Vol.7
「オンガクの明るい未来;マーケティングは音楽を救う?」
早くも10月半ば、今年も第4四半期突入です。今年の音楽シーンはやはり夏のサザン復活、そしてあまちゃん関連楽曲、AKBの連続ミリオンなどが直近のエポックでしょう。これらに共通するのは人を元気づける(Empowering)という世代を超えたブランディングと言えます。確かにこれまでに述べて来たように、あまちゃん関連楽曲は街中でもスーパーでも到るところで耳にしました。朝の連続ドラマサウンドトラック5万枚セールスというのは、TVでも街でも耳にする音楽を家族で共有して聞いているという国民的ヒットの典型といえます。
さて7回目に突入したこのコラムもいよいよ最終章です。前回は東京オリンピックに向けてと締めくくりましたが、4年に1回のオリンピックの開会式はまさに音楽の祭典でもあります。7年後の音楽シーンがどう変わっているのか?あるいは変わっていないのか?これまでの内容をもとに整理してみましょう。
変わらないもの;
TVとアイドル:あまちゃんはAKBをカリカチュアライズしたガールポップアイドルを物語の要素として取り上げました。
これはまさしくおニャン子クラブから続く、隣の可愛い女の子がミニスカートをはいて普通の歌唱力で目の前で歌ってくれる、そうしたTVの中に入る友達アイドルです。
1985年フジTVではじまった夕やけニャンニャンとそこから派生したおニャン子クラブ。このTV 連動アイドルというスタイルは2013年現在まで手を変え品を変え4半世紀に渡って続いています。7年後、今このジャンルを支えているファンのコアは40代を超えていますが、ももクロのファン層にこの層が多いのはアイドルの普遍性を証明しています。日本ではますますの晩婚化に伴い、可処分所得の多いこの層はマーケットに強い影響を持ち続けると思います。
進化するもの;
進化系ガールポップ:東京オリンピック開会式ではガールポップ、きゃりーぱみゅぱみゅやパフュームなどのテクノガールポップ系を進化させ、初音ミクなどのバーチャルアイドルと融合したパフォーマンスが期待できます。今アミューズメントパークでも導入されているプロジェクションマッピング、仮想現実をリアル映像と組み合わせたAR、ウェラブルデバイスのデモンストレーションを組み合わせた演出は誰もが考えるところですが、7年後、今のスマホ・タブレットを席捲するアップル、サムソンなどがそのまま市場を牽引しているかどうかは分かりません。
アベノミクスが東京オリンピックまでに日本のデジタルITビジネスのリーダーシップを回復させることが出来て、東京オリンピックでは国内デジタルIT企業がオフィシャルスポンサーとしてこうした進化系ポップスの後ろ盾になってくれれば日本復活もホンモノでしょう。
新しい流れ;
北欧発信のスポティファイが新しい音楽プラットフォームをグローバルに確立したように、7年後にはアジア、アフリカ発の新たなグローバルプラットフォームが出現します。現時点でもインド音楽の音楽ストリーミングDhingana( http://www.dhingana.com/)は、月額1.99ドルという破格でボリウッド音楽を世界へ発信しています。
オリンピックがスポーツの世界の祭典であればこの時代迄にはソーシャルネットが20億人につながり、音楽サービスもほぼ世界へつながるはずです。今はワールドミュージックと呼ばれている中東、アジア、アフリカなどの伝統音楽が欧米ポップと融合して進化しているように、JPOPとの融合で新たなジャンルが生まれオリンピックという場所で新しいフュージョンが沢山発表されると思います。
7年後市場予測とマーケティング
資本主義における株主利益は最短で最大利益を得ること、そこの飽和点がリーマンショックであったわけですが、実は実体経済の6倍以上のバーチャルマネーは世界中の実体経済に依然として強い影響を及ぼしています。音楽もその例外ではなく市場原理の中で現時点でグローバルメジャーは3社に統合されています。7年後に2社まで統合される可能性はありますが、それよりも新たなモデルのエンタテインメント企業が登場する可能性が高いでしょう。
例えば米国でメジャーレーベル共同出資による音楽ビデオを使った広告モデル会社VEVO、ハリウッドスタジオ、
メジャーTV局出資のhuluなどデジタル流通においてはメジャーコンテンツを一堂に会し、消費者に訴求した方が効率が良いからです。
国内ではグローバルメジャーとは別に30数社のメジャー音楽レーベルが現在存在していますが、こちらは7年後に5社くらいに統合されることは考えにくいでしょう。国内は著作権の他に著作隣接権が個別に管理されていて、しかも国内でメジャーなコンテンツライセンスは権利者によって厳格に管理されています。欧米のようにデジタルメディアにおいてフラットなプラットフォームが消費者に提供されるためには、まずその背景にある制度、慣習、法律が変わる必要がありますが、現時点でここに手をつけられる状況ではありません。
しかしながら7年後にはあらゆる市場でオープングローバル化が促進され、それはコンテンツも例外ではありません。少子高齢化で国内での消費が頭打ちの中、日本のコンテンツのアジアや欧米への輸出は必須であり、日本発のグローバルアーティストが世界の中で大きな位置を占める可能性は大いにあります。韓国アーティストに取って日本は大きな市場ですが東南アジアにおいてもアニメやマンガ、アイドルは日本で報じられる以上に大きな人気を博しています。
7年後は恐らく新しいミュージシャン、パフォーマンスアーティストが日本に拘らずグローバルマーケットで活躍すると思われます。現在でも活躍の場を日本に限定しないアーティスト活動は時折メディアでも取り上げられます。
こうしたグローバルアーティストを支援する国内企業、メディアが海外に比べて非常に少ないのがネックですが、今後アジアやアフリカに市場を求める企業は当然こうしたコンテンツブランディングを活用しなくてはならないでしょう。
(続く)