テクノロジーの進化で変わるクチコミ
三木 佑太 [記事一覧]
株式会社サイバー・バズ広告メディア事業部 執行役員。 1987年、大阪府出身。2010年サイバーエージェント入社後、 サイバー・バズへ出向。2014年局長に就任し、サイバー・バズで 受注した案件のプランニングの約8割以上を手がけている。2016年広告メディア事業部 執行役員に就任。LINEやAntennaとの 定期的な合同セミナーや総合広告代理店と共同で大型案件にも携わる。共著「クチコミデザイン」を2014年に出版。
テクノロジーの進化で変わるクチコミ
こんにちは。三木です。
最近のデジタル業界のトレンド用語といえば、IOT、AI、チャットボットなど多くの新しい技術が生まれてきています。
このデジタル業界の流れはクチコミにも大きな影響を及ぼしていますが、テクノロジーだけでは解決できない課題も多くあります。今回はテクノロジーによるクチコミ変化について考察したいと思います。
例えばプロモーション施策において、タレントやモデルなどをキャスティングをする際、テクノロジーが使えるのかと疑問を抱く方も多いかもしれません。
以前はアサインしたい方を、人的に探し出し、その人に合わせたオリエンを作り、アサインを事務所に依頼するという一連の流れがありましたが、現在では目的や、ブランドに合わせて、データベースから最適なタレント、モデルを導きだし、その方に対してのオリエン内容も過去の案件実績、普段の投稿から最適なものを提示するということが技術上は可能です。
弊社も含め各社テクノロジーをキャスティングに取り入れ始めていますが、まだまだ完璧に使いこなせているところはありません。
これにはデータベースとなる案件数が足りていなかったり、ロジックを組むことができていないことが原因です。この2つを解決することができれば、テクノロジーの力により大きくキャスティング施策の効果は向上することが予想されます。(もっと他に細かく効果向上の条件は沢山ありますが。)
現在ではシステムを活用してキャスティングリストを生成したり、人気のハッシュタグ(#)を集約するツールを使いトレンドハッシュタグを調べ、それに基づきインスタグラムの人気投稿欄に掲載を狙うべく設計することで、フォロワー数以上のimp数を計測する事例も増えてきています。
このように今までのキャスティング経験を活かし、行っていたもののテクノロジー化が進んでいます。
ただここで気をつけたいのはテクノロジーの力だけで、必ずしも効果の高い施策ができるわけではないという側面です。
あくまで最適なハッシュタグの設計は可能になりますが、過去になかったハッシュタグを作り出したり、ロジックに組まれていないハッシュタグを作り出すことはできません。これはトレンドに敏感な若者を中心に感性を持って作り出せるものだからです。
つまり“創造する”という部分においては、まだまだテクノロジーでは解決できないものが残っています。特に広告という領域においては、テクノロジーの進化による、最適化や効果改善はみられますが、クリエイティブジャンプやキーワード開発などについては、まだまだ「人の感性」が重要です。
テクノロジーによって簡略化され、短縮された時間で感性を磨き、掛け合わせることにより、効果を最大化することが、この先のクチコミプランニングではさらに必要となります。
もちろん将来的には代替えの可能性はありますが、まだまだ先のことかと考えます。
Amazon EchoやGoogle Home、Clovaをはじめとする「音声アシストAI」ですが、米国では既に2,450万台を出荷されておりトレンドの一つになっています。まだまだ国内では普及まで時間がかかりそうですが、天気予報、チャンネル、スピーカーなど様々な機器の代替えとなり、除々に普及が進むことが考えられます。
クチコミもテキストから静止画、静止画から動画という形に使うデバイスや扱うメディアによって変化を遂げています。
音声アシストの普及により、例えば今まで見ていたレシピサイトが音声アシストAIに話しかけることで、音声でレシピを解説してくれることは想像がしやすいです。消費者は、手を放したくない料理中にいちいちスマホを見たり、動画を見ながらではなく、音声アシストに従いながら料理ができ、まるで料理教室の先生に教えてもらっているような感覚に近くなるのではないでしょうか。
このように今まではクックパッドや楽天レシピのようなレシピサイトへのレビューが、近い将来音声でのレビュー投稿になる日も遠くないかもしれません。そうなると、より音声でわかりやすくするには、どうすればよいかを投稿側は考える必要があり、テキストや画像とはまた違ったクチコミが発生することが予想されます。
音声でのクチコミになると歩きながらイヤホンで聞いたり、何かしながら確認したりすることが増えることが予想され、今までにないクチコミ消費が起こり、クチコミをしなかったものやクチコミを参考にしなかったものまでが、“クチコミを参考にするもの”となる可能性があります。
例えばテレビで放送されている商品がほしいと思い、それを話しかけるだけで気軽にレビューを聞けるようになると、ユーザーの検討行動も大きく変わります。まず店頭に行く前にレビューを確認したり、Googleで検索する前に音声で確認をしたりすることが予想されます。
音声アシストAIで便利になる機能にだけ目を向けるのではなく、それによって生活者の購買までの導線がどう変わるのかを予想することが重要です。
今回は、企業目線でのキャスティングのお話と、消費者目線での音声アシストAIに注目しました。数年前までは予想もできなかった世界はすぐそこまで来ており、あっという間に普及し、一般化されていきます。そんな中でもクチコミがなくなることはないと考えています。
メディア、デバイス、消費者行動により形を変えたりと最適化されていくでしょうし、また最適なクチコミプランニングをする側もその変化を敏感に感じ取り、単純にテクノロジーだけに頼るのではなく、自分の感性を磨きながら最適な設計をすることが大切になります。
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