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"使いやすい"とは、"考えさせない"こと
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"使いやすい"とは、"考えさせない"こと
2013年末にローンチされたR∞(アール・エイト)は、どのようなプロセスでデータを分析し、顧客一人一人へのOne to Oneマーケティングを実現していくのだろうか。
「まずはデータ構築です。クライアントが蓄積している顧客属性データ、購買データ、商品データ、アクセスログなどを、R∞で利用できる形に変換します。専門のコンサルタントがサポートしますので、スムーズにデータを蓄積していただけます。
次に行うのが分析。RFM分析で購買行動と購買履歴から優良顧客のセグメンテーションを行ったり、LTV分析で購入回数や金額を調べることで、顧客やWEBサイトの状況を見える化。売上金額や購買回数を元にランク分けを行い、クラスタ分析によって購買パターンや嗜好性を分析します。その分析によって、顧客がリピートしなくなるタイミングや、顧客のランクダウン、離反しそうなタイミングを見える化します。そして育成可能な顧客を特定。売上目標に対し、いつまでに何人の顧客を獲得する必要があるのかを把握することができます。またR∞は、データ視覚化ツール「Tableau」と連携。さまざまな軸で、データの見える化ができるように工夫を凝らしています。
見える化の後は、具体的な手を打っていきます。重要度や嗜好性、購買回数や最終購買日、住んでいる場所や年齢などのさまざまな条件で対象者を抽出。抽出した条件にマッチするキャンペーンを設計し、実際の購買へと結びつけていきます。ちなみにR∞には、これまでのコンサルティング実績をパターン化させて作った"鉄板シナリオ"があり、クリックするだけで実行することができます。そして効果検証、売上進捗管理までを行います」
R∞の大きな強みの一つが、月額2万9800円~という低価格だ。
「ほしいデータやセグメントの軸などを絞り込むことでサーバの容量を抑え、最適なシステム設計でシンプルに構築したことがポイントになっています。とはいえ、もちろんクライアントさんごとの個別ニーズはあるので、そこに対応できるよう、カスタマイズは行っていきます」
また、優れたUIも大きな魅力である。
「"使いやすい"とは、"考えさせない"ことです。では、どうすれば考えずに操作してもらえるのかというと『見たいものがそこにある』状態を作ること。そのためには必要なものをしっかり想定し、あらかじめそれを仕込んでおくことが大事だと考えています。
また海外のMAツールと比べると、使いやすさが違います。海外のツールは管理画面が英語だったり、システムの実利用、それ自体にコンサルティングが必要だったりで、なかなかすぐに使いこなすことができません。R∞ならではのアドバンテージは、クライアント企業の担当者レイヤーの方でもすぐに運用していただけるような、やはり日本のMAツールならではの使いやすさでしょう」
ではクライアント側としては、新規にMAツールを導入し、よりよく活用していくには、社内で例えばどのような下地作りをしておくべきなのだろう。
「まず、何をしたいかをしっかり決めることです。例えば離反を防ぎたいのか、新規会員の転換率を高めたいのか、といったポイントを、明確にすることですね。そのためには自社の課題が何なのかを、しっかり分析する必要があります。
その点、私達はこれまでのコンサル経験から、クライアントのどんな所に課題が出るのかについては、おおむね把握しています。そしてR∞は、それらの課題をパターンで分け、つぶせるようにも作ってあります。ですから導入いただくだけで、比較的早いタイミングで売上は向上するはずです。そして打ち手の効果を検証し、そこからまたPDCAを回していく。その施策実行力が、デジミホの大きな強みだと考えています」
他社MAツールとR∞の差別化ポイントは(1)デジミホの長年の実績に裏打ちされたコンサルティング力(2)スピーディにPDCAを回すことのできる施策実行力(3)「見える化」を徹底した、操作しやすいUI(4)低価格(5)顧客のやりたいことに合わせて施策の幅を広げられる拡張性、などだろう。
「MAの魅力は、例えば100万人の会員がいれば、100万通りのコミュニケーションが実行できることです。
MAを使わずに手運用でメルマガを活用する場合、その多くは、同一内容をほぼ同一時間帯にユーザーに一斉に送るものです。一斉配信ということはつまり受け取った人にとってはうれしい情報かもしれないし、まったく興味がないかもしれない。そこは、わかりません。
でもMAのコミュニケーションは内容もタイミングも会員の状態・希望に合わせて自動実行できるもの。MAツールでシナリオをセットしておくだけで、One to Oneのコンテンツを届けることができるのです」
現在のクライアントのメインはEC事業者だが、他にも大手不動産ディベロッパーや人材会社、住宅メーカーや自動車会社など多岐。基本的なターゲットをEC事業に絞りつつ、クライアントごとの個別カスタマイズを加えている。
「R∞は基本的に、EC事業者向けに作ったものです。しかしEC事業者だけでなくWEBで購買が完結しない多様な業種の企業様へもOnetoOneマーケティングの効果を実感していただくために2015年9月末にR∞ベースモジュールをリリースしました。
ベースモジュールは、顧客データとログデータを活用した分析を行います。月額2万9,800円という低価格でデータの一元管理から顧客分析、施策の実行まで、タグの設定のみで利用できるツールです。顧客の購買意欲、趣向性、自社ブランドへのファンレベル、購買までのリードタイムまでスコアポイントで把握し最適な施策を実行できます。
実はEC向けの要素は、多くの場合、他業種にも転用できるのです。ネットで販売しているのか、リアルな店舗で売っているのかの違いだけなので。
例えば自動車の販売会社であれば、顧客の店舗来店時、コレまでの顧客の資料請求やサイト閲覧状況より顧客の購買欲求や興味を顧客カルテとして、アール・エイトの管理画面よりiPad上で閲覧し、購買意欲や興味車種を理解しながら接客を行うことができます。」
タワーレコードや日本生協連、さまざまなアパレルブランドを展開するストライプインターナショナル(旧クロスカンパニー)など、R∞の採用実績は多様だ。
「例えばストライプインターナショナルさんでは、初回購入促進とリピート促進を行いました。初回購入促進としては、新規会員登録クーポン未使用の方に、使用期限10日前と4日前にリマインドメールを送ったところ、3カ月で3%に当たる約6000人が購入し、アクティブ顧客化。そしてリピート促進の打ち手として、前回購入から90日間購入がない方に優待クーポンを発行。毎月約200~500件のリピート注文を創出することができました」
さらなる広がりが予想されるMAツール。加來さんは未来に向け、どのような手を打っていくのか。
第3回は、加來さんのこれまでのキャリアとR∞の開発秘話、そしてR∞のこれからについて、話を聞いていく。