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“不確実性の時代”の知は「決断」に宿る

長沼 博之 ながぬま ひろゆき さん 一般社団法人ソーシャル・デザイン 代表理事

Part.4

 

■「店舗の出し方」という概念を変えたSHOPCOUNTER。

 

-長沼さんが今、注目している商品やサービスは、例えばどのようなものがありますか。

 

「シェアリングエコノミーのカテゴリーですが、SHOPCOUNTERというサービスですね。小売店などの空いているスペースを貸し借りできるサービスで、それを短いスパンで行うことができる。1日でもいいし数時間でもOKで、美容院や小売店などが登録されており、安くていい所がとてもたくさんあるんです。これまではお店を出すには何百万円という改修費をかける必要がありましたが、このサービスを使えばポップアップショップを格安で出すことができる。まだ都内のみの展開ですが、これが全国的に広がると非常に面白くなると思います。

 

SHOPCOUNTER
SHOPCOUNTER ※画像はスクリーンショットです

 

 

なぜSHOPCOUNTERが面白いのか。要は『店舗の出し方』という概念が変わる、ということなんです。例えば、普段はウェブ上のみでショップを運営する。そして月の1週間だけSHOPCOUNTERで見つけたスペースでお店を出す、ということができるようになる。今までみたいな『リアル店舗を出すか、出さないか』という考えではなく『店舗という空間の使用価値にアクセスする』ということ。店舗を出す、出店するという考えは今後、古いものになるかもしれません。

いわゆるシェアリングエコノミー系のサービスは、細かくてニッチなものになりがちです。総合的にいえば10兆円産業になるかもしれませんが、基本的にはまだ細かいものが多い。その中でSHOPCOUNTERは、新しい概念を作る、意味を生むという意味で、非常に面白いと思っています」

 

-シェアリングエコノミー系のサービスは、双方の評価システムが絶妙だと思います。今後、AirBnBUberが日本国内で本格的に浸透していく中、「日本型」を模索していくことになるかもしれませんね。

 

「そうですね。あとは、クラウドソーシングがさらに進化していくでしょう。今までは労働集約型な仕事のマッチングプラットフォームでした。しかし今後、0から1の仕事を作り出すプラットフォームにもなっていくと思います。例えば結婚式をするとして、ウエディングプランナーや生花店にオンライン上で提案し、見積もりをしてもらって決済までする、とか。ただ仕事をマッチングさせるのではなく、新たな結婚式をみんなで作り上げる、というスタイルを生み出すわけです。そこまでクラウドソーシングも進んでいくと思われます」

 

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-2015年のトレンドを見ると、IoTを始め、あらゆるものがデジタルと結び付いていく状況が顕著でした。今年以降を見ても、すべてがデータ化、数値化される時代に移行していくと思われます。

 

「おっしゃる通りですね。IoTにせよ、あらゆるところにセンサーがつき、数値化されていきます。前回お話した、ヘルスケアIoT製品を開発するスタートアップ、サイマックスさんが開発する、世界初のトイレ後付け型の分析装置とヘルスモニタリングサービスもそうですよね。

でも確かに、尿検査で自分の健康状態という予防医学として重要なデータをスマホで見ることができたとしても、それをどう判断するかは受け手次第です。あらゆるものが数値化、データ化される世界で、マーケターも自身の姿勢、哲学を問われるようになります。アクセスがどうなのか、CVRがどうなのか。確かにそれは非常に大事。でもその一方で、その事象の「意味」を理解することも同じぐらい重要。『数値化される世界』と『意味の世界』。それを両方語れるようにならなくてはいけません

 

■今後の最大の転換ポイント。それは「超長寿社会」。

 

-確かに「ビッグデータは統計ではなく経験値である」ともいわれるように、データはあくまでデータ。それは目の前のことを、何ら約束してはくれません。

 

"不確実性の時代"における知はどこに宿るかというと、決断に宿るわけです。つまり知識や知恵をただ吸収するだけでなく、そこからどういう決断につなげていくのか。どういうアウトプットに活かすのか、が大切です。環境が素早く変化する不確実な時代であるほど、自身の持つ知の生態系をベースにした瞬間の決断の重要性が増していくわけです

 

-マーケターは自分なりに決断をして、自らのスタンスを明確にしていく必要がある、ということですね。

 

確かに、戦略を構築するのも大事です。でも今のシステムの中で戦略を構築しても、そもそも戦略自体の本質的な部分が間違っていては仕方ない。その可能性があるのが現代です。例えば今の世の中で、GDPをベースに物事を語る意義はいったいどこにあるのでしょう。そこまで考えて自分の意見を持たないと、説得力が生まれない。時に自己否定まで伴うようなことまで大局的に語れないと、マーケターも経営者も含めたビジネスマンは厳しくなってくる。

今、日本に訪れつつある最大の転換ポイント。それはテクノロジーでもシェアリングエコノミーでもなく、超長寿社会です。健康寿命の延びによって、これからは30代~50代は人生の前哨戦といわれるようになる。そして本番は60歳以降の20~30年。そこをどう生きたかが、その人の人生を語る最大の要素になるでしょう。例えば男性の人生ならば、30代~50代にどれぐらいの年収と地位があるのかが、人生を語る最大の要素だった。今後はこの価値観がゆっくり変わります。60歳以降の20~30年でどんな活動、どんな社会貢献をして、どのように輝いて生きてきたか。それが人生で最も大事な要素になる

 

超長寿社会
超長寿社会化が価値観の大きな転換を要請する

 

 

-かなり強烈な価値観の変化です。

 

「例えば今、50代の方の中で逃げ切れると思っている方もいるかもしれませんが、目を凝らして時代を見つめれば、そんなに甘いものでもないことも分かってきます。最後の20年~30年がハッピーじゃないと、その人の人生は評価されない。今までは主にキャリアというレイヤーで評価されていましたが、今後は人生というレイヤーで語られる。晩年が輝いていないと、何のための人生だったのか、と社会から厳しい評価がくだされる場合もある。ですから、おそらく65歳で定年、隠居ということにはならないし、健康なうちはみんなが社会のために何かしらの活動、仕事をするでしょう。それがずっと続けられるものならば、人生の幸福度は上がる。ですから皆さん、今後の超長寿社会を見すえて、60歳を過ぎてから10年以上続けられるものを、仕事であろうと社会貢献活動であろうと趣味であろうと、今から探していくべきだと思います。そして、退職したらそれで生きていく」

 

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-これまでは、男性であればただキャリアのことだけを考えていればよかったけれど、今後はそれでは上手くいかない、ということですね。

 

「決して、大企業を勤め上げることが悪いわけではありません。仕事にやりがいを見つけ出すことは大事だし、お金も当然必要ですから。でも、会社にしがみついていれば人生何とかなる、という考えは間もなく、完全に崩れます。各々が生きること、働くことの意味を、問い直す必要がある。そこは、非常にハードな部分ではありますが…。

確かに経済成長もいいのですが、それはあくまで一つの要素に過ぎません。その部分だけで幸福を語れないことは、みんなとうにわかっている。本質的な豊かさとは何なのか。そこが見えてこないと、晩年になって『自分はいったい、何をやってきたんだろう?』となりかねない。今後はその部分を、企業も個人もリアルに考えていく社会になる。それは間違いありません

 

今年以降、いよいよこれまでの古い価値観は崩れ、社会はテクノロジーの発達でさらに大きく変わっていくだろう。そこで起きていることを敏感に見定め、自らのスタンスと意志をしっかりと持つ。その上で、高めてきた「知」を自らの中で昇華させ、優れた決断を下していく。これからのマーケターには、そんなスタンスが求められていくに違いない。今後も、長沼さんが発信する情報に注目し続けたい。

 

books
本記事の読者の方々には、長沼さんの著書「ビジネスモデル2025」「ワーク・デザイン これからの〈働き方の設計図〉」についても参照されたい。

 

 

(終わり)


プロフィール
長沼 博之

長沼 博之 ながぬま ひろゆき

一般社団法人ソーシャル・デザイン 代表理事

社団法人ソーシャル・デザイン代表理事。経営コンサルタント。大企業から中小企業、スタートアップまで、業種業態を問わず経営及び事業開発の支援を行う。近未来の社会やビジネスモデル、働き方、メイカーズ革命やクラウドソーシング等についてテレビや雑誌からの取材多数。「Social Design News」を運営。
著書に『ワーク・デザイン これからの<働き方の設計図>』(CCCメディアハウス)『Business Model2025』(ソシム)がある。

※ 会社、役職、年齢など、記事内容は全て取材時のものです

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