マーケティングいろはかるた

堂下 ナツコ

堂下 ナツコ [記事一覧]

職業:外資系中堅フードチェーンCMO。一言:マーケターになりたい、とも、マーケティングの仕事をしよう、とも思ったことがないはずなのに、気が付けば15年間、時にエージェンシーで、時に事業会社で、「マーケティング」に携わり、さまざまな企業の「マーケティング部」と関わってきました。
経歴:国内大手情報出版社 / 戦略的Webベンチャー / 外資系広告代理店 / 世界最大手ファーストフードチェーン


Vol.4
「自覚なきCMOが思う<ニッポン【究極】のマーケティング部!>」

 

私が大好きなとある古い温泉旅館は、9つのお湯の泉質はもちろんのこと、「まごわやさしい」と銘打たれた健康的な食材を、バランスよくとりいれたビュッフェの夕食が好評である。

 

ま…まめ
ご…ごま
わ…わかめ
やさ…やさい
しい…しいたけ

 

もちろん「とびっこ」をレッドキャビアと呼んだりもしないので、わかりやすく覚えやすい。値段もとても良心的だ。
「孫は優しい」という響きもほんわりしていて穏やかな気持ちになる。何かとギスギスすることの多いマーケティング部の現場ではあるが、このほんわりコピーで考えてみた。

 

■マーケティング部的まごわやさしい

 

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ま…まけない
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プロジェクトのスタートとともに、まずは82個ぐらいの「問題」がもちあがる。マーケターが最初に必要とするのは、この大量の問題に「負けない」気持ちである。少ない予算と無理なスケジュールのことは、ひとまず考えない。この2つは多くの場合、「問題」ではなく「前提条件」だからだ。

 

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ご…ごたくを並べない
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プロジェクト序盤で陥りがちなのが「ふと、まっとうなことを言ってみたくなる」トラップである。紙の上では申し分ないように見えるプランを、社長にまっこうから否定されたようなときに、それはおこる。

「っていうか、社長が言ってるのは戦術であって、戦略じゃなくない?」

…その通りである。だがしかし、今、ごたくを並べるべきではない。残念なことに正解はだれも求めていない。戦略と戦術の違いをわからせたところで、モノゴトは進まない。どのみち教科書どおりにはいかない。それより「うまくいきそう」と思わせることにパワーを使おう。

 

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わ…わからないことはわからない
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プロジェクトが進むにつれて、さまざまな施策や制作物が具現化してくる。他部署とのネゴもすませ、道路使用許可もとった。チラシのデザインもあがってきた。その辺りで突然、営業本部長に聞かれる。

営「このプロモーション、うまくいくの?」

ぐっとこらえて、数字をいっぱい書きつけた資料をひっぱりだす。

マ「駅の通行量がこれぐらい、チラシ配布枚数が何枚、チラシを受け取った人の想定7%が…」
営「7%?...7%!?」

マ「チラシにクーポンはつけません。が、オトクなキャンペーンと商品を載せて、一目でわかるように…」
営「一目でわかる?これ、一目見てみんなわかる!?」

マ「裏面にはギフト商品と、予約受付番号を書いて、クロスセルと単価アップを…」
営「裏面?見るの?お客さん裏面見るの!?」

心の中で叫ぼう―『わからない!!』
言うまでもなく、世の中にはやってみなければわからないことがたくさんある。プロジェクト中盤のこの時期、なぜかマーケティング部以外の部署はなぜかみな、この事実を忘れるのである。

 

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やさ…やさぐれない
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文字通りの意味である。
いっこうに片付かない問題、思いがけない横やり、まさかの発注忘れ、部下の体調不良、台風、本国から突然「昨年のプロモーションの結果を、金曜までに英語でレポートせよ」と言ってくる、経理から「先月の部の交通費が予算オーバーしてます」と怒られる、総務から「このシマ、整理整頓ができてない」とキレられる、お店には必要なポスターが届いていない、メディアは取材の時間がはっきりしない、社長は「新基軸の商品」がどうなったかを知りたがる、営業は今ごろになって「もっと強いクーポンがあればいいのに」と言う、まともなランチなどもう3日も食べてない。

よくあることである。やさぐれないで、微笑もう。

 

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しい…しいない(強いない)
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最後にとても大切なこと。大変な思いをして発売にこぎつけた新商品。
お客さまに感動を強いてはいけない。

 

■目指せ「まごにもやさしいマーケティング」

 

「元祖まごわやさしい」とは真逆の殺伐とした雰囲気になってしまった。
マーケティングとは、本来、「ひとりでも多くのお客様に愛されるための、すべての行為」を指すと私は思う。孫にも馬子にもわかる、理論的にも精神的にもやさしいマーケティングが、本当は正しいはずだ。誰が見ても「おいしそう」なポスター、誰が聞いても「お得だ」とわかるキャンペーン、そして誰もが欲しくなる商品!―究極のマーケティングを目指そう!

皆さんのマーケティング部的「まごわやさしい」、ぜひ一考ください。

 


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