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「コミュニティボールパーク化構想」そして「スタジアムを超える」

池田 純 いけだ じゅん さん (株)横浜DeNAベイスターズ 代表取締役社長

Part.2

 

■野球をきっかけに、さまざまな人が集まる場所に

 

  ターゲットである「アクティブ・サラリーマン層」に、再び球場へと足を運んでもらう。そのためには横浜スタジアムならではの魅力について、あらためて見直す必要があった。

 

「確かにメジャーリーグのような、大きくて広くて遊び心が随所にあるボールパークに進化できるなら、もちろん素晴らしい。でもそれはこの立地のよさが故、なかなか難しい。限られた立地の中で"次のスタジアム"を作っていかねばなりません。

では、横浜スタジアムならではのよさは何だろう。その一つとしてあるのが、星空の下でナイターを楽しめること。これは、例えば東京ドームにはない楽しみですよね。開放感たっぷりの星空の下で、港風を感じながら野球観戦できるのは、横浜というオシャレで洗練された港街ならではの、オリジナルなエンターテイメントとして進化させていくときの大切な要素。

われわれは、東京にはないオンリーワンのプロ野球とボールパークを創っていく必要もあると考えています。横浜は東京からたった30分。東京で働いている人も多いですし、横浜にしかないものが、わざわざ横浜で観る理由にはなりますから」

 

 こうしたことを含めて打ち出したコンセプトが『コミュニティボールパーク化構想』である。横浜スタジアムを、野球をきっかけに街のいろいろな人達が集まるコミュニティにしよう、という考えだ。その一環として、例えば球場の外でビアガーデンを運営したり「食べて勝!B食祭」と称して神奈川のさまざまなB級グルメを集めたりなど、多くのイベントを開催。中でも話題となったのが、昨年8月ですでに3回目となった「YOKOHAMA STAR☆NIGHT」だ。入場者全員に無料で「YOKOHAMAユニフォーム」を配布。横浜にゆかりのあるアーティストの音楽と共に、花火を楽しんだり、スタジアムを消灯しファン全員でペンライトを点灯したり。その美しさも大きな話題となった。

 

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満員のYOKOHAMA STAR☆NIGHT 2013 ©YOKOHAMA DeNA BAYSTARS

 

「今は一つ一つのイベントを育てていこうという段階です。YOKOHAMA STAR☆NIGHTはそれらの中でも目玉として、今年は更に進化させます。スタジアムの中だけでなく、街の中でも、たくさんのお店や地域の方々にユニフォームを着ていただき、街全体が一体になってお祭り騒ぎで盛り上がって、みんなで元気になろうというこのイベント。昨年は3試合連続で大入りとなり、総計9万人近い方に球場に来ていただきました。その人たちが街中にも流れ出ました。横浜には5月にパレードがあったり、夏に花火大会があったりしますが、われわれはYOKOHAMA STAR☆NIGHTを、それらと並ぶ横浜の夏の風物詩として育てていきたいと考えています

 

 スタジアム内の改装にも着手。画一的に同じシートが並んでいた昔ながらの構成を変え、ファミリー用や接待に使える高級シートなど、多彩な座席展開を行う。

 

「今年新たに考えているのが『パーティスカイデッキ』です。一番上の段で周囲から見えにくい構造になっていて(笑)、野球の雰囲気を楽しみながら、パーティや合コンをしてくれたらと考えて設けました。その席限定の DeNA ベイスターズオリジナルラベルのシャンパンなどをセットにしたりも考えています。野球が好きな人が集まるだけでなく、野球をつまみにいろいろな人が集って、野球の雰囲気と共に会話を楽しむ空間。 そういった地域のランドマークを実現していきたいです

 

■「プロ野球がある街。」ということを、強く認識させる

 

  ディー・エヌ・エーによる球団の買収が2011年12月。そこから2013年までの2年間で注力してきたのは、球場の改修やイベント開催など、顧客満足度を上げるための「スタジアム内」のことだった。そしてその結果は、明確な観客動員数の増加という成果となって表れた。その上で掲げる2014年のテーマは「スタジアムを超える」。スタジアムを飛び出し、横浜の街中に DeNAベイスターズの存在をアピールすることだ。

 

今年は『I☆(アイラブ)YOKOHAMA』というコトバを、横浜に広めていきたいと考えています。ニューヨークの街中で『I♡NY』と書かれたTシャツやステッカーをそこかしこで見かけたように、I☆YOKOHAMAというコトバをさまざまな形で皆さんに認知してほしい。そして、押し付けがましくなく、「プロ野球がある街。横浜」ということを再確認してもらいたい。

横浜の人達はみなさん、横浜という街を本当に愛しています。大好きな街のアイデンティティの一つに野球がある、ということを、自然な形で認知していただきたい。それは今すぐ球場にお客さんを呼ぶ結果にならないかもしれないけれど、地域の絆としての認識形成マーケティングにはつながる。

 

例えば横浜出身や、神奈川出身の有名人の方にスタジアムに来ていただいて、始球式をしてもらうだけでなく、その時にI☆YOKOHAMAと書かれたTシャツを着てもらったりして Tシャツを広めたり、「I☆YOKOHAMA」の言葉で皆がつながるムービーに参加してもらって YouTubeにアップしたり。さらには、I ★YOKOHAMAステッカーを「スタジアムに来てくれた証」として配布したりして、I☆YOKOHAMAというコトバが自然と街中に広まっていって欲しい。街のアイデンティティとしてプロ野球、横浜DeNAベイスターズがあるんだな、ということを、草の根的に認識していただくことができるのではないかと考えています」

 

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 また池田さんは、いわゆるライト層がふとしたときに「またスタジアムにプロ野球を観に行きたい」と思うキッカケは、試合結果であると分析している。

 

「例えば試合の映像を街中で流しても、それはある程度の時間を占有することになるので、好きな人しか見ない。ライト層の関心を引き易いのはそれよりも『今日はDeNAベイスターズ、○点取って勝ったんだなあ』とか一瞬で理解される、そういうこと。一番簡単に興味を惹けるのは『試合結果』だと考えています。先日の冬期オリンピックも同じことだったのではないでしょうか。興味が強くなれば、リアルタイムで観て一喜一憂しますが、そこまで関心の高くない競技でも結果が耳や目に入ってくれば、気になりましたよね?そうしてもっと観たくなる。

 

今考えているのが、横浜スタジアムのスコアボードそっくりなものを街中の多くの人の目に触れる場所に作ること。そして『ああ、今日は○対○で勝っていて、ブランコがホームラン打ったな。今日のピッチャーは三浦大輔か』と一瞬で「見て」わかるように、スタジアムのリアルなスコアボードの表示を、バーチャルスコアボードにディレイなしで飛ばしたい。そういうものを街の人が多く通る拠点に設置することで、ライト層の隠れファン達に、常に DeNAベイスターズの存在を気に留めておいてもらうことができるのではないかと考えています

 

 横浜でプロ野球チームを運営し、ファンに愛されるためには、この街の特異性について知っておくことが非常に重要なカギとなる。
次回は横浜というエリアのマーケット的特性について、深く掘り下げていく。


プロフィール
池田 純

池田 純 いけだ じゅん

(株)横浜DeNAベイスターズ 代表取締役社長

1976 年1月23日神奈川県横浜市出身。鎌倉高校~早稲田大学商学部を卒業後、住友商事を経て博報堂へ。
博報堂ではマーケティング戦略の立案、企業再生ブランド コミュニケーションなどに従事。
その後コンサルティング会社などを経て、2007年ディー・エヌ・エー入社、マーケティング担当執行役員。
2010年に NTTドコモとの合弁会社であるエブリスタの社長に就任。新規に事業を構築し、1年で黒字化を果たす。
2011年12月、横浜ベイスターズの買収に伴い、 球団の初代代表取締役社長に就任。

※ 会社、役職、年齢など、記事内容は全て取材時のものです

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