デジタルトランスフォーメーションが進む時代のマーケター像とは

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神田昌典さん特別講演@THE MARKETING NATION SUMMIT 2017

 

10月13日(金)、グランドハイアット東京にてマルケトが主催するイベント「THE MARKETING NATION SUMMIT 2017」が開催されました。「顧客とのエンゲージメント」をテーマにマーケティングの最新動向やこれからのマーケター像について発信された同イベントから、経営コンサルタント神田昌典さんの特別講演「『デジタル×アナログ=文理融合』で変革するマーケティングと営業」の内容をレポートします!

 

■マーケティング活動のすべてが数値化される時代

 

神田さんは、まず2013年ごろから起きたマーケティングの変化を振り返り、「デジタルトランスフォーメーションによって、すべてが数値化され始めている」と指摘します。

 

 

・NPS(Net Promoter Score)

・CES(Customer Effort Score)

・ARPU(Average Revenue Per User)

・ARPPU(Average Revenue Per Paid User)

 

などといった要素が数値で管理されるようになっただけでなく、2017年6月に日本でも出版された『アクセル』(原題『The Sales Acceleration Formula』)には、予測可能な増収のために営業マンの成約率、成約率の高い営業マンを育成するためのカリキュラムや必要な習熟度、育成可能な人材の採用基準といったものまでを数値化する方法論が記されました。

 

 

このマーケティングの新常識によって、どのような変化がもたらされるのでしょうか?事業に与える変化について神田さんは、「差別化できる商品を売っていない限り、企業は急速に利益が出ない水準まで追い込まれる」と言い切ります。マーケティングオートメーション(MA)によってすべてが数値化され統計分析が行われるようになると、競合企業はそれをもとにカスタマージャーニーを整理し、顧客をエンゲージする商品戦略を立てていきます。そこで商品によって差別化し、自社の顧客をしっかりとエンゲージすることができなければ、価格競争で消耗していくことになるのです。

 

つまり競争に勝つためには、会社の真の強みに基づく事業、商品を持つことが不可欠ということ。デジタルトランスフォーメーションによって、企業は自社が自社であるべき理由を見直すことを迫られるのです。

 

 

■MAでうまくいく会社、うまくいかない会社

 

マーケティングの範疇を超え、経営までもを変革させるMA。うまく活用していくためには、マーケターはどのように動いていくべきなのでしょうか?これに対して神田さんは、「マーケターは変革のリーダーとならなければいけない」と語りかけます。

 

講演では、MAでうまくいかない会社の例が次のように挙げられました。こうした会社を変革させるにはマーケターが立ち上がり、周りを巻き込んでいく必要があります。

 

【MAでうまくいかない会社】

・トップが他人事として考えている

・企業文化が強すぎて、新しいものを排除する

・他の部署との利害関係が障害となり、理解を得られない

 

企業文化は顧客をエンゲージするために必要な要素です。しかし、企業文化があるからといってデジタルトランスフォーメーションを行わないままでいれば、他社がMAを導入していく中でいずれ競争力を失ってしまいます。

 

 

MAでうまくいく会社の例も挙げられていましたので、ご紹介しておきましょう。

 

【MAでうまくいく会社】

・成長を重視したベンチャー企業

・商品が少ないためカスタマージャーニーがシンプル

・社長が意思決定できる

・規模が小さいためみんなが協力できる

 

こちらは先ほどとは反対に、スムーズにMAの導入・活用が進みます。ただし成長企業の注意点として、企業文化がないままでいると社長が退陣して危機的状況を迎えているUberのように、いずれ行き詰まってしまうことが言い添えられました。

 

 

■変革のリーダーにふさわしい人材とは

 

では、デジタルトランスフォーメーションのリーダーには、どのような人材がふさわしいのでしょうか?神田さんは、「文系と理系が融合した形、もしくは異なる思考の統合を実現できる」人材であると答えます。過去のマーケティングは、短期間で認知度を上げるためのクリエイティブが重視される“文系”の分野でした。クリエイティブによって消費者の反応が左右されることは、今でも変わりません。しかし、これからのマーケティングには統計分析をもとにアルゴリズムを導き出し、AIを設計するという“理系”の要素も求められるようになるというのです。

 

神田さんはリーダーにふさわしい人物像として、さらに女性であることを挙げています。メルボルン大学客員教授のマーク・キットソンによると、女性の脳は処理を担う部位の比率が男性より20%多いことにより、直感や洞察力、コミュニケーション力においては女性のほうが優れているとのこと。神田さんはさらに、男性は客観的な判断を司る左前頭葉が加齢の影響を受けやすいのに対し、女性においてはそのような現象が起こらないことも挙げ、脳科学の見地からは女性がCMOとして優位と結論づけました。

 

CMOを女性に。それを突破口に変革を加速せよ!

 

イベント会場では2000名以上が神田さんの話を聞いていましたが、そのうち女性は10%程度。この比率を見る限り、マーケティング領域における女性活用はまだ十分に進んでいるとは言えません。女性の活躍を推進し、女性CMOが増えていくことで日本のマーケティングは変わっていくのかもしれません。

 

アメリカでは約半数が女性の参加者

 

■男性マーケターは同盟を組め

 

脳科学的に女性がリーダーにふさわしいからといって、男性マーケターが不要かといえば、もちろんそんなことはありません。神田さんは男性マーケターに対し、次のようなアドバイスをしています。

 

・30代40代の男性は同盟を組め

・50代の上司はデジタルネイティブ世代を活用せよ

 

50代上司は自身がデジタルネイティブではないので「ネイティブ世代を活用せよ」というのは理解できます。しかし、30代40代男性の「同盟を組め」とはどういう意味でしょうか?この意味は、日本の変遷を見ていくとわかります。日本の歴史を振り返ると、時代が変わるタイミングで活躍してきたのはいずれも30代から40代の人物。坂本龍馬や西郷隆盛も30代で日本の歴史を大きく動かしました。現在の日本もまさに歴史が変わろうとするサイクルにあると神田さんは言います。

実は同盟を結ぶべき相手を探すのにも、MAツールが活躍するのだそうです。マルケトなどのMAツールを通じて社員にメールを送れば、開封率やサイト訪問回数をもとに改革や新しいプロジェクトに積極的な人材を判断することができます。つまり、社内に変革を拡げるための同志を集める仕組みもMAツールに備わっているというわけです。

 

 

今後、AIの活用が進めば企業間の競争はさらに加速していくでしょう。MAを導入し、十分に活用できるようになるまでには時間がかかります。マーケターが立ち上がり、改革に着手すべき時はもうすでに始まってると言えそうです。

 

(終)

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