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起業へのヒントをつかんだNTT~フォトクリエイト時代
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起業へのヒントをつかんだNTT~フォトクリエイト時代
重松さんの今につながるキャリアの原点は、大学卒業後6年間勤務したNTT東日本時代にある。入社し、千葉支店に配属された2000年は、インターネットが急激に浸透しつつあったころ。重松さんは法人営業の仕事に携わった後、PR事業などを手がけた。
「法人向けのPR誌を作ったり、あとは支店のADSLや光ファイバーを売るためのオリジナルキャラを製作したりもしました。NTT時代の経験で非常によかったと思うのが、大企業のロジックを知ったことですね。今のクライアントにも大きな会社が多々あるのですが、彼らとの交渉の仕方は、当時の法人営業の経験が役立っています。
それと、細かい資料を作れるようになりました(笑)。NTTは当時、社内資料が日本一細かくてきれいな会社といわれていました。何度も手直しさせられながら『上司に見せるだけなのに、なぜこんなにやらなきゃいけないんだ。口で説明すればいいのに…』という気持ちになっていました。でも今、それがすごく大きな力になっているんですよ」
もともと、決して独立を念頭に入社したわけではなかった。そして、会社生活もそれなりに楽しい。だが年月を重ねるうちに、自身の新規事業への思いと周囲の価値観の間にズレを感じ始めた。そして漠然と「何か面白いことがしたい」と考えるように。
「当時手がけたのが、力士の普天王関(現:稲川親方)のブログ作成のお手伝いでした。執筆するのは彼自身ですが、記事をアップロードをしたり、関連のイベントをサポートしたり、という仕事です。当時はアメーバブログができたばかり。ブログを書いている人はまだ少なく、大きな話題になったんですね。現在1万人以上いる有名人ブロガーの第一号に認定され、化粧回しをいただいたり、懸賞金をいただいたりしました。メディアに対する見せ方などを上手く設計してあげれば、これだけの反響があるのだと驚きましたし、ここで得た成功体験は非常に大きかった。この時を境に、ベンチャーへの思いはさらに強くなりました」
世の中を変えるような面白いことをしたい。そんな思いを抱いた重松さんは2006年、もともとNTTの同期でフォトクリエイト代表の白砂晃さんの誘いで、同社へ転職する。
「彼はNTTからサイバーエージェントを経て、2002年にフォトクリエイトを立ち上げていました。その姿を見ていて、大きな刺激になっていたんです。ですから私もフォトクリエイトでは、ほぼ一貫して新規事業だけをやってきました。
まず手がけたのが、ウエディング向けの写真サービス。挙式当日、撮った写真をネットに上げて、参加者に販売するというものです。それまでは、結婚式場でカメラマンが撮った写真が手元に届くまでには、2~3カ月かかるのが普通でした。でもそんなに経ってしまうと、例えば新郎新婦の親御さんはせっかく知人に自慢したくても、気持ちが下がってしまいますよね。このサービスでは、式の当日、出席者にカードを配り、そこに書いてあるパスワードを入れると当日に写真を閲覧でき、1~2週間後には手元に写真が届きます。これは、すごく話題になりました。
そして、スタジオ事業。例えば入学式や卒業式、七五三や成人式といったイベントの際、大学や神社などに機材を持ち込み、移動式の簡易スタジオを作って写真を撮る、というものです。これも大きなビジネスに育ちました」
この当時、ウエディング向けのサービスで結婚式場をクライアントとしていたことで、重松さんは起業のきっかけをつかむ。
「結婚式場は土日・祝日は埋まっていますが、平日はガラガラ。平日の稼働率を上げることは大きな課題で、式場も『平日の法人向け需要を高めたい』とずっと言っていた。面白い、と思いましたね。そしてこれが、スペースマーケットを立ち上げる大きなヒントになりました」
次回はいよいよスペースマーケットの立ち上げ、そしてプロモーション戦略について、お話をうかがっていく。
1976年1月27日千葉県出身。
早稲田大 法学部を卒業後、2000年にNTT東日本入社。法人企画営業やPR誌の編集などに携わり、’06年フォトクリエイトへ。同社では一貫してウエディングな どの新規事業を手がける。
2013年に退社し、2014年1月に株式会社スペースマーケットを立ち上げ、4月よりサービス開始。
※ 会社、役職、年齢など、記事内容は全て取材時のものです