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許す許さないじゃなく、受け入れる

繁田 奈歩 しげた なほ さん 株式会社インフォブリッジマーケティング 代表


日系を始め多くの企業のインド進出をサポートする、インフォブリッジホールディングス代表の繁田奈歩さん。目覚ましい経済成長を続け、消費構造にも大きな変化が訪れつつあるインド市場で、日本企業はいかにしてブランド価値を構築していくのか。女性起業家であり、インドビジネスのプロフェッショナルである繁田さんの「企み」とは?

文=前田成彦(Office221) 写真=三輪憲亮


Part.1

 

■日本人は世界的に見れば、とても摩訶不思議な存在。

中国に次ぐ巨大市場として今、世界中から熱い視線を集めるインド。現在進出を果たしている日系企業は約1000社。これからの市場として多くの企業がインドに注目する中、「インド市場は難しい」と躊躇する向きもあるのは確かだ。ビジネスに携わって9年になる繁田さんは、今の状況をどう読んでいるのか。
まずは、インドにおけるマーケットリサーチ手法から話を聞いて行こう

 

「私達のクライアントは、いわゆるB to Bの事業を行う産業系の会社と、消費材を手がける会社に大別できます。ナショナルクライアント的な大企業が多いですね。消費材でいえば自動車や家電メーカーの他、お菓子や化粧品メーカーもあります。クライアントさんとは、様々なカテゴリーの調査を一緒に行い、インド人と日本人の好みの違いや、物販のルート造りなどについてのアドバイスを行っています。

日系企業のリサーチ手法で最も多いのは、家庭訪問やディーラー、企業訪問など、実際に対面して話を聞くものです。そこで得た情報を現地スタッフとともに、レポートの形でまとめていく。行っているのは非常にオーソドックスで、地道な作業ですよ

 

インドの人口は12億を超える。人種のるつぼであり、言語も公用語のヒンディー語の他、20以上が存在。多種多様な価値観が混ざり合うカオスな”この国において、市場調査は困難を極めるのでは

 

「インドの人の好みは日本人と違う。われわれはそう言いがちですが、世界的に見れば、特殊なのは日本です。県民性による違いがどうのこうの、なんて言われることもありますが、ブレ幅は小さい。インドは南北で気候も言葉もぜんぜん違いますが、それが当たり前です。

 

日本人は『違う』ことを受け入れるのが下手。日本以外の国は、お金持ちがいれば貧乏な人もいる。イスラム教徒がいてヒンドゥー教徒がいて、仏教徒がいる。人はみんな違うのが当たり前で、それを認めない、ということは決してありません。それはインドも中国も、インドネシアもそうなのではないでしょうか。

 

でも日本の場合は『とりあえずビールだよね』と誰かが言い出せば、全員がビールを飲まなきゃいけないような雰囲気になる。他の国だと、ビールが飲みたい人も、ワインが飲みたい人も、コーラを飲みたい人もいる。それを許す、許さないじゃなく、受け入れることが当たり前なんです。日本人は世界的に見れば、実に摩訶不思議な存在だと感じます。

 

つまり、多種多様な人がいることは前提。その中での最大公約数を見出していく努力は確かに必要ですが、日本の場合は平均値を追えばそれが最大公約数になる。でもインドの場合、都市部のお金持ちに対するサービスとマスに対するサービスでは、特徴がまったくといっていいほど違います。ですから、自分達が誰に対して何をしたいのかを明確にしないと、インドビジネスは上手く成立していきませんね

 

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家庭訪問のインドの家の雰囲気。都市部ミドルクラス
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貧困層のお宅訪問(調理中)

 

 

インド人に関していえば、『天はニ物を与えず』なんて嘘。

 

 インフォブリッジのクライアントに、インドを単なる生産拠点として考えている企業はほぼない。考えているのは、インドという市場の中でいかにして商品を売っていくか、である。では、インドのマーケットとしての魅力はどんな点なのだろう。

 

「まず簡単に言えば、人口が多い、全人口の10%でも1憶2千万ですからね。そして、若い人が多い。平均年齢が20代半ばぐらいで、人口の半分が25歳以下です。ということは、多くの人にこれからほしいものがどんどん出てくるし、結婚などでライフスタイルの変化が訪れる。

 

インドで、いわゆるミドルクラスは2億人ぐらいだと言われています。これが2020年になると、人口の45%がミドルクラスになるそうです。これだけでもすごい規模です。そして今、毎年26002700万人の子供が生まれています。5年で日本の人口に達するわけです。所得水準を無視していえば、小さな国が毎年一つ生まれるようなもの。そういう意味でも非常に魅力がある。

 

また、地理的側面もあります。アジアは今、成長の中核にいます。これがひと段落すれば、次は間違いなくアフリカ。
インドはアフリカに進出するための、とても重要な拠点にもなりえます。実際にスズキや日産は、インドで造った車をアフリカに出すことはすでに行っています」

 

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また今後は、人材活用が大きなキーになってくると予測している。

 

「ペプシやマイクロソフトなどの世界的企業を始めとして、インド人の社長は世界中にたくさんいます。インドは経営者層で非常に優秀な人を排出しているんです。12億人の国ですからね。1%の天才がいるとしても、1200万人。これは日本人の10%です。一部の優秀な人のポテンシャルは、ものすごく高い。『天はニ物を与えず』なんて嘘だな、と思いますよ(笑)。裕福で仕事もできて、人格も素晴らしい方が、本当にいる。

 

インドはまさにカオスの国。そういう国で生き延びてきた人には、生まれながらにして対応力や忍耐力があるのだと思います。日本人はイレギュラーなことが起きると、どうしよう!? とあたふたします。でもインドでは、イレギュラーが当たり前。だから、何があっても動じない人が多い。日本で1時間で終わる仕事がインドでは1週間かかるとも言われる中、耐え忍ぶ力は必要不可欠です。そして、いろいろな人達が混在するのが当たり前なので、多くの人を束ねていくのも、ごく自然にやっていることです。インドは日本を遥かに超える、素晴らしい人材の宝庫に思えます

 

そんな繁田さんは、どのようなきっかけでインドビジネスに携わることになったのか。
次回は彼女のキャリア、そして現在のインドが持つ多くの魅力について、さらに話を掘り下げていく。


プロフィール

1975年愛知県出身。東京大学卒業後、’99年インフォプラント(現マクロミル)入社。
’02年に同社取締役就任。
’04年に同社海外取締役に就任するとともに、上海に海外子会社インフォブリッジチャイナを設立し、薫事兼総経理就任。
’06年に同社を退任。インフォブリッジホールディングスを設立し、中国事業の他に、インドでのマーケットリサーチ事業を開始。
2008年にインドの調査会社Market Xcel Data Matrix社に資本参加。
2011年にInfobridge India Pvt.Ltd.をニューデリーに設立。日系企業の進出サポート、マーケティング支援事業などを開始。現在、デリー在住。

※ 会社、役職、年齢など、記事内容は全て取材時のものです

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