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メイド・イン・ジャパンとトレーサビリティ

石川 俊介 いしかわ しゅんすけ さん 株式会社エグジステンス デザイナー

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「大量生産・大量廃棄」から「サステイナブル」へ。ファッションブランドに今後求められるのは、原料と生地の生産過程の透明化、そして持続可能性の追求。サステイナブルであるかどうかは今後、ブランドの存続を左右する要素となるだろう。今回は「メイド・イン・ジャパンの服作り」を掲げるメンズブランド「マーカウェア(MARKAWARE)」「マーカ(marka)」を主宰するデザイナーの石川俊介さんにお話をうかがう。

写真=三輪憲亮


Part.3

 

■いつか必ず、メイド・イン・ジャパンの時代が来る

 

 2003年のmarka立ち上げから、石川さんは「メイド・イン・ジャパン」の服作りをコンセプトとして掲げてきた。その背景には、衰退を続ける日本の繊維産業をどうにかして救いたい、という思いがあった。

 

「1990年代の終わりから2000年代初頭、日本ではインポートブランドの人気が高かった。その一方で、ドメスティックブランドや大手アパレルメーカーは、海外への生産拠点のシフトを進めていました。彼らが考えていたのは『中国でどれだけ安く服を作れるか』。日本の繊維業界は、極めて苦しい状況にありました

 

そんな中でも当時「ドゥニーム」や「ザ・リアルマッコイズ」といったブランドがアメリカのヴィンテージデニムをメイド・イン・ジャパンで復刻したり、「ループウィラー」が伝統的な「吊り編み機」を使ってカットソーを作ったりと「日本のモノ作り=面白い」という流れも、密かに生まれつつあった。

 

 

「日本の繊維業が最もよかったのは大正時代。そこから第二次大戦から朝鮮特需にかけて繊維業が大きく盛り上がり、バブル期までいい時代が続きました。その中で、日本の繊維工場には他の国にない古くからの技術や面白い製法がいろいろ残っていることを知りました。

しかしその反面、生産工場は高齢化が激しく進んでいました。この状況が続けば、確実に日本の繊維産業は終わってしまう。自分達がもっともっと、メイド・イン・ジャパンのモノ作りをアピールしなきゃいけない。そして、日本の繊維産業を元気づけたいと思った。

markaがメイド・イン・ジャパンをうたったことには、そんな背景がありました。当時、同じことをしているブランドはなかったと思います。メイド・イン・ジャパンの時代が必ず来る。僕はそう信じていました

 

 

日本はまだまだ面白いものを作れる国。それをファッションの世界でしっかりと証明したいと思った。

 

「markaの立ち上げ当初、生産はいわゆる「振り屋さん」(ブランドから生産を請け負い、パターンの作成や生地の手配、工場への生産依頼から納品までを一貫して引き受けるメーカーのこと)に委託していました。でも僕らは凝り性。他とは違う、もっとこだわったものを作りたい。その思いが強くなるほど、でき上がりにもどかしさを感じるようになっていました。

作りたいものを作ろうとすればコストが合わず、こちらが使いたい工場や設備もなかなか使えない。そんな壁を超えるため、メンズを立ち上げて1~2年経ったころから自分達で国内のさまざまな工場と直接コンタクトするようになりました。どうにかして住所や電話番号を調べ、やっと知り合った業者さんにまた別の工場を紹介してもらう。そんなことを続けながら、国内の工場とコネクションを築いていきました。

markaのメイド・イン・ジャパンは面白い。その評価を決定づけたのはMA-1です。以前にザ・リアルマッコイズさんが本格的なものを作っており、それをよりファッション性の高いシルエットで作りたくて、工場にお願いして、同等のクオリティのものを生地から中綿・ファスナー等に至るまでメイド・イン・ジャパンで作った。それを皆さんが驚いてくれて、markaのモノ作りと日本製のよさに対する理解が深まっていきました」

 

 

2009年からはmarkaとMARKAWAREの2ラインを展開。石川さんがデザインする服は、徐々に大きな評判を呼んでいった。

 

■原材料までは追いかけていなかった

 

 石川さんは、展示会の資料に素材名や製造工場の名前などを開示。できる限り多くの人に、自らのブランドの服が作られるまでのバックボーンを伝えていった。

 

バイヤーさんなどさまざまな人に『ここの工場はこういう作り方をしていて面白いんだよ』などと、展示している服の生産背景を知っていただきました。当時そんなことをしているブランドはなかったと思います。この姿勢を一部のマニアックなバイヤーさんやスタイリストさんが面白がってくれて、それが一般消費者の方々に伝わっていきました」

 

現在、MARKAWAREの服に付いているタグを裏返すと、そこには素材や原産地、加工している工場の名前など、あらゆる情報が開示されている。その原点は、かつてコーヒーとチョコレートの店を営んだ経験にあった。

 

 

「僕はもともとコーヒーが好きだったので、2012年にコーヒーとビーン・トゥ・バー(カカオ100%のチョコレート)の店をオープンしました。当時は東日本大震災の翌年だったこともあり、人の考え方が大きく変わりつつあるタイミングだった。個人的にも環境問題について深く考えるようになっており、材料はしっかりした産地のオーガニックなカカオを使っていました。

そのこだわりをお客さんに熱く語っていたのですが、その時に気づきました。僕はカカオに関してはすべてオーガニックでサステイナブルなものを使っている。でも、自分の服作りはどうなんだろう、と

 

 確かに糸から後ろの製造工程については、しっかりと押さえている。でも、日本を遠く離れた場所からやって来る原材料がどのように作られているのかは、まったく追いかけられていない。そして、震災で人の考え方が変わりつつある中、ファッション業界がこのままでいいはずもない。

 

 

「当時、食のトレーサビリティは徐々に浸透しつつありました。でも、アパレルで、原材料のサステナビリティを追求しているブランドはない。どんな原材料を使い、どこでどうやって作っているのか。そのすべて開示し、ここで勝負をかけたい。そう強く思いました」

 

 最終回となるPart.4では、原材料のサステナビリティの追求、そして石川さんの服作りのこれからについて、話を聞いていく。

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プロフィール
石川 俊介

石川 俊介 いしかわ しゅんすけ

株式会社エグジステンス デザイナー

1969年兵庫県出身。学生時代からファッションが好きで、古着やスニーカーの買付けなどを積極的行う。大学卒業後は経営コンサルティングの会社に勤務。
2002年にレディースブランドとして「marka」を立ち上げる。
2003年からメンズをスタートし、2009年より「MARKAWARE」と「marka」の2ラインを展開。
2011年に中目黒に直営店の「PARKING」をオープン。2019年秋冬より新ブランド「Text」を展開予定。

※ 会社、役職、年齢など、記事内容は全て取材時のものです

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