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いい商品を作るのは当たり前。大事なのはいかに売るか

長山 衛 ながやま まもる さん オリンポス16闘神 リーダー

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元ヤンインターン募集、チョウザメ養殖、メタル社歌、メタル小松菜…ユニークな取り組みで注目を集めるベジフルファーム。ここのCMOを務めるのが、ヘビーメタルバンド「オリンポス16闘神」のリーダーでギタリストの長山衛さんだ。もともとEコマースのスペシャリストでもあった長山さんが現在手がけている、さまざまな取り組みについて紹介していく。

写真=三輪憲亮


Part.3

 

■"小松菜業界"では異例の大ヒット

 

顧客の反応をダイレクトに知ることで、活気づいていったベジフルファーム。元ヤン採用が話題になったことで、メンバーのモチベーションが上がっていった。そして生まれたのが、同社の"歌えないラウドミクスチャー社歌"『小松菜伐採』だった。

 

「もともと『ウチの会社に社歌がないから、朝礼で歌うために作ってもいいんじゃない?』みたいなノリで始めたプロジェクトでした。そもそも農業法人に、社歌なんていらないわけです(笑)。っていうか、ウェブサイトすら必要ないかもしれない。でもその前から、わざわざこういうバカなことをした時のマーケットの反応がやたらと面白くて、社内もすごく盛り上がった。だから、今回もやってみようということで。

 

 

ただし僕が作る曲ですから、当然ヘビーメタルです。ギャーギャーと叫ぶわけで、実際に作ってみたら『社員が歌えないじゃん』という結果に当然ですよね(笑)。じゃあこの曲どうしよう。『歌えない社歌』もそれはそれで面白いけれど、もったいない。そんな時にテレビを見ていて、味噌や日本酒を作る時にクラシックを聞かせるとおいしくなる、という内容が放送されていたんです。それを見て『あれ、やろうぜ』と。どうせ歌えないし、味噌や日本酒じゃなく小松菜に浴びせてみようと(笑)

 

 

 小松菜を栽培するビニールハウスに巨大なスピーカーをドンと置き、ヘビーメタルを爆音で聞かせてみた。「小松菜は鉄分が多いので、メタルを浴びせたら鉄分が増えるかも」。そんな希望的観測がベースで、もちろん科学的根拠は一切なし。

 

 

「やってみて食べてみたら味は何一つ変わっておらず、特に鉄分も増えていない(笑)。それでも『メタルを浴びせまくりましたが、味は特に変わりません』とただし書きをして『メタル小松菜』として売っちゃおう、と。そうしたら、Eコマースで大変好評で…"小松菜業界"ではたぶん異例の大ヒット商品です。

 

 

何事もやってみるものですね。商品価格は1パック200円程度。でも送料が600円ぐらいかかります(笑)。それなのに、多くの方に買っていただきました。㎏単位で購入して下さる方もたくさんいらっしゃって、ありがたかったです。顧客目線なんて何も考えず、完全にプロダクトアウトの発想で作ったものなのに(笑)

 

■ブランディングの一環として、社歌やテーマソングを見直す

 

 ほぼ"ノリ"だけで作ったメタル小松菜だったが、パッケージだけはしっかりとデザインした、と長山さんは語る。

 

「小松菜はいわゆる日用野菜。何も珍しい商品じゃない。でもスーパーで皆さんが見る小松菜って、ほとんどが細長いパッケージに『小松菜』と書いてあるだけだと思います。どこの農家も右へならえで、そうしています。でも本来売りたい商品だったら、パッケージにもっと気を配ってもいいはずですよね。

 

例えばチョコレートだったら、箱にただ『チョコレート』と書いてあるだけ、というのはあり得ない。農家ってやっぱり価格決定権を持っていない分、そういう面の感度が低いんです。もっといろいろな販売やアプローチの方法があっていいと思いますし、農家はお菓子メーカーが当たり前にやっていることを行っていなかった、ということ。そこに大きな伸び代を感じます。

 

 

ましてや今後、TPPによって海外から安い野菜がどんどん入ってくるわけです。だから今、本当に志として持たなくてはいけないのは『いい商品を作るのは当たり前。それを適切な形で売るところまで、しっかりと取り組む。それが農家の仕事なんだ』という気持ちだと思います。そう考えると『海外から入ってくる野菜とどう戦うか』を考えることより『自分達が作った野菜を、世界に出していくんだ』という意気込みが大事だと思います」

 

 『メタル小松菜』が話題になり、ソーシャルメディアそしてマスメディアでも取り上げられたことで、長山さんの元に多くの楽曲のオファーが入り始めた。もちろん、曲調はすべてヘビーメタル。現在まで、すでに10社ほどの社歌を作っている。

 

 

「ちゃんとしたアーティストって、楽曲ジャンルの引き出しが多いはず。でも僕らオリンポス16闘神には、メタルしかありません。それでもよければ、という体でお話をうかがうのですが、これも完全にプロダクトアウトですね。そしてそれを良しとして皆さんOKを出して下さります(笑)。

 

有名なところでは『さくら水産』のテーマソング『マグロのアラ煮は80円』ですね。これはもともとは僕らが勝手に作ったものなんですが、さくら水産の会長さんの耳に届いて公認いただきました。あとは人材派遣会社の社歌や、市議会議員の方のテーマソング、あと昨年の夏には、セクシー女優・佐倉絆さんのデビュー4周年応援ソング『強欲girl』も作りました。

 

 

中にはひどい歌詞の曲もあったりするのですが、評判は悪くないようです。そもそも僕らのバンドはちょっと変わっていて、法螺貝や和太鼓がいるんです。法螺貝なんてそもそも楽器じゃありませんからね(笑)。でもその分、歌のインパクトはあると思います。

 

皆さんブランディングの一環として、社歌やテーマソングを見直した、という感じでしょうね(笑)。なかなか差別化しにくい。そこでエッジを効かせるというのは一つの手ですし、そういう活用もありかなと

 

 最終回となるPart.4では、ベジフルファームの海外展開と農業振興への取り組みについて、話を掘り下げていく。

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プロフィール
長山 衛

長山 衛 ながやま まもる

オリンポス16闘神 リーダー

1975年1月生まれ、茨城県出身。ヘビーメタルバンド「オリンポス16闘神」のリーダー兼ギタリスト。
食品小売会社のEコマース担当を経て2008年、Eコマースのコンサルティングを手がける「ネットショップ総研」を創業(現在は顧問)。黎明期からEコマースに携わり、デザイナーとして楽天市場などで数多くの優秀賞を受賞。
2012年、株式会社ベジフルファームに参画。取締役CMOとして同社のプロモーション全般、マーケティング、ブランディング、WEB制作、チョウザメ養殖などを広範囲に担当。他にもIT企業や企画会社、運送会社など、さまざまな企業に取締役として参画中。『食品ネットショップ「10倍」売るための教科書』『マネして完成! 事業計画書』など著書多数。

※ 会社、役職、年齢など、記事内容は全て取材時のものです

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