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学んだことを、商品・サービスへと展開する

友野 健一 ともの けんいち さん (株)日本SI研究所 マネージャー

Part.2

 

■具体例を示すことで、ハラール対応のハードルを下げる。

 

 友野さんがマネージャーを務める日本SI研究所は3年前、ECサイト「Smile Infinity」を立ち上げ、日本に住むムスリムに向けハラール食材の輸入を展開していた。そこに今年4月、友野さんが入社する。

 

HALAL ハラールフード通販【Smile∞Infinity】(http://www.smile-8.jp/)
在日ムスリム向けECサイト【Smile∞Infinity】(http://www.smile-8.jp/)

 

「私は、この3月まで、墨田区の観光協会におり、浅草近辺の観光にも高い関心を持っていました。その関係で日本SI研究所の方達と出会い、SEKAI CAFEのコンセプト作りのお手伝いをさせていただいたことがきっかけで、入社。そこから、日本にやって来るムスリムなど外国人向けの、食とITにまつわるインバウンド事業を手がけるようになりました。もともとは墨田区の観光全般に携わっていましたが、対象地域は墨田区から東京の東側エリア全域へと広がり、扱うジャンルは観光全般から、食とITへと絞り込まれた形ですね。

 

ムスリムの人が日本に来ると、例えば新宿や秋葉原など、いわゆる観光地に限らずとも食の心配がつきまといます。そのため、例えば友達の家に行くなどして助けてもらうことになる。また、そもそも『日本は食べられるものがない』と思っているので、持参したカップ麺などをホテルで食べたりとか…。せっかく日本に旅行に来たのになかなか食事を楽しめないのは残念ですし、受け入れる側としても、多くのチャンスを無駄にしている。そこを埋めていくのが、私達の仕事だと考えています」

 

日本SI研究所インバウンド事業部では現在、①国内外ハラール商品の仕入れ、ネット通販、卸販売、②外国人向け飲食店舗の開発・運営、③キッチンカー運営、④訪日外国人対応コンサルティングといった事業を展開している。②のSEKAI CAFE1号店が浅草にオープンしたのが、昨年11月、、現在、本年6月末のオープンを目指し、、墨田区押上の東京スカイツリー近くに2号店の準備を進めています。③はイベントへの出店が中心で、ムスリムとベジタリアンの食に対応する。SEKAI CAFEの情報については随時、提携するHALAL MEDIA JAPANに掲載。HALAL MEDIA JAPANはムスリムの方に向けたネットメディアで、マレーシア、インドネシア他多くのムスリムにリーチする発信力がある。

 

Halal information in Japan HALAL MEDIA JAPAN(480)
HALAL MEDIA JAPAN(http://www.halalmedia.jp/)

 

 

 

「今後、訪日外国人は益々増加し、様々なニーズが顕在化してくるものと思われます。そうした状況を見越して、私どもでは、ムスリム、ベジタリアン、オーガニック、アレルギーについても実店舗での経験や外国人との交流の中で、ノウハウを蓄積しています。飲食店の皆さんが参考にしたいのは、同じような店舗での実例。食に制限のある方々に向けて自分の店をどう変えればいいのか、具体例を知りたいもの。そこで私たちは、SEKAI CAFEで蓄積したハラール対応の実例、ノウハウを随時、公開しています。『あの店がこうやったのだから、ウチもできるだろう』とイメージしていただき、ハラール対応のハードルを下げることができたらと思っています。

 

日本の飲食店が困るケースで最も多いのが、豚肉の扱い。豚肉とその成分が関係するメニューは日本で約180品目あるといわれ、それをいかに取り除くかが大きなポイント。時にはハラール対応のため設備を一新したり、メニューを変える店もあります。そしてアルコール。お酒がダメなのは当然ですが、みりんもNGですし、醤油に含まれるアルコールも気をつけねばなりません。本醸造の醤油で自然発酵のアルコールを使っているものはマレーシアではハラールと認められたとの話もありますが、原則が大きく変わることはないでしょう。

 

それでも、和食店は比較的ハラール対応を行いやすいのは確か。お寿司や天ぷらなど、和食は原則豚肉を使わないので、調味料の調整だけでハラール対応ができます。唐揚げやハンバーグといった日本食もハラール認証の肉を使うことで、十分対応可能です。ムスリムの方達も豚を除けば、お肉は大好きですので、美味しい日本の和食や肉料理を提供できればと思っています。

またコンサルティング事業として、「商店街向けムスリム食のおもてなしガイドブック」の制作も行わせていただきました。「平成26年度東京都広域支援型商店街事業」という東京都の助成金事業です。墨田区、江東区、中央区の商店街に向け作成したガイドブックを使って、築地の場外市場の組合でセミナーを開いたり、試食会を開いて、現場での対応を支援する活動となりました。」

 

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■ハラール対応を、地域ビジネスの活性化に結びつける。

 

 そしての、国内外ハラール商品の仕入れ、ネット通販、卸販売。現在は3年前から運営している在日ムスリム向けECサイト「Smile Infinity」に加え、全国のハラール対応商品の発掘とそれをラオックス等の免税店に販売するB2B事業への展開も進めている。

 

「6月上旬にオープンする(※)、ラオックス新宿本店がムスリム向けの特設コーナーを準備しており、そこに向けた商品の卸販売を当社で、手がけています。そこに並ぶ商品はメイド・イン・ジャパンのハラール商品やノンポーク・ノンアルコール商品。日本の地方の良いものをお土産として持ち帰ってもらおうと様々な提案をしています。(※6月6日(土)にオープン)

商材探しとして、注目しているのは、大手企業というより、地域の中小企業の製品。例えば豚肉や豚由来成分使用しない食品の開発や、従来と別の生産ラインでハラール商品を作ったり、という対応でいえば、いわゆる大手メーカーより、地方のフットワークの良い中小規模のメーカーの方が小回りが利くんですね。製造方法の詳細や製造履歴も、大手になると調べるのに時間がかかってしまいますが、地方メーカーであれば比較的、調査しやすい。地域ビジネスとの連携、という意味でも、新たなビジネスチャンスが生まれるのではないかと考えています」

 

  6月6日にオープンしたラオックス新宿本店のムスリム向け特設コーナー。礼拝用のスペースも用意されている。

6月6日にオープンしたラオックス新宿本店のムスリム向け特設コーナー。礼拝用のスペースも用意されている。
 

 

とかく情報が不足しがちなハラールマーケティング。友野さんはその対策として、留学生を中心に日本国内のムスリムコミュニティと連携。商品開発やサービスの充実に役立てている。

 

「当社は、私が入る前、3年ほど前から、ネット通販サイトや近所のモスク、大学の留学生といった在日ムスリムとの交流を行ってきました。SEKAI CAFEを立ち上げる際にも、いろいろな大学に来ているムスリムの留学生達に声掛けして、お店の感想を聞いたりして、お店づくりに役立てました。そうした時間をかけて作ってきた関係性がビジネスを推進する上で大きく貢献しています。関わってくれるムスリムも増え、Facebookのコミュニティなども日に日に人数が増えて、コミュニティが活性化しています。

例えば以前、ムスリムの在日女子学生達に料亭街を体験してもらい、彼女達がどう感じるかをアンケートを取りました。料亭側も実際にヒジャブをまとった方々を迎え入れてみて、今後に向けて非常に参考になったそうです。また先日は彼女達に着物を着てもらい、浅草周辺の街歩きをしました。彼女達が日本を体験して楽しんでもらう中で、、私たちもさまざまなことを教えてもらっています。

 

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米国との関係が深い日本において、ムスリムの方達の情報は、明らかに不足している。彼らにはどんなものがLOVEなのか。どんなものはOutなのか。好き嫌いや感覚の部分を知る機会は正直、少ない。その部分を補ってくれるのが彼ら。僕達は彼らが日本で生活しやすくなるように応援し、その中で、テストマーケティングなどもお手伝いいただき、学んだことを商品化・サービス化につなげていくわけです

 

第3回では友野さんが見すえる2020年以降の日本、そして彼のこれまでのキャリアについて、話を聞いていく。


プロフィール
友野 健一

友野 健一 ともの けんいち

(株)日本SI研究所 マネージャー

1968年2月28日東京都出身。中央大学を卒業後、’90年に1期生としてNTTデータ通信入社。システムエンジニアとして金融機関やコンビニエンスストア向け のシステム構築を行う。勤務と並行してNPO多文化共生センター東京やNPO向島学会でさまざまな地域活動を行い、東京スカイツリーの建設決定に伴って ’07年、景観シミュレーションイベント「光タワープロジェクト」を手がける。’08年に㈱NTTデータを退職。同年よりコンサルティング会社にてプランナーとして日本橋の地域活性化事業、’10年からは一般社団法人墨田区観光協会にて広報・メディアプロデューサーとして墨田区の地域活性化事業に携わる。 ’15年より株式会社日本SI研究所にて、「食」と「IT」にフォーカスしたインバウンド事業をスタート。

※ 会社、役職、年齢など、記事内容は全て取材時のものです

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