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熱量のある人達を組み合わせ、さらに大きな火を生み出す

小島 英揮 おじま ひでき さん パラレルマーケター、エバンジェリスト

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日本最大規模のクラウドユーザーコミュニティ「JAWS-UG」の設計者であり、コミュニティマーケティングを考える「CMC_Meetup」の発起人である小島英揮さん。かつてAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)の日本国内マーケティングを統括。現在はABEJAのマーケティングディレクター、Stripe Japanのエバンジェリスト、ヌーラボの非業務執行取締役、MOONGIFTでのコミュニティアドバイザーなど、コミュニティマーケティングを軸としたパラレルキャリアを実践する。
今回はマスマーケティングの先にあるコミュニティマーケティングという考え方、そして小島さんが実践するパラレルキャリアという二つのテーマで話をうかがった。

写真=三輪憲亮


Part.2

 

■ファンの中から"1番ピン"を探す

 

 実際にコミュニティマーケティングを始める場合、いかにしてコミュニティを作っていくのか。小島さんはその前提条件として「手がける商品やブランドに、しっかりとしたファンがいること」を挙げる。

 

「例えば、これから起業する方から『コミュニティマーケティングを始めたいのですが、何から始めればいいですか?』という質問をいただくことがあります。僕はこういった質問に対しては『今はまだ無理だと思います』とお答えします。理由は明確で、コミュニティマーケティングとは商品やサービス、ブランドにしっかりとしたファンがついて、初めてスタートできるものだからです。もしも明確なファンがいないなら、それ以前に改善しなければならないことがたくさんある、ということですから」

 

 ファンを確保した上で、コミュニティマーケティングを始める。その際には三つのポイントがある。前回、コミュニティマーケティングにおける大切な考え方をボウリングに例えた。ファンがしっかりとついている場合、その中から"1番ピン"役を探すことが、一つ目のポイントだ。

 

 

「どんな人達を1番ピンとして選ぶか。簡単に言うと、熱があって『これいいよ』と周囲に伝えてくれる方々です。私はコミュニティマーケティングを『たき火理論』で例えています。例えばまだ火がちゃんと起きていないうちに生木を入れると、たき火は消えてしまいますよね。『興味はあるけれど、まだよくわからない』というスタンスの人がいきなりたくさん入ってきてしまうと、コミュニティが消耗してしまう。ですから、まずは熱量の高い人を置く。そして、その周りに『もっとやりたい、すぐに体験してみたい』という、たき火で言うとよく枯れた、しっかり燃えそうな存在を連れてくることが重要になります。

 

これを私は『ロールモデル→フォロワー→ワナビーズ』という順番で説明しています。まず、商品やブランドを熱烈にいいと言ってくれるファンの人を『ロールモデル』と呼んでいます。そしてロールモデルの話を聞き、実際に真似したりやってみたりする人が『フォロワー』です。このロールモデルとフォロワーが、ボウリングで言う1番ピンになります。彼らがいいねと言って情報を拡散することで、後ろのピンが倒れる。すなわち『ワナビーズ』が影響を受けていくわけです。

 

 

ただし1番ピンが小さければ、後ろのピンに当たってもなかなか倒れません。たき火理論で言えば、火が消えてしまうことになります。そこで、まずは熱量のある人同士を組み合わせて、できるだけ大きな火にすること。それが大事なスターティングポイントです。

 

よくインフルエンサーマーケティングと勘違いされますが、別モノです。インフルエンサーマーケティングは、拡散させること自体が目的。インフルエンサーへのインセンティブがなくなったら、彼らは他の商品の情報を拡散させるかもしれない。せっかく火がついても、どこかへ行ってしまうわけですね。その点コミュニティマーケティングは、熱が自然と拡散していくもの。コミュニティにいる人達はもともとその商品のファンであるから、インセンティブなど必要ありません。そういう意味では、コスト効率も優れている。

 

ロールモデルとなる人達を探すには、初めから『コミュニティを作ります』と言わず、例えばユーザーの方の会合やファン感謝デーのような機会で商品やサービスについてディスカッションして、いいアウトプットをしてくれる人を探す方法がお勧めです。ロールモデルのクオリティや熱量が、その後のコミュニティに強く影響するので、慎重に探す必要があります。」

 

 二つ目が、ベンダーやブランド側で誰がセンターを務めるのか。そして、その人の行動規範である。

 

 

たくさんの人数は必要ありません。なぜなら熱量は、主観的な物差しで測るもので、その伝わり方は定点観測しないとわかりにくいから。人が都度変わると、コミュニティの温度変化が把握するのが難しくなってしまいます。だから、センターになる人はある程度固定されている方がいいです。

 

例えばAWSの場合は、エバンジェリストと呼ばれるポジションの人が対応していました。またYelpの場合は地域ごとにコミュニティを作らねばならなかったので、コミュニティに対応する人たちのセンサーを同じレベルにするため、社内で担当者のトレーニングを行っていたそうです。コミュニティをケアする人によって反応が違うと、各コミュニティがガタガタになってしまうんですよ」

 

 そして三つ目が、社内の「期待値コントロール」ができているか。

 

コミュニティマーケティングが万能なものだという、過大な期待を社内で持たれていないことが大事です。そのためにはしっかり説明をして、期待値をコントロールすること。果たしてコミュニティマーケティングだけを取り入れれば、アマゾンのようになれるでしょうか? もちろん、そんなことはありません。セミナーも、ハンズオンも、営業活動もしなくてはなりません。
ただし、コミュニティマーケティングに取り組むことは、それらの効率を格段に向上させます。なぜなら、顧客はコミュニティの力ですでに温まっているから。ベースができているところに営業をかけるので、きっとやりやすいはずです」

 

 

■コミュニティを維持するには、アウトプットを促すこと

 

 1番ピンとなるロールモデルとフォロワーが見つかり、ワナビーズが影響を受けて生まれた、熱のあるコミュニティ。次のステップで考えればならないことが、いかにしてそのコミュニティを維持するか、だ。

 

「そこで大切なのがフィードバックループ。やったことに対して何かしらの反応があることが、活動を維持するためには非常に大事だと思っています。そもそもフィードバックを生み出すためには、アウトプットをしなければなりません。例えばコミュニティに参加して何かしらいいと思ったら、そのことをブログを書いたり、ハッシュタグをつけてツイートしてもらうよう奨励しています。ブログに対してたくさんのコメントが入ったり、リツイートされたりすると、単純に楽しいんですよね。そして『じゃあもっと書いてみよう』となる。

 

フィードバックが何もないコミュニティはつまらない。例えばイベントがあっても、ベンダーから出てきた人が毎回ただ話すだけで、みんなオーディエンスで主役になれないので、飽きてしまうでしょう。人間は知りたいという知識欲が満たされ。得たものを発信してフィードバックが来ると、教えたい欲や承認欲求が回り始めるもの。だから私達からも、コミュニティに参加した方々には『極力、ハッシュタグを付けてアウトプットして下さい』とお願いしています。何か質問でもいいし、ブログを書くことでもツイートするだけでも構いません。」

 

 ベストはイベントで壇上に上がり、話してもらうことだという。

 

 

積極的に登壇側に回ることをお勧めしています。もちろんいきなり『30分話してくれ』とか『メインで1時間話してくれ』というのはハードルが高い。でも例えば『使ってみてハマった部分や、思った通りにいかなかったことを3分間トークして下さい』ということであれば、十分できますよね。そしていったん話すと、その後の懇親会で、その人の周りには輪ができて『お話面白いですね』『僕も実はそうだったんです』となる。これがフィードバックループです。
つまり、コミュニティが『自分の場』になるのです。そしてもっと知ってほしいと思うようになり、さらに積極的にアウトプットするようになり、さらに盛り上がっていくわけです。

 

つまり、アウトプットすることが自分ゴト化につながるわけです。これを広告で行うのは結構大変だと、私は思います。広告は『知ってもらう』にはいいかもしれないけれど、知ってから、買う直前までのところ結構大変。コミュニティマーケティングは、そのためのいいソリューションの一つだと思います。
自分ゴト化することで、使い始めた人がもっと長く使う、もっといろいろな製品を使ってライフタイムバリューを上げる、というところに、コミュニティマーケティングは非常に効く。自分が好きな商品やサービス、ブランドがゆえに、使えば使うほど(他のサービスや商品への)スイッチングが起こりにくくなるのです」

 

 Part.3では実際の導入事例とCMC_Meetupの詳細について、話を掘り下げていく。

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プロフィール
小島 英揮

小島 英揮 おじま ひでき

パラレルマーケター、エバンジェリスト

Still Day One合同会社代表社員、パラレルマーケターエバンジェリスト
196923日生まれ 高知県出身。明治大学卒業後、PFU、アドビシステムズを経て、2009年より2016年までAWSで日本のマーケティングを統括。
2016年にコミュニティマーケティングを考える「CMC_Meetup」を立ち上げ。2017年より、決済、AIVR、コラボレーションツールなど国内外のさまざまなスタートアップで、マーケティング、エバンジェリスト業務を「中のヒト」としてパラレルに推進中。

※ 会社、役職、年齢など、記事内容は全て取材時のものです

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