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会社のユニークさを、いかにして世に伝えるか

長山 衛 ながやま まもる さん オリンポス16闘神 リーダー

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元ヤンインターン募集、チョウザメ養殖、メタル社歌、メタル小松菜…ユニークな取り組みで注目を集めるベジフルファーム。ここのCMOを務めるのが、ヘビーメタルバンド「オリンポス16闘神」のリーダーでギタリストの長山衛さんだ。もともとEコマースのスペシャリストでもあった長山さんが現在手がけている、さまざまな取り組みについて紹介していく。

写真=三輪憲亮


Part.2

 

■ヘビーメタルの曲作りは、プログラミングに似ている

 

ヘビーメタルバンド「オリンポス16闘神」のリーダーである長山さんは、食品小売会社のEコマース担当からキャリアをスタート。2008年に独立し、Eコマースのコンサルティングを手がける「ネットショップ総研」を起業した。

 

「会社員時代はEコマースの黎明期でしたが、食品のネット販売は温度管理や賞味期限などがあり、配送区分も複雑。あらゆる商品の中でも、難易度はかなり高い方だった。そのため『食品ができれば、他は何でもイケるんじゃないか』という憶測のもとでネットショップ総研を立ち上げ、10年ほどやっていました。

 

技術革新の早い分野ですから、Eコマースの売り方・買い方の飛躍的な多様化が生まれました。そもそも会社設立当時は、スマートフォンが普及していませんでしたからね。今はどのEコマースの店舗もそうですが、パソコンとスマホの購入比率を比べるとスマートフォンが上回る状況になった。そして決済の利便性も高まった。例えばAmazonペイメントですね」

 

 

 Amazonペイメントとは、Amazon.co.jpのアカウントに登録されている住所情報とクレジットカード情報を使用し、Amazon.co.jp以外でも支払いができるようにするペイメントサービス。ユーザーはECサイトにおいて、個人情報を追加入力せずに商品を購入できる。

 

「ユーザーの個人情報の入力という面倒な作業を割愛できたことで、Eコマースの利用が大きく広がったのは間違いありません。そして今も、Eコマースはどんどん進化している。いずれはウェアラブルデバイスで買い物をする。そんな時代もそう遠くないでしょう。今やEコマースは、世の中で天才と言われる人達が集う分野の一つ。彼らの活躍で、これからもっともっと進化していくはずです」

 

 長山さんはネットショップ総研の自社ブランディング施策に、バンド運営で得た情報発信のノウハウを巧みに応用していった。

 

「株式会社の活動の基本は営利追求。当然のことです。でも僕は、何もかもをそれ一辺倒にしたくはなかった。ただ利益を求めるのではなく『世間にもっと認知してもらいたい』という1点に特化したトライアルを、いろいろやってみた。その一つが『メタルインターン』です。

 

株式会社ネットショップ総研「メタルインターン募集」

 

根本的な要因はプログラマーの人材不足でした。Eコマースもまた他の業界と一緒で、人が足りません。人気職種ではあるのですが、優秀な人は大手に持っていかれてしまい、中小企業は採用に苦戦している。そこで、やみくもに即戦力を求めるのではなく、教育することを前提に素質ある人を鍛えていく方針に変えました。結局、その方が早いと思ったからです。

 

じゃあEコマースでは、どういう属性の人を鍛えればいいのか。それを考えた時に浮かんだのが、メタル好きな人達でした。彼らはきっと、プログラマーにハマる。メタルとプログラミングは意外と似ていると仮説を立てたからです。メタルサウンドというものは『一小節に音符をどれだけたくさん詰め込むか』という作業とも言えます。音符をギッチギチに、かつ正確に詰め込む。その作業がプログラミングと親和性が高いことに気づいた。そこでトライしてみたのが『メタルインターン』でした」

 

 

 Eコマースの仕事経験をいっさい問わず、ヘビーメタルのリスナーとプレーヤーからインターンを募集した。すると…。

 

「いわゆる"メタラー"と呼ばれる人たちが300人ぐらい来まして…。ほとんどの人の髪型が、スキンヘッドがロン毛やモヒカン。ビジュアル的にはヤバい人達でした(笑)。

 

でも商売はEコマースですから、見た目はいっさい関係ありません。しかもああいう方達って、見た目の割に根がいい人が多い。そこも含めて、彼らはたぶん適性があるだろう、と思いました。無茶な読みでしたが、それでも10人ぐらい採用したのかな。この試みが、後に続くさまざまなトライアルへの大きなヒントになりました

 

■最終消費者との接点が、建設的な発想を生む

 

 

 長山さんがベジフルファームに参画したのは2012年のこと。元暴走族だった同社代表・田中健二さんとは、10年来の仲だったという。

 

 

「お互いサラリーマン時代に、取引先関係でした。彼とは農業の抱える課題や社会問題について、よく話していました。僕がやってきたEコマースはWebマーケティングと重なる部分も多いですし、もしかすると知見を生かせるのではないか。そう考えて、ネットショップ総研の経営の傍ら、取締役としてジョインしました。

 

当時から、ベジフルファームも他の多くの農家や農業法人と同じく、人手不足という問題を抱えていました。そこで、以前にネットショップ総研で手がけたアプローチを応用してみようと。今回はメタルではなく、ヤンキーです(笑)。これは、代表の田中がもともと暴走族の総長で、一緒に酒を飲みながら『農業はヤンキーが合うんじゃないか』という話になったから。完全に酔っ払いの与太話なのですが(笑)、ダメもとでやってみようと

 

株式会社ベジフルファーム「元ヤンキーインターン募集」

 

 すると、またしても多くのエントリーがあった。

 

「前科がある華々しい経歴の方が来ることもありました(笑)。あとは『元ヤンキー』なのに、明らかに現役の人が来ちゃったり…そうじゃないだろ! と(笑)。

 

とはいえ話題になったことで、ヤンキー以外の人もたくさん来てくれたんです。東大卒の方とか大手企業出身の方とか、まったく元ヤンキーではない人が、ベジフルファームを面白そうな会社かもと感じてくれたのでしょう。
もしくは、農業の課題解決に貢献したいという、僕の考えに共鳴してくれたのかもしれません。この募集も、ベジフルファームのユニークさを世に伝えるいいマーケティング施策であり、有効なブランディング手法になったと思います。結果的に、狙い通りだったかなと(笑)」

 

 

 また、元ヤン採用をやってみたことで、ベジフルファーム社内にも思いもよらぬ変化が生まれた。

 

「先ほど(Part.1で)も言いましたが、農家は市場流通を経て生産品を消費者に届けます。つまり、お客さんの生の声を聞く機会はほとんどなかったわけです。それが、ユニークなアイデアをメディアに取り上げていただき、名前が全国的に広まったことで、ソーシャルメディアなどを通じて最終消費者と少しずつ接点が生まれていったのです。

 

お客さんの反応を直接知るのは、農家にとって非常に大きなモチベーションになります。その結果、社員の中に『自分達は見られている』という意識や『自分達は生産から販売までの全プロセスを担っている』という自負が生まれた。ベジフルファームの農業関係者からの見られ方も大きく変わりましたし、何より『じゃあ、次はこれをやろう』と、くだらないけれど建設的な発想がたくさん出るようになってきました」

 

 その発想の一つが、同社の"歌えないラウドミクスチャー社歌"『小松菜伐採』だった。次回Part.3では社歌の誕生経緯と、メタル社歌を聞かせて育てた「メタル小松菜」のヒットについて、話を聞いていく。

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プロフィール
長山 衛

長山 衛 ながやま まもる

オリンポス16闘神 リーダー

1975年1月生まれ、茨城県出身。ヘビーメタルバンド「オリンポス16闘神」のリーダー兼ギタリスト。
食品小売会社のEコマース担当を経て2008年、Eコマースのコンサルティングを手がける「ネットショップ総研」を創業(現在は顧問)。黎明期からEコマースに携わり、デザイナーとして楽天市場などで数多くの優秀賞を受賞。
2012年、株式会社ベジフルファームに参画。取締役CMOとして同社のプロモーション全般、マーケティング、ブランディング、WEB制作、チョウザメ養殖などを広範囲に担当。他にもIT企業や企画会社、運送会社など、さまざまな企業に取締役として参画中。『食品ネットショップ「10倍」売るための教科書』『マネして完成! 事業計画書』など著書多数。

※ 会社、役職、年齢など、記事内容は全て取材時のものです

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