犯人は誰だ!?

堂下 ナツコ

堂下 ナツコ [記事一覧]

職業:外資系中堅フードチェーンCMO。一言:マーケターになりたい、とも、マーケティングの仕事をしよう、とも思ったことがないはずなのに、気が付けば15年間、時にエージェンシーで、時に事業会社で、「マーケティング」に携わり、さまざまな企業の「マーケティング部」と関わってきました。
経歴:国内大手情報出版社 / 戦略的Webベンチャー / 外資系広告代理店 / 世界最大手ファーストフードチェーン


Vol.2
自覚なきCMOが思う<ニッポン【究極】のマーケティング部!>

 

 

ひとつの商品が誕生し、お客様の手元に届くまでには、実に多くの部署が関わる。
各部署から担当者が選抜され、チームとなって数々の山を乗り越える。力を合わせて難問奇問を解決し、不可能と思われたことを可能にし、結果を信じてつき進む。

ここにいたるまでにはいろいろあった。

■ 想い
PR部は、実は今回の商品は「面白くない」と思っている。確かにおいしい、確かにかわいい。でももっとメディアがとびつくような【斬新さ】が必要じゃないか、と。

製造部は今回も商品開発部に不満をもっている。何度も「製造工程がかかるコテコテした商品は2品まで」って言ったよな!と思っている。しかもこの商品の販売期間中に、2度も連休があるなんて。こっちは製造スタッフおさえるのに、どれだけ苦労したと思ってるんだ!

商品開発部はマーケティング部が言うことが理解できないでいる。「グローバルブランド感を保ちつつ、ニッポンのカスタマーにあったジャパンテイストの商品、でももちろん他社がマネできないエクスクルーシブなやつ」って何だ?「もう少しここにパッと目立つ、素材感のあるシズルなモノをのせられませんか?」って、お前らやってみろ!

マーケティング部は、店舗オペレーションが不安だ。今回のキャンペーンは計算上はうまくいくのだ。リーチも充分とれる、特に地方の露出をあつくした、想定CTRからいくと会員も増える、1つ買ったら1つもらえるシンプルなキャンペーンはお客様にもうけるはず、あとはお店がちゃんと売れるか、だ。笑顔で「期間限定のおすすめ商品です」って言えるか、ピークタイムにお客様を怒らせずにさばくことができるか!

店舗オペレーション部は店舗設計部に言いたいことがある。隣の競合店舗に比べて看板が小さいのだ。正面から来る人には見えるかもしれないが、駐車場から来ると柱や隣の店の看板に邪魔されて死角になってしまう。新店ということで高いセールス目標を設定されてるのに、これじゃあ無理でしょ!

 

■ エライ人、登場。
こうしてさまざまな部署の思惑を飲み込んで、やっと新商品が世の中に出る。プランは完璧とはいかなかったかもしれないが、あとは願うしかない。うまくいきますように!お客様に受け入れられますように!そもそも完璧なプランなんてないし、完璧なプランが成功をもたらすこともない。

「やってみなければわからない。」それが全員の本音だ。

しかしここに、そうは思わない人がいる。社長とかオーナーといった「エライ人」である。エライ人は重要なポイントで各部署から提案されたひとつずつの作戦を「承認」してきた。少し腑に落ちないことや、しっかり聞いてなかった話もあったかもしれないが、自分が述べた2-3の意見も反映され、改善されたような気もするし、何より彼の「承認」はすべてである。エライ人が承認しなければ、この商品はこのやり方で世の中に出ることはないのだ。

だがしかし、たいていの場合、エライ人はそのことを忘れているし、状況はエライ人の期待ほどはいかない。もっと「バーンと」セールスがあがり、メディアの取材が殺到し、店には長蛇の列ができる、と思ったのに、それほどではない。「なぜだ。何のせいだ。今後どうしたら状況は好転するんだ?」とエライ人は思う。そしてそれを各部署の人間に問う。

「まったく新しい味の開発しようと思います」と商品部は言う。これまで当社が出してこなかった新しい味、例えばスパイシーな。以前オーナーもおっしゃってましたよね、暑い時期には辛いモノが必要だろうって…。」

「それはどうかな?」とエライ人は言う。「スパイシーな商品なんて市場にあふれてる。うちの強みは、この独特の甘さだろう。どんな商品だって宣伝しなきゃ売れないんだ。まずこの甘い商品を充分プロモーションできてないことに問題はあるんじゃないか?」

「おっしゃる通りです。」とマーケティング部は言う。「以前よりオーナーのご指摘にもあったとおり、次はこの甘い商品の大イベントを計画しています。フラグシップ店舗にお客様を集めて、メディアも呼んで大試食会を…」

「おいおい、どんだけ金かけるんだよ」とエライ人は言う。「俺なら1/10のコストで売ってみせる。店の照明をもっと落ち着く照度にすればいいんだ。それだけでお客様は入りやすくなる。」

「はい、そのつもりで手をうっております」店舗設計部が言う。「特にイートイン需要の高い店舗の照明を…」

「浅い!それでイートインのお客様が増えてどうするんだ?」エライ人は無言で固まる全員に言い渡す。

「まったく新しい味の商品が必要だろう!時間をかけて店内で食べたくなるような、コーヒーと相性も良くて、これからの季節に合うような!例えばスパイシーなカレーとか!!」

■ そしてまた、始まる。
こうして次の次ぐらいの新商品、新プロモーション開発にむけて、戦いの火ぶたが切って落とされる。
PR部は「スパイシーでもなんでもいいけど、メディア受けのいいのにしてね」と思う。
製造部は「カレーでもなんでもいいけど、作りやすくて売れるものにしてね」と思う。
商品部は、マーケティング部は、オペレーション部は、店舗設計部は…

ここで究極の質問。
エライ人が思うほど「バーンと」セールスがあがらなかった新商品プロモーション。

悪いのは、誰!?


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