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そこに「悩み」はあるか

レジェンド松下 れじぇんどまつした さん (株)コパ・コーポレーション 取締役

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テレビショッピングや店頭で、商品を実際に使いながら口上を並べる実演販売士。1日で2億円近い売上を記録したこともあり、最近はバラエティ番組にも進出しているレジェンド松下さん。彼はどのようにして、テレビ視聴者や通りがかりの人達の「買いたい気持ち」を作っているのだろう。

写真=三輪憲亮


Part.2

 

■売れるのは「マーケット規模が大きい商品」

 

 現在、松下さんが実演販売を行う場はテレビショッピングがほとんどだ。商品目当てでテレビをつけたわけではない視聴者を引きつけ、商品を購入してもらう。そのためには、何が大事なのか。

 

「商品開発に当たって、売れやすいのはマーケット規模の大きな商品です。例えばフライパンや包丁であれば、料理をする人は圧倒的に多い。つまり、絶対的な分母の大きさがあります。でも、これがマーケット規模の小さい商品になると、面白いものでも売れない時がある。奇抜な商品、ニッチな商品はそこが難しい。

 

マーケット規模の大きな商品は一見、競合が多いように思えます。でも、その方が売れるのは確かです。ある程度大きなマーケット規模の中で、違いを出す方がいい。その際のポイントは『そこに悩みがあるか』。視聴者の悩みにピンポイントで答える商品を開発し、持って来ることです。

 

 

とはいえ僕が紹介する商品でも、まったく売れないことはあります。そういうものほど、実はそこに悩みがなかったりする。そういうものは響きませんね」

 

 またテレビ番組での実演販売は、タレントやMCなど他の出演者がいて成り立っている。そのため、彼らのリアクションしやすさも常に意識する。

 

「僕が一人で出しゃばってしまうと、漫談や落語のようなエンタメになってしまう。それではダメなんですね。番組はそもそも、僕じゃなくてタレントさんやMCのもの。彼らが驚き、盛り上がらなくてはいけない。視聴者は決して、僕を見たいわけではありませんから、他の出演者の皆さん中心の盛り上げ方を考える。彼らにどうリアクションしてもらうか。その振りのタイミングはすごく意識します。

 

また、しゃべる内容のチェックのためにやっているのが、社内でその辺にいる人間を捕まえて、実演の口上を聞いてもらうこと。何も言わずに聞き、素でリアクションしてもらい、彼らの表情を見て、響いているかをチェックします。実際に売れる商品は、たいてい『おっすごい!』となりますし、逆に『うーん…』という微妙な反応であれば、考え直します。

 

 

そしてフィードバックをもらうわけですが、細かいポイントを指摘してもらうよりも、聞きやすかったかどうかを、実際に実演を聞いてるお客さんの立場になって意見してもらいます。そして修正を加え、今度は別の人間に同じことをやってみる。その繰り返しでブラッシュアップしていくのです」

 

■「買う人を探す」ではなく「大きく宣伝をした」

 

 実演販売士になった最初のきっかけは、10代のころの経験にある。高校卒業後、横浜スタジアムでコーヒーの売り子のアルバイトをしていた松下さん。コーヒーは普通、1日で20~30杯売れれば御の字。そんな状況ながら、松下さんは1日200杯近くを売っていた。

 

「野球観戦といえばビール。コーヒーをわざわざ飲む人は少ないので、ちまちまと売っていても仕方ない。そこで、スタンドの高い所から大きな声で『コーヒーぜんぜん売れないんですが、買ってもらえませんか!』と、200人ぐらいに呼びかけるんです。
そして『もちろん、ただ買ってくれとは言いません。ここで待っていますから、次の回に横浜ベイスターズが点を取ったら買って下さい。応援歌の歌詞をカードに書いて来ているので、買って下さった方にはそれをプレゼントします!』とお願いする。

 

 

それで次の回、ベイスターズが実際に点を取ると『じゃあ、兄ちゃん買ってやるよ』となるんですね。そんなことをしばらくやっていると、徐々に常連客ができてきて…。向こうが呼んでくれて『1万円やるからこの辺のみんなに配れ』となったりして、あくせくしなくても売れるようになってきました。

 

この時、僕はコーヒーを買う人を探したというより、大きく宣伝をしたわけです。この経験によって『自分は販売に向いている』という自信がつきました」

 

 もともとの大学時代の夢は、マスコミ業界で働くことだった。放送作家やコピーライターを目指し、専門学校にも通っていた。

 

「結局ダメだったのですが、今につながる経験もありました。コピーライターの講座で印象的だったのが、1つのコピーを生み出すまでには、ものすごい数の候補を作った上で考え抜かねばならないこと。以前はコピーって、コピーライターが『これがハマっているからいいんじゃない?』と軽く提案して生まれるものだと思っていた。

 

 

でも、現実はそんなにカッコいいものじゃない。商品名もキャッチコピーも、考えて考えて振り絞った結果、やっと出てくるもの。商品を実際に何度も何度も使って、商品名の候補をそれこそ百近くとか、ものすごい数作る。そしてさらに何度も使って使って削ぎ落とし、絞りに絞ったものから、最終的な商品名を選ぶわけです。

 

僕の父親はデザイナーだったのですが、父の印象的な言葉が『デザイナーとは絶望だ。絶望を繰り返して、何も上手くいかない先に希望がある』というものでした。そこは、今の仕事もまったく同じですね」

 

 Part.3では実際の商品開発のプロセスと、これまでのヒット商品の具体的事例を見ていく。

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プロフィール
レジェンド松下

レジェンド松下 れじぇんどまつした

(株)コパ・コーポレーション 取締役

1979年神奈川県出身。法政大学経済学部経済学科卒業後、販売のプロを志して実演販売士・和田守弘さんに弟子入りして基礎を学ぶ。現在は株式会社コパ・コーポレーション取締役として商品開発や仕入れを担当しながら、実演販売士としてもバラエティ番組などで活躍中。

※ 会社、役職、年齢など、記事内容は全て取材時のものです

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