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携わる人達を横串でまとめ、ボトムアップをサポート

西井 敏恭 にしい としやす さん (株)warmth / オイシックス(株) 代表取締役 / CMO


特にこの数年、注目されつつあるCMO(Chief Marketing Officer=最高マーケティング責任者)というポジション。企業がマーケティング機能と組織を見直す動きを活発化させる中、日本においてまだなじみの薄いこの役職は、どうあるべきなのか。そしてますます活発化するEコマース・ウェブマーケティングに対し、どのようなスタンスで臨むべきなのか。今回は、世界1周の旅を経て昨年、食材宅配ネットスーパー、オイシックスのCMOに就任するとともに、Eコマース導入企業を中心にCMOサービスを手がける自らの会社、warmthを立ち上げた西井敏恭さんのお話をうかがっていく。

文=前田成彦(Office221) 写真=三輪憲亮


Part.1

 

■Eコマースでは、すべてをデータとして把握し、商品開発に結びつけることができる。

 

 CMOは特に欧米企業では、CEO(最高経営責任者)やCOO(最高執行責任者)と並ぶ権限を持つ、マーケティングの最高責任者。その役割は、部署ごとに存在するさまざまなマーケティング要素を横断的に統括し、企業のブランド向上を目指してドライブさせていくことだ。しかし日本においては、まだまだなじみの薄いポジション。導入については企業ごとに温度差があり、役割が不明確なケースも多い。そんな状況の中、まずは西井さんに、現在多くの企業が抱えるウェブマーケティング上の問題点についてうかがった。

 

「今、誰もがインターネットの大切さは理解しています。みんなTwitterやfacebookのアカウントを持っている時代で、ウェブとの接点は例えば10年前と比べたら、格段に増えている。そのため、デジタルを活用すべきだとはもちろん気づいている。でも、それが実際のウェブマーケティングとなると、どこか難しそうに感じられて二の足を踏んでしまう。そんなケースがまだまだ多いのが現状です。

例えば自社のウェブサイトは、接点でいうなら一つの軸。例えば紙の社内報を読むことでも、社内の意識を高めたり、社内でどんな人が何をしていて商品をどう売ろうとしているか、などがわかる。でも自社のウェブサイトは、それ以上にみんなが見ているもの。自分の会社のサイトを見ていない人はいないし、もっと上手く使いこなしたいと思っている。そして『うちのサイトはこうだったらいいのに』『こういう機能があれば、もっと効果的なのに』といった何かしらの意見も持っているものです。

それに対してよくある悪い例が、ウェブを扱う部署が特異なセクションになってしまっているケース。ウェブを扱う部署の人達が何をしているのかみんなよくわからず、その人達も浮いた存在になっている。そして彼らに何かしらの調査を依頼しても、社内の手続きが煩雑で時間がかかり、結果『あの部署に頼んでも、やってくれないし…』と嫌になってしまう、なんてことはよくありますよね」

 

例えば商品開発の担当者であれば、お客さんの声やニーズがどうなっているか、自分が作ったものが実際どのように売れているか、といったことを正しく把握する必要がある。

 

「メーカーの場合、店舗への卸であれば納品したら売り上げが上がりますので、商品がその先でどう売れているかは、なかなか把握できない。でもEコマースであれば、どんな人がどんなものを購入したのかを、データとしてすべて把握できる。そして、そこからどういう風に商品開発を行っていくかを考えることができる。でも、その時にウェブを扱う部署が特別な存在だと、難しいことになる。CMOはそんな縦割りの状況に対して、横串として存在するのがベストだと思っています

 

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■多くの人を動かす目安とするためにも、データ解析能力は欠かせない。

 

 今、企業がマーケティング機能と組織を見直す動きは活発化している。ソーシャルメディアの影響力拡大、ウェブやスマホアプリなどによる企業と顧客の関係構築の変化といった時代の流れに応じ、企業戦略は確実に変化しつつある。そんな中で、ウェブマーケティングに関する広範な知識を持ち、そこから得られたデータの解析能力を高めることは必須といえる。

 

「ウェブに抵抗を感じ、まったくわからない状態のままだと、ウェブを扱う部署にタスクを依頼するだけになってしまいます。だから、特別視してはダメです。そして、データについてもそう。データの塊にアレルギーがある人は、今も非常に多い。でもデータを見れるようになるには、本当に慣れだけ。そこは訓練なので、意識してできるようになるしかありません。

今は多くの人がSNSアカウントを持っている。そして、ウェブサイトのすべてを構築できなくてはいけない時代は、もう終わったと思います。今は誰でも自分のfacebookページを更新することも、ブログを作ることもできる。そこから考えると、ウェブマーケティングの知識をつけることの難易度は、少し前と比べても格段に下がっている。

現在のマーケティングはすでにデジタルが中心。顧客のさまざまなデータを取ることができ、それをきちんと解析し、置かれている状況を判断して戦略を練っていく必要があります。そして、マーケティングに携わる部署は実に多様。商品開発、広告、宣伝そしてオイシックスでいえば配送なども、マーケティングの一部分だと僕は思っています。上から下まで見ていく中で、マーケターには幅広い知識が必要だし、携わる多くの人達を動かしていく目安とするためにも、データをしっかりと解析できる能力は欠かせないのです

 

そんな西井さんは昨年、自らの会社を立ち上げるとともにオイシックスのCMOに就任。実際にさまざまなプロジェクトを進めていくと、新たな発見があった。

 

僕が考えるCMOの理想は、トップダウン型で僕自身がさまざまなジャッジをして引っ張るよりも、"現場から相談されやすい人"というポジションでいることだとわかりました。

 

 「僕が考えるCMOの理想は、“現場から相談されやすい人“というポジションでいること…」
「僕が考えるCMOの理想は、“現場から相談されやすい人“というポジションでいること…」

 

 

なぜなら、トップダウンで『戦術はこうだから、これをやって、これもやれ!』と言うのは、CEOでも普通にできることだからです。それならばCMOの役割は、先ほど申し上げたような横串となりつつ、より顧客との接点の多い部署からのさまざま意見を吸い上げ、スムーズなボトムアップができる組織作りをサポートすることだと思うんです」

 

次回は西井さんが考えるCMO像、そして今、オイシックス、warmthで目指していることについて、さらに深く話を聞いていく。


プロフィール
西井 敏恭

西井 敏恭 にしい としやす

(株)warmth / オイシックス(株) 代表取締役 / CMO

1975年生まれ。福井県出身。
金沢大大学院を卒業後バックパッカーとなり、2年半をかけて世界を1周。自らのウェブサイトにてアジア、南米、アフリカ各地で旅行記を更新。それが口コミで広がり話題となる。
帰国後は2003年にEコマース企業に入社してウェブマーケティングに取り組み、モバイルコンテンツ会社を経て’07年にドクターシーラボ入社。Eコマースグループグループ長などを務め、’13年末に退職。
再び世界1周の旅を経て昨年春、自ら株式会社warmthを立ち上げるとともに、オイシックス株式会社のCMOに就任した。

※ 会社、役職、年齢など、記事内容は全て取材時のものです

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