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データから結論を導く力が、何よりも大事

西部 君隆 にしべ きみたか さん (株)マクロミル リサーチソリューション本部 第1ソリューション部 部長


ソーシャルメディア全盛の今、消費者の声を拾えるツールが増え、マーケティングリサーチの役割は変わりつつある。今後、マーケティングリサーチはどのように変わっていくのだろうか。2014年の上場廃止から3年。今年3月に再上場を果たしたマーケティングリサーチ会社・マクロミルの西部君隆さんに、今回はお話をうかがっていく。

写真=矢郷桃


Part.3

 

■開発のスピードは意識するが、手法ありきの売り方はしない

 

今後はECの拡大につれて、クライアント自身が消費者の購買行動の分析を行いやすい状況になる。そんな状況の中、マクロミルはインターネットリサーチのリーディングカンパニーとして、どんな違いを打ち出していくのか。

 

「一つは、データ収集のバリエーションの豊富さですね。例えば購買データについて、私達は対象の3万人のモニタの方々にバーコードリーダーを配っています。モノを買った時にバーコードをスキャンすると、データがそのまま弊社に届く仕組みになっていて、モニタの属性に対し、どんなタイミングで何と何を一緒に買った、といったデータがストックされていきます。さらにモニタにアンケートを実施でき、「その商品をなぜ購入したのか」も分かることは一つの強みですね。

 

また、弊社はモニタを対象に『MillWallet(ミルウォレット)』という家計簿アプリも出していて、モニタの方が何かを買った時にレシートの写真を撮るとアプリに蓄積されるので、そのデータベースも活用しています。

 

 

購入者の追跡調査という形で『この商品を買いましたか?』というアンケートを送り、買ったと答えた人にあらためてアンケートを飛ばすこともあります。ただ、購入してからアンケートに答えてもらうまでに少しタイムラグがある。その一方で、商品のバーコードをスキャンしたタイミングですぐにアンケートを実施できれば、消費者の声を新鮮な状態で集められる。そういったデータの質の高さも、大きな強みですね。

 

また昨年、主に小売業や外食産業などのお客様に向け、来店客の満足度をリアルタイムで可視化し、現場での意思決定につなげる『Satisfeeder(サティスフィーダー)』というサービスの提供を始めました。お店に来ているお客様にインターネット上でアンケートを実施し、満足度など顧客の声を取得できます。アンケートの回答結果はダッシュボード上でリアルタイムに確認でき、店舗別やエリア別などで集計することも可能です。チェーン店のどの店舗の満足度が高いのか、といったことを分析できます」

 

 

さまざまな新しい調査手法は、主に現場からのボトムアップで開発。そのスピード感もまた、マクロミルの大きな強みだ。

 

「あまり時間をかけるとクライアントのニーズが変わりますから、開発のスピードは意識しています。ただし、手法ありきの売り方はしません。あくまでクライアントのビジネスイシューをヒアリングし、適した手法を提示するというスタンスです。僕らが売っているのは調査手法という商品ではなく、あくまでソリューション。そこでクライアントと目線がずれてしまったら、どんなにいい調査をしても意味がない

 

■一つのデータに対する、さまざまな切り口や解釈が求められる

 

今のアンケートはPCとスマホが半々だが、今後は間違いなくスマホが増えてくる。

 

「その点で、いかにスマホで答えやすいものにするか。ユーザーインタフェースの改良が大きなテーマになるでしょう。モニタの方々は、私達にとって極めて大きなアセット。『マクロミルから来るアンケートには答えたくない』と思われたら、私達のビジネスは立ち行きません。いかにフラストレーションなく、正しく回答してもらえるか。それは本当に大きなテーマだと考えています。

 

それともう一つ、ゲーミフィケーション(課題の解決や顧客ロイヤリティの向上に、ゲームデザインの技術やメカニズムを利用すること)の要素も必要かと思います。答えて楽しいアンケート、という視点でも考えねばなりません。聞きたいことは山ほどあるのですが、回答者の方はアンケートに回答するために生活しているわけではない。そこにちゃんと関心を向ける必要があります

 

そして今後、日本のマーケットはどのように変わっていくのだろう。西部さんは「今後はデータの多様化と分析の自動化、高度化がさらに進むでしょう」と語る。

 

「IоTの発達によって人の消費行動がすべてデジタル化されれば、例えば『アンケートを取る』というフィールドワークはなくなる可能性がある。もしかすると、スマホの中にその持ち主の検索結果や購買行動から、持ち主の嗜好性を把握したアバターのようなものが存在するようになって、持ち主へアンケートするよりもそのアバターへ情報を取得しに行く方が早くて正確という時代になるかも知れない

 

 

そんな中でリサーチャーに求められるのは、一つのデータをどのように見るか、という切り口や解釈の仕方だと思います。例えば50%と出てきたデータを低いと読むか高いと読むか。それをどう判断し、どんな仮説を立て、どんな結論を導くか。それはリサーチャー次第。その部分は、今後もずっと変わらないと思います。

 

今はAIもありますし画像処理技術も音声認識技術もある。じゃあリサーチャーの仕事がすべて自動化される未来が来るのか。それを想像するのは楽しいですが、やっぱり、リサーチャーにしかできないことはまだまだある。自動化できることがたくさんあるのは確かなので、自動化できることはどんどん自動化させ、リサーチャーはしっかりと、人間にしかできないブレインワークに時間を使う。そんな未来になることでしょう

 

最終回となるPart.4では、西部さんが考えるリサーチャーという仕事の魅力とあり方について、話を聞いていく。


プロフィール
西部 君隆

西部 君隆 にしべ きみたか

(株)マクロミル リサーチソリューション本部 第1ソリューション部 部長

1979年神奈川県出身。東京理科大学卒業後、セールスエンジニアを経て2006年にインタースコープに入社、ヤフーバリューインサイトを経て現在に至る。飲料・食品業界を中心にリサーチのプランニング・提案・分析に従事。2010年8月よりリサーチャー部門のマネジメントを行い、2014年4月よりネットリサーチ総合研究所主席研究員を兼任。現在はリサーチソリューション本部第1ソリューション部の部長を務める。

※ 会社、役職、年齢など、記事内容は全て取材時のものです

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