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心の動きや機微、暮らしの変わり方。ヒントはそこにある

佐藤 夏生 さとう なつお さん (株)HAKUHODO THE DAY 代表取締役社長

Part.3

 

■数字よりも大切なもの。それは「今、社会で起きていること」。

 

  佐藤さんは博報堂入社後4年間、マーケティング部に在籍。その経験について「データ分析をたくさんしたことで、数字を徹底的に見れるようになった。それは非常に大きいけれど…」と語る。

 

「実は入社2年目の時、上司に宣言したんです。『今後もう、エクセルは触らない』って。なぜかというと、数字だけを見ても、そこにマーケティングの本質はない、と思ったからです。

そういった資料がダメとは決して思いませんし、数字を見ることに意味はない、と断定するつもりもありません。でも、数字より大事なものがある。それは感覚大切なのは『今、社会で起きていること』。マーケティングのヒントは、人の気持ちや機微、暮らしの変わり方、といったところにある。そこをつかみ取って、人の心に訴えかけるアウトプットやアクションを生み出したい。そう考えて、クリエイティブに異動しました」

 

 

 クリエイティブへ異動後、数々のヒットを生み出した。博報堂時代を通じて学んだのは、人の心を動かすための具体的な術。「広告を勉強したというより、人の心を動かすコンセプトの作り方を修業した」という。

 

今、社会で起きている現象で、まだ言語化・記号化されていないことはたくさんある。マーケターに大事なのは、それを捕らえていくことです。例えば最近なら、スマートフォンに使う『サクサク』という言葉。『スマホがサクサク動く』という感覚自体が新しくて、誰かがそれをサクサクと名づけ、言語化されていった。

また、僕のある先輩は、20年前から持っていた自転車をすべて分解し、6万円かけてレストアした。それを見て、僕はとてもカッコいいと思った。6万円も出せば、たぶんそれよりもいい自転車を買える。しかも、決してエコでもロハスでもない。でも今の時代、そのスタンスっていいですよね。そういった生きる姿勢、暮らしの態度みたいなものは、たぶんまだ言語化されていない。時代がどんどん動いていく中、そういうものが日々生み出されていく。

 

また今、モノの価値観が大きく変わってきています。例えば、お金。僕らの少し上のいわゆるバブル世代が若いころは、お金をたくさん使ってぜいたくをすることに価値が置かれていた。例えば旅行に行けば、高級ホテルのプールサイドでカクテルを飲む。それがプレミアムな喜びだった。

でも、今の若い人はそういったことより、風呂にも入らず三日三晩ひたすら歩いて、たどり着いた土地で珍しい料理を食べてみる。例えばそんなことに、大きな価値が置かれています。そういう風に、社会の流れや人の心の機微、気持ちの持ちようが確実に変わってきている。僕らはそれを敏感に読み取り、動きに対応していかねばならないんです」

 

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本の中から心に残る一行を選び「ワタシの一行」として記録、共有できるサイトを開発。著者のバリューが重視されがちな本の価値に、読む人に与えたインスピレーションの多さ、大きさという新たな価値基準を導入。読書を「作り手から読み手のものへ」と変えた。ローンチキャンペーンでは各界の著名人100人がこの読書運動に賛同。読み手とともに新しい読書カルチャーを創造。

 

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■ マーケティングスキルは、“身体感覚”に近いものがある。

 

 日々動き、変化を続ける社会。そして価値観の変遷の中で、気持ちや機微、暮らしの変わり方、社会の潮目、気持ちの潮目を読む。それを実践する素晴らしいマーケターとして、佐藤さんは意外な名を挙げる。

 

「マドンナは数年前、レコードメーカーから、コンサートプロモーターであるライヴ・ネイションに移籍しました。おそらく、新しい曲を作ってミリオンを狙うよりも、すでにミリオンは多数あるのでライブでリアルな感動体験を与えて、みんなに過去の曲をネットで買ってもらう方が時代に合っている、と考えたのだと思います。今の音楽の買い方とマーケット状況、自分の持っているエクイティの使い方を考えての行動でしょうし、その読みは実に上手いですね」

 

 社会や気持ちの潮目を読み、クライアントの状況に対応して、よりよいソリューションを提案をする。そこで必要なのは、時代に対応する“反射神経”や“身体能力”だという。

 

 

マーケティングスキルは身体感覚に近い。今、外の社会で何が起きているか。それを考えてクライアントに提案を投げかけながら、それをスピーディに転がして、変えていく。リサーチをして、あれをしてこれをして何か月、とやっていると、もう遅い。そういう意味で、時代に対応する反射神経や身体能力のようなものが大事なんです。

前回にも述べましたが、例えば1年前に考えたマーケティング戦略を何の疑問もなく今も使うというのは、基本的におかしいと思っています。僕らはクライアントのパートナーとしておつき合いをする時、決めたことをどう遂行するかよりも、常に伴走しながら新しく起きていることに対応し、転がしながら動かしていきます。その“対応力”こそ、今の時代に最も問われているものではないでしょうか

 


プロフィール
佐藤 夏生

佐藤 夏生 さとう なつお

(株)HAKUHODO THE DAY 代表取締役社長

1973年生まれ。
’96年に博報堂入社。
マーケティング局にてビールや自動車のマーケティング業務を手がけ、’00年にクリエイティブ局へ移動。CMプランナーとして多くのヒットを生み出す。
’08年にクリエイティブディレクターとなり、メルセデス・ベンツAクラスのアニメーションコンテンツ制作や新潮社「ワタシの一行」、Zoff新オフィスのデザインなど、CIデザイン、商品、サービス開発などのプロジェクトに参加。
2013年8月、株式会社HAKUHODO THE DAY代表取締役社長に就任。

※ 会社、役職、年齢など、記事内容は全て取材時のものです

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