王者「午後の紅茶」vs新参「クラフトボス TEA」一騎打ち!? 2019年の注目は“紅茶戦線”

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ペットボトル紅茶の大手2社の「紅茶市場獲得合戦」に注目が集まっている。
その2社とは、紅茶の王者キリン「午後の紅茶」と、サントリー「クラフトボスTEA」。

 

そして両者の今季のマーケティングターゲットが絶妙にかぶっているところに、マーケターとしてはにんまりせずにいられない。

 

いわば同じ、紅茶市場の「ブルーオーシャン」を、「そういえばその敵、忘れてた!」な好敵手を刺すことで明確に獲りにきているのだが、さすが一流のマーケティング部隊を備えるビッグブランド、“それが正解に違いない…”と納得させられる。

 

明確に“コーヒー派”を“紅茶派”にしに来ている

 

紅茶のブルーオーシャンとは、従来コーヒーの独壇場であった「働く人が仕事場で飲む」需要。

 

そう、紅茶の好敵手とは、「(なんとなく仕事中といえばコーヒーだから、と)仕事中に飲むコーヒー」だ。お菓子を添えたティータイム需要、若者向け放課後飲料の需要にとどまらず、今年、紅茶市場は “オフィス”を席捲することが予想される。

 

王者による王者らしい、“大人を紅茶派に”宣言。

 

ペットボトル紅茶の絶対王者、キリン「午後の紅茶」は、ブランド創設33年目にして紅茶市場の中でもトップを独走。2018年度は3年連続で5000万ケースを突破したという。他のすべての飲料カテゴリー(清涼飲料全般)のブランドを合わせてもナンバー3のブランド想起率をマーク。同ブランドがターゲットとして見据えている女性層のうち、60代を除くすべての年代においてブランド想起率ナンバーワン(※1)を誇るという、まさにペットボトル紅茶の代名詞と呼ぶにふさわしい「キング・オブ・紅茶」なのである。

 

今季「午後の紅茶」のCMには、男女問わずにみんな大好き“フカキョン”こと深田恭子さん、OL人気もめっぽう高いリリー・フランキーさん、若手OLから近年人気急上昇中の女優の新木優子さんを起用。

 

スウィートな印象のある深田恭子さんが大人の女性に成長した姿になぞらえて「甘くない」微糖ミルクティー、「ザ・マイスターズ ミルクティー」の新商品をアピール。カレーにも“意外と”合うと感動する、おそらくかつては“コーヒー派”だったと推察される男性役でリリーさん。「自分らしく」たおやかに生きる近年の若者のキブンを表現した若手OL風の新木優子さん。3人3様に「紅茶派」を宣言するCMでは、無糖、及び微糖紅茶を好むそれぞれのターゲット層の人気者をキャスティング。とってもマスに、しかし明確に“オトナ”を刺しにきていることが見て取れる。

 

キリン「午後の紅茶」公式サイト
https://www.kirin.co.jp/products/softdrink/gogo/

 

また、発表会同日にあわせて発表された三菱地所との取り組みも、“オフィス席捲”がもはや約束されたかのような衝撃。

 

仮眠ルームの設置や試験的に生産性向上の仕組みが多数取り入れられた新装オフィスなど、「働き方改革」の第一人者として話題の絶えない三菱地所の「オフィス飲料見直し」施策の一環で行われる、紅茶を飲ませることによる社員の生産性への影響の検証試験や紅茶無料配布に協力するということ。

 

三菱地所株式会社での「オフィス飲料としての紅茶」のメリットに関する検証に「午後の紅茶 おいしい無糖」提供

 

三菱地所では執務スペース中央の共有ペースにキリン「午後の紅茶 おいしい無糖」の無料配布と併せて、指先で心拍数を測定することで自律神経の状態を確認できる測定器も設置。社員がオフィス常飲飲料として紅茶を飲むことによりどのような実感が得られるかの検証を行っている。

 

ウェルビーイングな働き方文脈から、三菱地所が“食事”や“睡眠”などに関する検証を実施しているのはご存知の方も多いと思うが、確かに、コーヒーやエナジードリンク、緑茶、紅茶などは、カフェインも含む、少なからず覚醒効果、リラックス効果など、生産性になんらかの影響を及ぼすことが容易に想像できる。

 

つい最近発表された日本ブレインヘルス協会の古賀良彦教授による研究結果(※2)でも「紅茶が脳血流量を上げ、オフィス飲料として生産性に寄与する」と示唆されている。なんというか、さすが三菱地所、目の付け所が常に先を行っている感がある。

 

大人気シリーズの“働き方改革”の世界観に、
“敢えて”短絡的に「紅茶といえばイギリス」を載っけて。

 

対し、サントリー クラフトボスCMキャスティングは、若者向けドラマのヒロインとしてもその人気を不動にしている女優の杉咲花さん、ボスのCMの顔でもあるトミー・リー・ジョーンズ氏、さらに、大物女優 松たか子さんという、こちらも豪華布陣。

 

ロンドンを舞台に、迷えるOL杉咲さんの元に、颯爽と空から舞い降りるメリー・ポピンズの松さんが「多様性の時代とかいうのに乗っかって、好きなようにやっちゃえば」と言い放ち、「紅茶といえばロンドンというこの惑星の発想はベタである」という、いつもながらのトミー氏扮する宇宙人の半ば自虐的ともとれる締め台詞で終わる。

 

安定のチャーミング・シニカルな仕上がり。CM中で流れる椎名林檎さんの『人生は夢だらけ』もニュアンスぴったりだ。コーヒーが紅茶に代わっても、依然、「働き方改革」文脈になぞらえているところもボスシリーズ感を踏襲。

 

そしてもう1つ見逃せない瞬間が。杉咲さんと松さんが並んで歩くシーンで杉咲さんが手の持つ「クラフトボス コーヒー」に松さんが手をかざすと「クラフトボス TEA」に早変わり。そのときの松さんのセリフは「決めつけなくていいのよ、仕事も、飲み物も」。

 

そう、「仕事といえばコーヒー、じゃないでしょ、紅茶もありでしょ」と同義なのだ。明確にコーヒーのポジションを取りに来ている。

 

<クラフトボスCM>

 

そしてまた、“オフィス席捲”感が明らかなのが、「クラフトボス TEA」にちなんで、ユニクロとコラボし、「クラフトボス」限定カラーTシャツが1万人に当たるプレゼントキャンペーンも実施。

 

この「Tシャツのようなラフなスタイルで、むしろ生産性を上げる」ことを「T-WORK STYLE」と称し、サントリーでも毎週金曜日にTシャツ出勤を推進。ラフなスタイルは、勤務中も肩肘張らずに仕事に邁進でき、近年ムーブメントが来ている業務中の軽い運動などもしやすいといったメリットがあるという。

 

サントリークラフトボス ユニクロ限定色Tシャツプレゼント
https://www.suntory.co.jp/softdrink/boss/campaign/20190318/

 

また、春の紅茶新商品でもう1つ、炭酸飲料ブランド ウィルキンソン(アサヒ飲料)が、「ウィルキンソン タンサンティー」という、炭酸で、透明で、でも紅茶味という変わり種を4月に投入予定だという。

 

 

ティーソーダといえば、キリン「午後の紅茶」の代官山にある期間限定カフェ「Milk Black Lemon by GOGO NO KOCHA」でもインスタ映えするティーソーダが女性に人気というから、フレーバーティーの次のムーブメントでもある紅茶×炭酸の進化も気になるところ…。

 

Milk Black Lemon by GOGO NO KOCHA
https://www.kirin.co.jp/products/softdrink/gogo/mblshop/

 

紅茶の代名詞である王者と、ゆるっと舞い降りた新参。
「ウィスキーは、お好きでしょ」、ならぬ「コーヒーは、ニガテでしょ」なブルーオーシャン決戦の行方に、2019年はぜひ注目したい。

 

 

(※1)出典:キリンビバレッジ「午後の紅茶」発表会資料「ブランド戦略と市場拡大への挑戦」
(※2)出典:精神科医 古賀良彦教授による研究
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000042768.html

 

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