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自分の仕事の足跡を、形あるもので残したい

毛見 純子 けみ じゅんこ さん maojian works(株) 代表取締役

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日本製ジャージードレスブランド「kay me(ケイミー)」。女子アナウンサーや人気タレントを初めとして、「働く女性」達に愛されるこのブランドを立ち上げた毛見純子さんはもともと経営コンサルタント。アパレル経験のまったくなかった彼女はどのようにして、わずか2年あまりで人気ブランドを作り上げたのだろう。今回はその理由に迫ってみたい。

文=前田成彦(Office221) 写真=三輪憲亮


Part.1

 

■働く時は楽に着れて、会食やデートにも使える。そんな服がない。

 

  日本製ジャージードレスブランド「kay me(ケイミー)」をご存じだろうか。「ジャージー」とはもともと「伸縮性のある布」という意味。ジャージードレスとは、伸縮性のある素材を使って作られたドレスのこと。加えてkay me では「自宅で洗えて手入れが楽」という機能とコンセプトを持つ。また体が楽。着るだけで心地よい気分になれる。そんな魅力を持つ。

 ブランドが生まれたのはわずか3年前。その原点には、経営コンサルタントとして自らの会社maojian worksを立ち上げ、活躍していた彼女自身の思いがある。

 

「自分に合った服が少ないことが悩みでした。会社の代表として動いていると、例えばリクルートスーツ的なデザインでは、どうしても自信なさげに見えてしまう。また機能面でも、例えばシャツなどは男性用と比べて肩巾やサイド部分がジャストサイズにシェイプされているので、長時間着ていると苦しくなってきます。だからといってゆったりしたデザインでは、女性らしさを感じられにくく、どうしても野暮ったく見える。

また、クライアントさんの企業の方々の服装を見ても、女性らしさを閉じ込めてしまうような暗い色合いのものばかり。仕事服として楽に着ることができ、仕事の会食やデートに着ていっても大丈夫な華やかさもあるような服は、なかなかないのが現状でした。

いろいろと探す中で愛用していたのが、外資系ブランドのジャージーワンピース。すごく着やすくて、新幹線で移動してもシワになりませんし、スーツケースに丸めて入れて、出張に何枚も持って行くことができる優れたものです。でも着ていくうちに、物足りなさを感じるようになりました。

 

例えばよく着ていた有名な外資系ブランドのものは値段が1着10万近くするので、何枚も買うのは難しい。またラップデザインを得意とする外資系ブランドのものは、動いているうちにすぐはだけてしまい、また丈の長さや胸の空き具合などが日本人にとってはややセクシーすぎて、仕事では少し気を使わざるを得なかったんです」

 

■震災をきっかけに芽生えた、服作りへの強い思い。

 

 そんな不満を抱きつつも、経営コンサルタントとして多忙な毎日を過ごしていた毛見さん。しかし会社を立ち上げて3年が過ぎた2011年3月。彼女の思いを後押しする出来事が起こる。東日本大震災だった。

 

「その時、私自身は名古屋で仕事をしていました。すぐに帰らなきゃ、となったのですが、新幹線が動かないので名古屋に足止めされてしまいました。そこから東京のさまざまな情報を見聞きするにつれ、複雑な思いが頭の中で渦巻いていきました。その時に感じたのが、ものの儚さ。何かが起きれば、世の中は一瞬で変わってしまうことを実感しました。そして芽生えたのが『コンサルという仕事に加えて、自分の仕事の足跡を、何かしら形あるもので残したい』という思いでした

 

 人生の時間は限られている。今こそやりたいことをやろう。そんな気持ちが生まれると同時に、ずっと心の中にあった服作りへの思いが、一気に頭の中を駆け巡った。

 

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2月2日に増床移転してリニュアルオープンした銀座本店

 

形に残るものを残していきたい=服だと、すぐに思いました。いつかはやりたい、じゃない。やるなら今だと。地震が起きた翌日に東京へ帰り、すぐに生地を探すなどの準備を始めました。形あるものを残したいという思いと、もともと持っていた、女性が限りある人生で目いっぱい$挑戦をするお手伝いをしたいという思い。その二つの点が、一つにつながった瞬間でした。

きっと、これは潜在的に私の中にあった思いなのでしょう。私自身は唐突に立ち上げたように思っていて、多くの知人は『いったい何を始めたの!?』と驚いたのですが、幼少のころからの友人だけは『子供の時から洋服のお店をやりたいと言っていたよ。ついに始めるんだね』と言うんです。自分では覚えていなくて、そんなこと言ってたっけ? という感じでしたが(笑)」

 

彼女のそんな気持ちの背景には、生まれ育った家庭環境もあった。

 

「祖父母が着物を扱うお店を営んでいたので、和の色に花鳥風月が舞うような、美しい光沢の反物や着物を見て育ったことも大きかったと思います。女性がきれいな色の美しい布できれいになっていくことへの、純粋な憧れがありました。

また当時は、いわゆるファストファッションが世の中を席巻しつつあったころ。価格をどこまでも下げていくことで、心の充足感のようなものが置き去りにされつつある。そんな気がしていました。おそらく、これらのさまざまな思いが結合して、服作りを始めたのでしょう。理由は一つではないような気がします」

 

 まずは自分が着たくなるような、日本人に合った、スタイリッシュで快適に着られるジャージードレスを作りたい。そんな思いを胸に、毛見さんはリサーチを開始する。

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プロフィール
毛見 純子

毛見 純子 けみ じゅんこ

maojian works(株) 代表取締役

1976年大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、ベネッセコーポレーション入社。営業職として活躍。その後プライスウォーターハウスクーパースにて組織人事コンサルティング、ボストンコンサルティンググループにて経営戦略コンサルティングに従事。
2007年12月にmaojian works株式会社を設立。金融、IT、エネルギー会社へのセールスおよびマーケティングコンサルティング事業を手がける。
2011年3月に自社事業として日本製ジャージードレスブランドkay meを立ち上げ、同年7月に銀座7丁目で予約制サロンを開業。
2012年7月に銀座4丁目に常設店舗を開設。
2014年2月には同じく銀座4丁目内に常設店舗を増床移転。

 

※ 会社、役職、年齢など、記事内容は全て取材時のものです

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