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日本をわかっている外国人だからこそ、できることがある

Lauren Rose Kocher ろーれん ろーず こーかー さん (株)ソニー・ミュージックエンタテインメント 「TOKYO DANCE MUSIC EVENT」実行委員会 委員長

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昨年12月に東京・渋谷で初めて開催された、日本初のダンスミュージックの国際カンファレンス&イベント「TOKYO DANCE MUSIC EVENT(TDME)」。このイベントをオーガナイズするメンバーの一人が、ソニー・ミュージックエンタテインメントのローレン・ローズ・コーカーさんだ。ライブとともにカンファレンスや楽曲制作のワークショップを行うTDMEの狙いは何なのだろう。日本在住10年、日本のダンスミュージックシーンを知り尽くす彼女の「企み」をうかがう。

写真=三輪憲亮


Part.4

 

■アジアで起こってることも、ちゃんと見てほしい

 

 日本人アーティストにもっと世界を見てほしい、というローレンさんの思い。その「世界」とは、決してマーケットリーダーであるアメリカやヨーロッパのことだけではない。
昨年のTOKYO DANCE MUSIC EVENT(TDME)では、マレーシアや韓国、タイなどアジア各国からも、アーティストやゲストスピーカーを招聘している。なぜなら、ダンスミュージックにおけるアジアの国々の動きは、今後の日本の音楽マーケットに大きな影響を与えると考えているからだ。

 

「日本に近いアジアの国々で起こってることもちゃんと見てみましょうということで、今年は去年より多くのアジアの方々に来ていただく予定です。実は私が今、注目しているのが、インドと中国のIT企業のストリーミングサービス。中国とインドの人口を考えたら、ものすごいポテンシャルがありますから

 

 

中国では、以前は違法ダウンロードなどの問題もありましたが、今はTencentなどのIT企業がそれを変えようとしています。まだまだ日本やアメリカ、ヨーロッパとは規模が違いますが、インドも中国も、人口を考えると、間違いなく大きなマーケットに成長します。そしてその時、日本人アーティストが作った音楽がその国の配信サービスに載っているように、今から準備をしておくべきです。2~3年後には必ずそうなると思いますので。

 

その意味でも、今回の『TDME』はインドのトップDJの一人、Anish Soodに来てもらいます
インド人はもともとダンスミュージックが好きだし、フェスもたくさん開催されています。Anish Soodはたくさんの曲をリリースし、イベントもオーガナイズし、ビジネスパーソンとしても活動しています。日本の音楽ビジネス関係者は、彼のような人とパートナーシップを組めば、お互いに大きなメリットがあるはずです」

 

「カンファレンス」の多彩な登壇者その1:Artist・Director/Action Anish Soodさん

 

 

■世界の人達はみんな、本当に日本が好き

 

 第二回目となる「TDME」は、今年11月30日から12月2日の3日間、渋谷ヒカリエを中心に開催予定となっている。

 

「ライブにもカンファレンスにも、もっとたくさんの方達に来ていただきたいですね。カンファレンスでは、スチューデントステージとテックステージを新しく作ります
スチューデントステージでは『音楽を作っているけど、どうすればリリースできる?』や『音楽出版社ってどういう会社?』『音楽の仕事をしたいけど、どうすればいい?』といった疑問を持っている学生の人達に向けたコンテンツを発信する予定です。

 

「カンファレンス」の多彩な登壇者その2:Jun Hayashiさん(CEO/Spincoaster,Inc.)

 

「カンファレンス」の多彩な登壇者その3:Cherie-Huさん(ジャーナリスト)

 

そしてテックステージでは、音楽関係のスタートアップ企業に最新技術について話していただく予定です。詳しくはまだ発表できないのですが、最近大きな話題になっているブロックチェーンの技術は、音楽業界でも使えるところがたくさんある。そこに携わっている方にお話していただくことも考えています」

 

 今後「TDME」をさらに大きなものにしていき、一人でも多くの日本のアーティストを世界のステージに送り出したいと考えている。

 

「日本に来て10年になりますが、日本が本当に大好き。それは私だけじゃありません。例えば有名な海外のアーティストも、みんな日本が大好きですよ。街が面白くて、安全で、清潔で、食べ物もおいしい、ファンは熱くて、でも優しい。みんな、日本は最高だと言ってくれますし、東京に住んでいると言うと、すごくうらやましがられます。
それなのに、日本の音楽が世界で話題になっていないのは、おかしい

 

 

例えば"クールジャパン"とか、音楽に限らず、外国人向けのアウトプットはたくさんあります。外国人の私から見ると、もうちょっと見せ方を工夫できたらと感じるものも多い。そういうものを見るたびに『私だったらもっとできるのに』って思います(笑)。
だから、まずは日本をわかっている外国人として、日本の素晴らしいアーティストの存在を世界に向けてアピールしていきたい。その役割は、私こそぴったりだと思うから

 

 日本人のDJが世界に進出するとともに、「TDME」が行われる12月の東京には世界中からダンスミュージック・フリークが集う。そして日本の音楽ビジネスがさらに活性化され、新しい才能がどんどん育っていく。ローレンさんが夢見るのは、そんな未来だ。

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プロフィール
Lauren Rose Kocher

Lauren Rose Kocher ろーれん ろーず こーかー

(株)ソニー・ミュージックエンタテインメント 「TOKYO DANCE MUSIC EVENT」実行委員会 委員長

アメリカ出身。シカゴ大学卒業後、2008年に日本へ。イベント会社勤務を経て2012年にソニー・ミュージックエンタテインメント入社。洋楽アーティストの物販やキャンペーンの他、新規事業を中心にさまざまなプロジェクトに携わる。昨年12月、日本初のダンスミュージックの国際カンファレンス&イベント「TOKYO DANCE MUSIC EVENT(TDME)」を手がける。今年のTDMEは11月30日から12月2日の3日間、渋谷ヒカリエを中心に複数会場で開催予定。

※ 会社、役職、年齢など、記事内容は全て取材時のものです

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