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BtoBビジネスを広げることが、BtoCビジネスに繋がる

坂口祐貴 さかぐち ゆうき さん (株)WONDERWOOD 代表取締役

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樹齢100年を軽く超える日本産の樹木から切り出した一枚板。かつて外資系企業の営業担当だった坂口祐貴さんはその素晴らしさに魅せられ、2年前にプロダクトメーカー『ワンダーウッド』を立ち上げた。木材の知識はまったくなかった「ミレニアル世代」の坂口さんの心を大きく動かした、木の魅力とはいったい何なのか。そして彼は一枚板にどんな思いを込め、何を実現しようと考えているのか。

写真=三輪憲亮


Part.3

 

■「結果的にビジネスになった」だけ

 

会社を辞め、2014年に鳥取にUターンした坂口さん。古い銘木から切り出した一枚板の圧倒的な存在感にこれまでの価値観を覆され、その扱いを仕事にしたいと考えた。

 

「バカなんですよ(笑)。一枚板の販売をビジネスにしようというより、あくまで結果的にビジネスになっただけです。でも、心の底からやりたいことが見つかったのは確か。心の底から好きで嘘なく売れるもの、本当に人の役に立つものにやっと出会った、という感覚だったので、うれしくて仕方がありませんでした。

 

 

とはいえ最初は、木に関する知識なんて何一つない。だからとにかく勉強して、さまざまな場所に自ら足を運びました。例えばいきなり『こんにちは。こういう者ですが、木のことを教えて下さい』と、東京の山奥にある製材所を訪ねたり、とか」

 

 何も知らないまま、がむしゃらに動き続けた。するとありがたいことに、自分の思いに共感してくれる存在と出会うことができた。

 

「それが今、顧問で入ってもらっている木挽職人の東出朝陽という方でした。木挽職人とは、丸太を手で挽いて板にしていく職人のこと。現在、日本に二人しかいない職人の一人とつながりができたのは大きかったです」

 

 坂口さんは東出さんの紹介で、全国にある仕入先と少しずつコネクションを築いていった。そして2016年春に鳥取で会社を立ち上げ、東京でのイベント出店から一枚板の販売をスタートさせる。

 

最初のお客様は鳥取に住む新聞記者の方で、すごく気に入って下さり、それを新聞記事にしていただいたんです。ありがたいことに僕は運だけは持っていて(笑)、そこからテレビ番組が密着して下さったり、渋谷のギャラリーを貸し切ったり、代官山の蔦屋書店さんで一枚板をずらっと並べたりと、イベントを通じて徐々にワンダーウッドというブランドの認知を広げていきました

 

代官山蔦屋書店イベント

 

 イベント出店によるBtoCビジネスからスタートしたワンダーウッドだが、今のメインはBtoBビジネスだ。

「イベントで多くの人に実際に木に振れていただき、まずは家庭向けの販売からスタート。その後、徐々にBtoBビジネスが増えていきました。最初のB to Bのお客様は、熊本にある工務店。オフィスに置く5mのテーブル用の板からでした。そこから徐々に、レストランや寿司店さんへとビジネスが広がっていったのです。

 

熊本の工務店のオフィス

 

BtoBビジネスを拡大するために実際何をしていたかというと、もう飲んでばかり(笑)。とにかくいろんな人に会いに行き、お酒を飲んでゴルフをして、本当に泥臭くやりました。お金ないから派手な宣伝なんて打てませんからね。いろいろな方々にお会いしては熱く思いを語り、お酒を飲んでいると、気づいたらその場で売れていた。そんな感じです。特に最初のころは、とにかく足で稼ぎましたね」

 

■自分達のショールームがいろいろな場所にある

 

 メインのBtoBビジネスで特に多いのが、寿司店のカウンターだ。

 

「昨年日本橋にオープンした高柿の寿司というお店のカウンターと付け台を製作させていただき、高い評価をいただくことができました。高柿さんは注目の若手寿司職人の方で、お店はカウンター6席だけと小さいのですが、一般には流通していない、それこそ重要文化財の補修に使うような最高級の木曾檜を顧問の東出に引っ張ってもらい、特別な職人に仕上げをしてもらいました。

 

その職人さんのカンナがけの技術は本当にすごいものがあって『これ本当に木なの!?』と思ってしまうぐらい、表面の仕上がりが滑らか。本当に気持ちよくて、カウンターの前に座って触れているだけで幸せな気分になれる。そんな素晴らしい一枚板に、高柿さんもいらっしゃったお客様も喜んで下さりました。そのような評判が他のお店だけでなく一般のお客様に波及し、BtoCビジネスも拡大していっています

 

 

個人の家だと、一枚板に触れるのはほぼ家族だけ。でもレストランや寿司店になると。毎日何十人、何百人の方が触れる。そして、その方々が一枚板に興味を持って『木の板っていいね』『これはどこで作ったの?』とたずねてくれる。

つまりお店の営業が、イベントと同じ役割を果たしているということ。ショールームがいろいろな場所にあるようなものです(笑)。要は、BtoBビジネスを戦略的に広げることでBtoCビジネスも伸びる、というサイクルが自然とできています。これはもちろん、最初から意識していた考えではありません。あくまで、やりながら気づいたことです」

 

 2017年4月には、世田谷にショールームをオープン。今後の展開も踏まえ、主な拠点を鳥取から東京にシフトした。

 

「イベントは東京で行われることが多いので、『鳥取のショールームにぜひ来て下さい』とはなかなか言いにくい。そうなると、せっかく出店したイベントも、単なる打ち上げ花火で終わってしまいがち。これは、どうしても東京に拠点が必要。すぐにそう思いました。今後、海外展開も行っていくつもりなので、それも踏まえて東京の世田谷区にショールームを作りました。

 

世田谷は東京の中でも一軒家が多いエリアですし、高所得者も多い。こういったものはある程度の余裕がないと手が出ませんからね。僕らがやりたいことを実現し、世間に貢献していくためには、まず会社として体力をつけること。それを踏まえて、今のターゲットは高所得者層です。その上で今後、幅広い層の方にお返しをしていこうと考えています

 

 

 ちなみにワンダーウッドの一枚板は、ウェブサイトこそ作っているがEコマースでの販売は現状行っていない。

 

「お客様のライフスタイルについて教えていただき、その方に最も合うものを提案させていただくことが、僕らの営業スタイル。だからショールームに来ていただき、直接お話をして販売したい。正直おこがましいかもしれませんが、一枚板を売ることよりも、お客様の人生に関わりたいと思っているんです」

 

 最終回となる次回Part.4では、ワンダーウッドの海外戦略などについて、話を聞いていく。

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プロフィール
坂口祐貴

坂口祐貴 さかぐち ゆうき

(株)WONDERWOOD 代表取締役

1988年鳥取県生まれ。大学在学中にガーナに留学。卒業後、P&G ジャパン株式会社に入社。営業を担当し、2014年に退職。
当時、偶然入った地元・鳥取のカフェで一枚板のテーブルに出合い、心を奪われる。木に関する知識はほとんどなかったが、2016年に「ワンダーウッド」を起業。2018年春には、イタリア・ミラノで開かれる世界最大級のデザインの祭典「ミラノ・デザインウィーク2018」に初出展を果たした。

※ 会社、役職、年齢など、記事内容は全て取材時のものです

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