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今、必要なのはマーケティングそのものの発明
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今、必要なのはマーケティングそのものの発明
HAKUHODO THE DAYという会社とは、いったいどのようなコンセプトで作られ、何を目指しているのか。そして今行おうとしていることは、本当に博報堂本体ではできないことなのか。そんな疑問を、佐藤さんにあらためてぶつけてみた。
「そうですね…基本にあるのは、僕らは“マーケティングのハブ“であるべき、ということなんです。今、広告やブランディング、メディア開発といった、既存の広告会社も手がけている仕事も行っていますし、これからも続けます。ただしそれだけではなく、僕らはプロダクトデザインやショップ開発、出版、建築、そしてインターフェイスデザイン、商品開発も行う。要は、アウトプットの仕方が広告の他にも多々ある、ということ。僕らはクリエイティブをベースとしつつも既存の広告コミュニケーションにとらわれず、マーケティングのハブ(=中心に位置する存在)となって、クライアントに最も適したソリューションを提案します。そのため、新潮文庫の「ワタシの一行」や、Zoffのオフィスデザインなど、広告ではなく、企業の活動そのものを提案することが多くなります。今、必要なのはマーケティングそのものの発明だと思うんです」
HAKUHODO THE DAYにとって、マーケティング=広告ではない。広告コミュニケーションはマーケティングの一部分であり、大事なのはクライアントの事業成長のアイデアと実行。それが、彼らの明確な主張だ。アプローチは、既存の広告会社よりむしろ経営コンサルタントに近いのかもしれない。実際、コンサルティング会社と競合することも多いという。
「先ほど『戦いではない!』と言いましたが、わかりやすいのであえて『戦略』という言葉を使いますね。戦略は大きくて太くないと! でもそれだけじゃダメ。戦略とはある種の“抽象化”です。例えば1年間のマーケティング活動を考えるとしたら、それは数十時間で、最終的に数枚の紙にまとめられることになります。そのターゲットは数百万人ですが、担当者はたった数人。つまり戦略とは、上位概念化というか、抽象化すること。でもそれをすると、人の心を動かす、暮らしの機微をとらえるための深さが足りなくなる。大事なのは、より具体的な細かい目線です。だから、僕たちは表現の仕方や作るもののディテールにこだわります。心を動かすマーケティングとは、大きくて太い戦略に、一人一人の心に深く刺さる何かを発見し、カタチにして練り込むということなんです。」
そしてHAKUHODO THE DAYが重視していることは、クライアントの経営者との取り組みである。
「僕らの仕事は、マーケティングそのものを開発すること! だから、クライアントとの対話がとても重要です。そして、クライアントの持っているアセットを再構築することが多いので、クライアント内を調整と整理、時には破壊と創造が必要になります。だから、顧客やマーケット、自分の会社の成長を真剣に考えて判断できる、経営層との仕事が多くなります。つまり、安易に流行を作り出して目立つことより、リアルなマーケティングに基づいて顧客を育てていく。本当の意味で事業の成長の役に立つ、リードする。それが、僕らのしようとしていることです。」