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これほど、たくさんのチャンスが転がっている国はない

繁田 奈歩 しげた なほ さん 株式会社インフォブリッジマーケティング 代表

Part.3

 

■大事なのは、語学力よりも広範囲なコミュニケーション能力。

 

海外でのビジネス展開にあたっての懸念の一つが語学。繁田さんも前述の通り、かつては英語が大の苦手だった。しかし大学時代、日本人が誰も行かないようば場所をぶらついているうちに、気づけば英語を話せるようになっていたという。

 

「学校の英語教育のおかげで、基礎は一応わかります。あとは、やむを得ずやる気になることですね。私も今は、インド人の英語ならほぼすべて理解できます。インド人の英語は独特ですし、わりと適当だったりもします。そして、実はアメリカ人の英語の方が、よくわかりません(笑)

 

海外でビジネスを手がける際に大事なのが、自分の考えをきちんと説明をすること。それが、日本人に最も欠けている素養だと繁田さんは考えている。日本人はコミュニケーションが下手で、何を考えているのかも、実にわかりにくい。

 

「例えばインドで会議をする時、日本からスタッフが5人ぐらい来たりします。それなのに、会議で発言するのは1人ないし2人。残りの人達はいったい何をしに来たのか、インド人にはさっぱり理解できない。そんなケースがよくあります。

 

そもそも『あうんの呼吸』なんて、外国人には理解できません。日本人はみんな、自分の意見を言葉でしっかり伝えることが苦手。そして、それを英語力のせいにしている。きれいな英語をちゃんとしゃべらないといけない、という意識が強すぎるのでしょう。それも、日本人が海外に出ると口数が少なくなる原因の一つだと思います。

そして、なぜ自分がそう考えるのか、思考の背景をきちんと話すこと。これも、日本人がおろそかにしている部分ですね。日本人にとっての当たり前が、文化的なバックボーンの異なる人達にとっても当たり前とは限りません。これは、インドだからそうすべきという話ではなく、どこの国でも同じことです。つまり大事なのは、語学力よりも広範囲なコミュニケーション能力なのです」

 

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■混沌とはよく言えば『何でもあり』。アイデア次第で、どんなものでも受け入れられる。

 

 しかし現状、インドビジネスに携わる多くの人が「この国は難しい」と語っているのも確かなことだ。果たして、それは本当なのだろうか。

 

他国と比べ、ビジネスに時間がかかるのは間違いありません。社会の現状が複雑で、組織的な動きがなかなか作れないことが、その原因の一つになっていると思います。インドの難しさは、混沌が目の前に表れること。例えば貧富の差でいえば、中国はインドほど複雑ではありません。上海だけを見るならば、貧困層が街中にごろごろしていることはない。でもインドの場合、首都のデリーでも、ものすごいお金持ちが運転する車の横には、手押し車で大量の鋼材を運んでいるような人がいる。街を歩けば、さまざまな階層の人の姿が同時に目に入る。それが当たり前です。

 

日本人は"みんな平等"が原則ですよね。それは単一民族で、収入もおおむね似たレベルにあるから。使用人と被使用人がいる、という考え自体を日本人は好まず、どこかいけないことだと思っています。でも貧富の差が歴然とあるインドでは、人をマネージメントできないとやっていけません。例えば、ドライバーやサーバントを使うことは当たり前。人のマネージメントを覚えれば生活は楽になる。貧富の差が目の前にあるインドでは、人を使うことが社会を安定させている側面がある。ですからお金を稼いでいる人達が人を雇い、給料を払ってあげることで雇用が生まれる。それは、決して悪いことではありません。

 

そもそも、本当に複雑で多様な価値観が交錯している国です。だから『インドはこうです』なんて、とても言えないんですよ。ヒンドゥー教徒は牛肉を食べないと思いきや、実は牛肉を食べる人もいますしね。一面的な常識では、測り切れない国です。インド人が『インドのことをすべて理解するのは自分でも無理』と言うぐらいですから(笑)」

 

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上段:街の雑貨屋さんと住宅街、下段:大型ハイパー店

 

そんな風に、文化も社会の現状も日本とは大きく異なるインドだが、もちろんビジネス上の魅力は多々ある。

 

混沌とはよく言えば『何でもあり』ということ。アイデア次第で、どんな商品でもサービスでも受け入れられる可能性がある。チャンスが転がっている、という意味で、これほど面白い国はないと思っています。

 

確かに、インドビジネスには厳しい面もあります。例えば消費財などでは、インドの会社のみならず、日本の会社が束になってもかなわないような世界規模の会社とも戦っていかねばならない。そこは正直、しんどいです。でも、その商品ならではの魅力や利点、特徴がしっかりあれば、勝ち目は十分ある。また、ライバル企業が進出していない分野のサービスや商品であれば、先に来た企業がやはり有利。ですから、来るなら早い方がいいのは確かです。

 

今、日本の企業の多くは、インドネシアやベトナムなどに目を向けています。もちろん、それぞれ素晴らしい国ですし、進出するメリットは大いにあります。ただし、それらの国に対するインドの利点を挙げなら、やはり経済規模です。例えば、ムンバイというインド有数の大都市を州都にしているマハーラーシュトラ州。ここのGDPは、ベトナムの約2倍です。また、人口が2億人近くいる州もあります。それらを一つ一つ攻めていけば、とてつもなく大きなビジネスに成長する可能性は十分ある。インドは混沌の国ですが、だからこそ面白い。そして、ポテンシャルは実に高い。それを知っていただきたいですね」

 

最終回となる次回は、繁田さんの女性起業家としての心得、そして今後のビジネス展望について話を聞いていく。


プロフィール

1975年愛知県出身。東京大学卒業後、’99年インフォプラント(現マクロミル)入社。
’02年に同社取締役就任。
’04年に同社海外取締役に就任するとともに、上海に海外子会社インフォブリッジチャイナを設立し、薫事兼総経理就任。
’06年に同社を退任。インフォブリッジホールディングスを設立し、中国事業の他に、インドでのマーケットリサーチ事業を開始。
2008年にインドの調査会社Market Xcel Data Matrix社に資本参加。
2011年にInfobridge India Pvt.Ltd.をニューデリーに設立。日系企業の進出サポート、マーケティング支援事業などを開始。現在、デリー在住。

※ 会社、役職、年齢など、記事内容は全て取材時のものです

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