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「SOCIAL OUT TOKYO」というイノベーション

大畑 慎治 おおはた しんじ さん AM/D(株) 戦略・事業プロデュース本部 本部長

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多くの企業のブランディングや新規事業開発を手がけ、現在は大手企業のリブランディングや新規事業の創出を行う大畑慎治さん。戦略とクリエイティブを起点としたブランドコンサルティングにおける大切な考え方、そして自らプロデュースする新規事業創出プロジェクト「Social Out Tokyo’18」について、お話をうかがう。

写真=三輪憲亮


Part.2

 

■収益性のある、サスティナブルな新規事業を創り出す

 

 今、大畑さんが特に力を入れているプロジェクトが、この5月にスタートした新規事業創出プロジェクト「SOCIAL OUT TOKYO’18」だ。「サスティナブルな新規事業の創出」を目指して、ミズノ、スノーピーク、スマイルズ、リバースプロジェクト、マザーハウス、サニーサイドアップ、カンコー学生服、コクヨ、富士通、ソフトバンク、ニチガスなどの企業が参加。しっかりとした収益性のある事業のアイデア創出と実現を目指す。

 

Social Out TOKYO 公式ページ

 

「今年2018年度は第1回目ということもあり、まずは理想として、どんな企業さまが集まれば面白いプロジェクトになるかを考え、こちらからお声がけしました。基本的に1業種1社と決めて集まっていただいています。ポイントの一つは、その業界の中でフットワークが軽いこと。実際にプロジェクトを共同で形にしていくことを考えた時、会社としての動きが遅いと、どうしても進まなくなる。その状況を避けるためにも、できる限り動きの軽い企業さんにお声がけしました。

 

また、大企業とベンチャーの両方に参加いただくことも意識しました。大企業には資産やネットワーク、営業力などの強みがある一方、他業界の情報がなかなか入ってこない環境でもあるため、業界を隔てた次世代ビジネスに対する斬新な発想は必ずしも得意ではない。。そこで、スマイルズさんやリバースプロジェクトさんなどにもプロジェクトメンバーとして参加いただき、『この会社とこの会社さんが組んだら面白いことができるんじゃない?』というアイデアを積極的に出していただくことを期待しています。

 

 

基本的に、プロジェクト企業各社が既存事業とは異なる領域の事業を開発していきます。そのために意識しているのは、まず、プロジェクトメンバーがお互い、各社さまざまな業界のリソースを自由に使うことが許され、柔軟にブレインストーミングしていける状況を作ること。つまり場作りです。

 

あとは各企業のプロジェクトに対するコンセンサスを取ること。メンバーとして参加いただく企業さんには、ただ単に勉強をしに来るのではなく、何かを必ず生み出す場であることを、きちんと認識してもらうことが大事。全員で集まる機会は月に一度。これを半年で行っていく予定です。僕達も積極的に参加し、プログラムの価値を高めていこうと考えています」

 

 最も大事なのは、SOCIAL OUT TOKYOという場から何を生み出すかということと、プログラムが終わった12月以降に、でき上がったものを確実に実行することだ。

 

「そのためにも5月28日に開催した第1回では、まずは、自分達が本当にやりたいことは何かを考えることからスタートしました。『自分のやりたいことをやる。人の熱意を大切にした経営デザイン』というテーマで、スマイルズの遠山正道さんに講演していただき、『好き』を中心とした事業創出のあり方を考えていきました。

 

 

そして第2回では『大企業とベンチャー視点から学ぶCSVとSDGs』と題し、大企業であるキリン執行役員・の坪井純子さんと社会派ベンチャーTOKYO油電力代表の染谷ゆみさんに、それぞれの目線から今の時代にあるべきCSV(Creating Shared Value)とSDGs(Sustainable Development Goals)視点のビジネスを考えるノウハウを語っていただきました。

 

※SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)とは、 2015年に国連サミットで採択された、2030年までに達成すべき17の国際目標のこと。途上国の課題だけでなく、先進国が直面する課題も組み込まれているのが特徴。

 

プロジェクトのグループワークを通じて、徐々にプロジェクト企業が組み合わさることで実現できる事業を考えていきます。柔軟に考えつつスピーディに動く会社さんが多いので、きっとアイデアは無数に出てくるはず。プロジェクト序盤は、その試行錯誤を進めるための情報整理が必要なので、今後の核となり得る各社の特徴や考えを引き出すためのワークをしながら、お互いの理解を深めていきます。

 

プロジェクトでどの様に事業に落とし込んでいくかの大きな流れは考えているのですが、すべては決め込まないようにしています。予定調和なプロセスでは本当に新しいものは生まれ難いですし、プロジェクトの状況を見ながら、その時その時の最善のアプローチを走りながら決めていく。そんなイメージです」

 

 

■プロダクトアウト、マーケットインという発想ではなく…

 

 「おそらく今月(7月)末に行われる第3回以降は、具体的なビジネスモデルを詰めていくことになる」と大畑さんは語る。

 

「きっと、3つ4つのアイデアが出てくるはず。それをキャンプ合宿を含めた秋冬にかけて事業アイデアの形にしていく感じです。実現段階では各社の社内調整も必要でしょうし、場合によってはプロジェクトメンバー以外の参加も必要になるはず。その調整を行いながら、12月以降にアイデアをより現実的に実行していけるように、体制を作っていきます。

 

また、事業の形が具体的に見えてきたら、その段階からは分科会のような形で進めていただくこともあると思います。複数の事業アイデアに参加する会社も出てくるかもしれないし、そのあたりは臨機応変に考えていきたい。基本的に、状況に合わせてファシリテートするしかないと思っています。そもそも、順序よくプロセスを進めることが目的ではありませんから。

 

新規事業をやっていると、物事が一気に前に進むタイミングがあります。たまたまの出会いやいきなり生まれたアイデアなど、さまざまな偶然が物事を大きく前に進めます。だからこそ、僕達も状況をしっかり見ながらファシリテートしなくてはなりません。例えばいいアイデアが出なかったら、こちらで考えながら導いていく、なんてこともあると思います。実際に事業アイデアが成立するまでには、山あり谷ありになるでしょう」

 

 

 この5月からスタートしたSOCIAL OUT TOKYO '18のプロジェクトプログラムは、2018年中に完結。プロジェクトは1年単位で考えている。時期を区切って毎年開催することで、SOCIAL OUT TOKYOのブランドができ上がっていくと考えているからだ。

 

来年のメンバー構成についてはまだ決めていないのですが、個人的には企業さんの顔ぶれが変わった方がいいと思っています。同じ会社さんばかりでは新鮮味がなくなりますし、時代に合わせてテーマを変えていくには、その方がいい。

 

そもそも『SOCIAL OUT』というネーミングには『社会問題の解決に、企業がどう貢献していくか』という意味合いがある。ビジネスにおけるプロダクトアウト、マーケットインという発想のソーシャル版。ソーシャルアウトは、社会課題からビジネスを考えるのではなく、事業を生み出してからそれをソーシャルに繋げていく、という考えが込められています。なので、このプロジェクトで生み出す事業は、CSR的なものであってほしくない。ソーシャルは利益追及の難しい領域ですが、きちんと企業が事業として確立し、それが社会貢献に結びつくことを目指します。なぜならば、それこそが営利企業のあるべき姿だと思うからです」

 

 

 次回Part.3は、大畑さんのこれまでのキャリアについて。

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プロフィール
大畑 慎治

大畑 慎治 おおはた しんじ

AM/D(株) 戦略・事業プロデュース本部 本部長

1981年和歌山県出身。大阪大学大学院を修了後、2005年より東リ株式会社で研究開発と新規事業開発の二足のわらじで活躍。並行して2011年3月にMBAを取得する。
2015年より株式会社アクサム、2016年よりamidus株式会社にてブランドコンサルティングや経営戦略立案、新規事業創出などに従事。
201710月よりAM/D株式会社にて、引き続きさまざまな企業の新規事業開発やリブランディングなどを手がける。

※ 会社、役職、年齢など、記事内容は全て取材時のものです

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