転職のススメ

堂下 ナツコ

堂下 ナツコ [記事一覧]

職業:外資系中堅フードチェーンCMO。一言:マーケターになりたい、とも、マーケティングの仕事をしよう、とも思ったことがないはずなのに、気が付けば15年間、時にエージェンシーで、時に事業会社で、「マーケティング」に携わり、さまざまな企業の「マーケティング部」と関わってきました。
経歴:国内大手情報出版社 / 戦略的Webベンチャー / 外資系広告代理店 / 世界最大手ファーストフードチェーン


Vol.5
「自覚なきCMOが思う<ニッポン【究極】のマーケティング部!>」

 

2014年もあっという間に1月が終わってしまいました。遅筆ながらファンの多い堂下ナツ子です。本年もよろしくお願いいたします。

 

さて、今年はまずのっけから、マーケターへの「転職」のススメである。日本における転職の傾向は、エージェンシー側も事業会社側も同じ業界内で動くケースが多いように思う。(堂下ナツ子調べ)

ベンチャーやエージェンシー側の人は、例えば2社目ぐらいまでに外資系代理店が入ってくると、その後10年20年は外資系代理店をぐるぐるまわることになるし、後者が転職をする場合も(あまりしないが)、結局同じ業界内、例えば飲食から飲食へという移動が多い。

 

◼︎転職の動機

 

確かにあなたは外資系代理店の名刺を持ち、それは合コンでもウケが良く、高い給料をもらい、豊富な有給を消化し、クライアントにも可愛がられ、つまり外資系代理店の人としてコツを掴んでいるかもしれない。

今より名の通った代理店に転職したら、もっとモテるかもしれないし、逆に小さいところに行ってポジションをあげたほうが、もっとカッコイイかもしれない。

 

大手事業会社に勤めているあなたは、自分を引き上げてくれた上司の転職にともない、これまでのノウハウと実積、上司の裏も表も知りつくしているという「特技」をいかして、その上司についていくべきかもしれない。

 

どうせ同じ業界である。若干のシステムの違いはあれど、自分にできないはずがない。

 

◼︎立場を変えると見えてくる

 

しかしこれは、とてももったいないことだ。サラリーマンマーケターは皆、大なり小なり似たような実力なのだ。自分が思うほど、自分がいなくなった後、その会社は打撃を受けないし、あなたがいた業界には、あなたに似た人がごろごろいる。

 

だが、立場を変えたらどうなるだろう。

 

これまで中堅エージェンシーで営業をしていたあなたには、忘れられないクライアントがいる。はっきり言ってクソ野郎である。何を提案してもため息をつき、「選べないんだよねー」の一点張り。

代「A案はバズを生み出す仕掛けをいれまして、あ、サーバも負荷分散してますので、どっとアクセスきても大丈夫です。B案はもう少しトラディショナルメディアにも、こちら主婦層がターゲットということでしたので、デザインも柔らかく、ママブロガーと雑誌、両方とコラボをすることで、リーチをとれる案となっております」

ク「…ふー、、、選べないんだよねー」

 

ある日あなたは転職をする。大手メーカーのマーケティング部、来期から主婦層をターゲットに、もっとSNSを活用したプロモーションに力を入れたいということで、あなたのナレッジと経験が買われたのだ。早速あなたはナレッジを活かしてエージェンシーを選ぶ。今回は自分がクライアントだ。正直、あなたの古巣は高いので、友人が勤める別の代理店にしよう。

そしてあなたはクライアントとして提案を受ける。新しいコミュニケーションアプリを使ってバズを生み出せそうなA案と、ママブロガー&雑誌とコラボしたB案である。なんだか身に覚えのある提案を聞いて若干の不安を感じながらも、あなたは上司に相談する。

 

あ 「A案はバズを生み出す仕掛けを入れて…」

上 「それやると儲かるの?人いっぱいくる?」

あ 「は、あのサーバは負荷分散…」

上 「 こっちのオペレーション、人減らせるの?今より少ない人数で回せるようになるってこと?キャンペーンやる度に説明する人増やしてたら利益出ねーべ。」

 

呆然とするあなたに、エージェンシーから明るい声で電話がかかってくる。

「A案のアプリなんですが、6ヶ月契約ですとかなり割安になります!こういうのってちょっとやって終わっちゃうと、せっかくダウンロードしてくれたお客様を囲い込めないんで、次の商品でも使ったほうがいいと思うんですよー。あ、あとB案のママブロガーなんですが、最近出産されたモデルの⚪️⚪️さんも、今アクセス伸びてます。いっそのことA案とB案、両方半年間やってみるってのも、いいと思います!結局月でならすと、どちらか短期間やるのと同じ金額ですみますからねー、どうします?」

 

あなたは言葉を絞り出す。

「…っていうか、、、選べないんだよね…」

 

◼︎ 若きCEOは言った。「君に全部任せるよ。」

 

こうしてエージェンシー側とクライアント側、両方を経験したあなたには、ひとつの業界のルールしか知らない人とは違う筋肉がつくのである。

そしてまた、新たなチャンスが到来する。全くの異業種からのお誘いである。エージェンシー時代にも経験のない、美容系ベンチャー。その分野には詳しくないから、と渋るあなたに、金融出身の若き社長は言うだろう。

「我々は後発組。僕だって今まで金融でやってきて、何も知らない。ただ、女性が元気で長寿な日本には、市場の可能性があるんだ。ターゲットは60代の女性。日本に可愛いおばあちゃんが増えたらステキだと思わない?」

さらに彼は言葉を重ねる。

僕はマーケティングはよくわからない。特にクリエイティブは素人だ。君にCMOとして全部任せるよ。君の感性が必要なんだ。

 

あなたには、もうわかっているはずだ。経営者は究極のクライアントである。これをやったら儲かるのか?あるいは利益が上がるのか?そのどちらかにしか興味がない。そういうプレゼンをすれば、細かい施策やらデザインなんかは任せてくれるだろう。今回こそ、自分が思うベストなマーケティングをやってやろうじゃないか。

 

晴れて新しい会社で最初の商品が出る。あなたはプロモーションビデオのラフをCEOに見せる。

あ 「まずターゲットであるシニア女性をガッとつかむ案です、彼女たちの興味は…」

CEO 「色がやだな」

あ 「…はい?」

CEO  「もっとこう、うちのブランドは可愛いおばあちゃん、がコンセプトだからさ。なんかこう、この色じゃないよね?」「タレントさんは誰使うの?僕はフランスの女優さんとかいいと思うなー」

 

転職の際に忘れてはいけないこと。

経営者が言う「君に全部任せるよ」は嘘である。


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