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要領よく、自由に、面白くやる

三浦 展 みうら あつし さん (株)カルチャースタディーズ研究所 代表取締役

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高度情報化社会の実現、そして、テクノロジーの大きな進歩によって激変するコミュニケーション。2018年も大きな変化が見込まれる日本社会において、われわれは何を考え、何を目指して行動すべきなのか。80万部のベストセラーとなった「下流社会」や「第四の消費」、「中高年シングルが日本を動かす」等の著者であり、マーケティング・アナリストの三浦展さんに、これからのマーケターのあるべき姿を聞いていく。

写真=三輪憲亮


Part.3

 

■「残業やめろ、会社になんていてはいけない」

 

 もっと要領よく暮らし、短時間で結果を出す=売れるモノを作る、という発想に立つ。それこそが本当の「働き方改革」であると、三浦さんは考えている。

 

「日本人は、会社に夜遅くまでいればいい、といった発想になりがち。残業するのが偉い、という考え方が根底にあるから、多くの会社がブラック企業になってしまう。『今日の仕事は4時間で終わったので、午後は退社します』と言ったら『ふざけるな! それならもっとやれ!』となるのが当たり前、という状況では、本当の生産性の向上は望めない。人と同じ時間で10倍仕事をしたら、10倍の給料をくれるわけではないのですからねえ。

 

以前、あるメーカーとおつき合いがありましたが、彼らは横浜から僕の都心にある事務所に来るだけなのに、いちいち出張命令書を書いていました。非効率というか、バカバカしい話です。その反面、業界ナンバーワンだったメーカーの商品企画課長は、朝6時に出社して昼食前には会社からいなくなるのが当たり前。いったい、どちらが売れる商品を作っているの? という話です。

 

 

要領よく、自由に、面白くやる。それがマーケターの働き方です。だから、原宿でも郊外のロードサイドでも地方のスーパーでも、あらゆる消費の現場にどんどん出かけて自分の目でいろいろなものを見て、自ら体験し、遊ばないとダメ。マーケターは本当は会社になんて、いてはダメなんです。

 

でも実際にそれをしようとすると、なかなか遊ばせてくれない会社も多いですよね。『どんどん遊べ』と言うけれど、実際に遊ぶと『遊ぶなら成果を出せ』と怒る(笑)。マーケターの仕事は事務作業ではありませんし、週に一度必ず成果が出るものではない。そこは、企業が発想を変えるべきです」

 

■無理をしてでも、自分に投資する

 

 そもそも日本企業のサラリーマンには、机にかじりついている=仕事という考えがすり込まれている。

 

「それは若い人も同じ。そんな企業風土だから、若い人がどんどん堅実になって、冒険をしなくなっている。マーケターとして売れる商品を見つけ出すことが、先輩や上司の目を気にしながら机に這いつくばって、できるわけがない。

 

今の若いビジネスマンは、小学校からずっと塾に通っているせいか、自分への信頼が弱い。『お前の偏差値は○○だ』とか『この点数じゃ、頑張ってもこの大学には入れないぞ』とか、数字を突きつけられて自分の範囲を狭めることに慣れている。でも、そんなのは単なるテストの点数の話。本来、人間にはもっといろいろな可能性があるはずです」

 

 

 「大事なのは人の『生活』を見ることだ」と三浦さんは語る。

 

人が何を食べ、何が好きで何を着て、何が流行っているのか。それを見なきゃいけない。だから、社員食堂で食事なんてダメですよ。コンビニ食もダメ。確かにコンビニのマーケティングはできるかもしれないけれど、そんな仕事はいずれAIに取って代わられます。

 

そうじゃなくて、例え無理をしても『すきやばし次郎』に行く。そうやって自分に投資をしないとダメです。『時間がありません』なんて、言っている場合じゃない。会社の仕事なんて、1日4時間もあれば十分。ムダでつまらない会議をしてるだけです。

 

働き方を変えて、残業なくす。これは非常に大事です。プレミアムフライデーなんてバカげたことを言う前に、仕事は遅くとも毎日16時で終わるべき。それぐらいに抑えないと、いい発想なんて生まれません。会社で疲れてはいけないんです。『疲れたなあ。でも頑張ろう』じゃない。『疲れたなあ。じゃあ帰ろう』となるべき。だって疲れたらその分、生産性が確実に落ちるわけですから。家に帰って休んで翌朝6時にくればいい。

 

 

言い換えれば『給料は半分でいいから午後から遊ばせて下さい』という社員を作ればいい。週2日半しか来ないとか、いっさい残業をしないとか、午前中だけしか会社にいないとか、そういう社員がたくさんいたほうがいい。

 

そのためには、組織のあり方を変えていかなねばなりません。最近『働き方改革』という言葉をよく聞きますが、ただ勤務時間を短くすればいい、という考えでは上手くいかないでしょう。各社員がもっと自由に潜在能力を引き出すにはどうするかを考えるべき。さまざまなバックグラウンドの人がいて、彼らが各々、自分の力を存分に発揮することができないと、今後の日本企業はますます中国などに抜かれていくでしょう

 

 最終回となるPart.4では、マーケターならではの目線の持ち方、そして現在、注目している事象について、話を聞いていく。

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プロフィール
三浦 展

三浦 展 みうら あつし

(株)カルチャースタディーズ研究所 代表取締役

マーケティングアナリスト。消費社会・社会デザイン研究者。株式会社カルチャースタディーズ研究所代表取締役。
1958年生まれ。一橋大学社会学部を卒業後、1982年にパルコ入社。1986年に同社のマーケティング雑誌『アクロス』編集長就任。1990年に三菱総合研究所入社。
1999年に独立し、株式会社カルチャースタディーズ研究所を設立し、代表取締役に就任。著書に『下流社会』(光文社新書刊)、『第四の消費』(朝日新聞出版刊)など多数。201711月には『中高年シングルが日本を動かす』(朝日新聞出版刊)をリリース。

※ 会社、役職、年齢など、記事内容は全て取材時のものです

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