうかがった。

文=前田成彦(Office221) 写真=三輪憲亮


 

Part.1

 

■「お寺って、意外と寛容なんですよ」

 

例えばお寺で、会社の創立記念パーティをする。映画館の巨大なスクリーンを利用して、社内セミナーを行う。
「えっ
!? こんな場所が使えるの!?」と驚くようなユニークなスペースを活用すれば、スタッフの士気が上がったり、クリエイティブなアイデアが続々と生まれるかも

 

「確かに、いきなりお寺に電話して『貸して下さい』とお願いする人は少ないですよね。でもお寺って知られていないだけで、意外と寛容ですよ。貸し出せるスペースのあるお寺は、実はたくさんある。ウチのサイトの中に掲載している所もしていない所もありますが、多くの人が知っている有名なお寺でも、ご紹介できる所はあります。例えば住職の講話をお聞きしたり、座禅を組んだりするイベントを開催してもいいでしょうし、ネット環境がしっかりしているお寺も多いので、そういう所では企業の研修なども行うことができます。お酒を飲めるお寺もありますよ

 

語るのは、株式会社スペースマーケット代表取締役の重松大輔さん。確かに最近、こうしたユニークなスペースをイベントなどに活用する動きは広がりを見せている。例えば昨年、港区芝公園の増上寺では、フリースタイル・フットボールの世界大会『Red Bull Street Style World Final』や、きゃりーぱみゅぱみゅを迎えたKDDIのユーザー参加型イベント「FULL CONTROL TOKYO」が開催された。重松さんはこういった時代の流れに着目。スペースの稼働率を上げたい、空いているスペースを収益化したいと考える遊休スペースの所有者と、場所を探している個人、法人をマッチングさせるシステムを作り上げた。

 

2010年の動画CMで「はひふへ本光寺」として有名になった本光寺(千葉県市川市)も利用できる
2010年の動画CMで「はひふへ本光寺」として有名になった本光寺(千葉県市川市)も利用できる

 

 

「お寺などのユニークな空間は、記者発表やPRイベントにも使えますよね。あとは映画館。特に、朝や午前の早い時間帯は有効です。映画のスクリーンを使って行うプレゼンは非常に迫力あるし、音響も優れ、シートもラグジュアリー。多くの人数を収容できるのもポイントです。

さらに珍しい場所が、離島です。伊豆大島なのですが、向こうの若い人達が空家をリノベーションして作ったスペースがあります。ネット環境も非常に充実していて、実は東京よりも優れていたりするんです。ここで企業が技術開発の合宿をしたり、とか。あとは平日の、結婚式場を使ったイベントですね。結婚式場は平日かなり空いています。写真スタジオも同様ですね」

 

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映画館も利用可能。ユナイテッド・シネマ豊洲

 

 

■小さな空きスペースではなく、もっと大きなハコを扱う。
 

重松さんはスペースマーケットというプラットフォームを、どのようにビジネスとして成立させているのか。

 

「スペースマーケットでは、用途と目的に合ったスペースを検索することができます。その上でいい場所があれば、私どもを介して、スペースのオーナーさんとやり取りをしていただきます。もちろん、スペースの使用にはいろいろと条件があります。例えばアトリエならば、子供が大騒ぎするようなイベントでは使えませんよね。そのスペースでどんなことをするのかを事前にしっかりとお知らせいただいた上で、オーナーの許可が出たら、予約成立とともに決済となります。価格のうち2040%が私どもの収益となります。スペースの掲載料金は今のところいただいておりませんが、ゆくゆく、有料化していくつもりです

 

空家をリノベーションした伊豆大島のイタドリハウス。光ファイバーも導入されている。
空家をリノベーションした伊豆大島のイタドリハウス。光ファイバーも導入されている。

 

ソーシャルメディアの発達により可能になった、モノ、お金、サービスなどの共有。日本でも今、さまざまなニュービジネスが生まれつつある。例えば「あきっぱ!」は、全国の空いている月極駐車場を一時利用できる検索サービス。また、スペースマーケットと考え方の近いサービスとして、店舗やガレージなどのもったいない空きスペースを利用希望者とマッチングさせる「軒先.com」などがある。

 

「軒先.comさんは、構想的に近い存在です。違いとしては、軒先.comさんがその名の通り、小さな空きスペースを中心に扱っているのに対して、私達は野球場やホテル、お寺など、もう少し大きなハコで考えている。そこに世界観の違いがありますね。

今、売り上げとして大きいのは、イベントスペースや映画館など。あとはホテルのバンケットなども、これからもっと増やしていきたいと思っています。

また価格ですが、スペースの値づけについては相場がないので難しい面があります。これは基本的に、オーナーに任せています。価格については、今後もう少し扱いのボリュームが出てくれば、きっと適正なところに落ち着いていくだろうと思っています」

 

スペースマーケットは、シェアリングエコノミーという概念の浸透とともに生まれたユニークなプラットフォーム。
次回は重松さんのキャリアを振り返り、そこに至るまでの発想の原点を見ていく。

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プロフィール
重松 大輔

重松 大輔 しげまつ だいすけ

(株)スペースマーケット 代表取締役

1976年1月27日千葉県出身。
早稲田大 法学部を卒業後、2000年にNTT東日本入社。法人企画営業やPR誌の編集などに携わり、’06年フォトクリエイトへ。同社では一貫してウエディングな どの新規事業を手がける。
2013年に退社し、2014年1月に株式会社スペースマーケットを立ち上げ、4月よりサービス開始。

※ 会社、役職、年齢など、記事内容は全て取材時のものです

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