Vol.1
「パラダイムシフトを経て復活するグローバル音楽ビジネス、失速する?日本。~オンガクの明るい未来Part2~」
早いもので2014年も半分終了。昨年末から半年ぶりのコラムです。この半年は音楽業界の日本あるいは世界のトレンドも市場データが出揃い、さまざまな動きがありました。今回はパラダイムシフトを経て復活するグローバル音楽ビジネス、失速する?日本。と題してオンデマンドストリーミングなど世界のトレンド、日本独自事情の背景を俯瞰しながら、アマゾンFIRE PHONE、 iPHONE6などますます加速するスマホ経済と音楽の関係やマーケティング戦略などについて探っていきたいと思います。では、暫くお付き合いいただければ幸いです。
Vol.1 マクロデータで見る日本と世界音楽市場。
最近電車の中で音楽を聴いている人減っていると思いませんか?
iPHONEが起したコンスーマ―の行動変化と市場
日本はマクロで見るとアベノミクス効果で円安、輸出企業の好調、株高、デフレからの脱却と経済指標は良い数字が並んでいます。かつての民主党政権交代では20年不況からの脱却についての具体的なアクションプランが実行されぬまま、未曾有の大震災が起こり、風は一気に経済主導のアベ自公政権に流れました。
この2009年から2014年は音楽エンタメビジネスにも大きなパラダイムシフトが起こりつつあったのですが、音楽ビジネスにとっても影響が大きかったのはガラケーからスマホへのシフトです。iPhoneがiPODの機能を備え、ケータイと音楽プレイヤーの合体により、予期せぬ消費者行動変化が起こっていました。音楽業界の期待をよそに、電車でイヤフォンで音楽を聞く人が減少しているというのは、調査結果でも表れていますが、その他にも色々な市場変化がおきています。
*2013年、日本はデジタル(配信)もフィジカル(CD/DVD/BDなどパッケージソフト)も音楽ソフト市場は縮小してしまった。
まず、その音楽業界の大きな市場変化を数字で見てみることにしましょう。
iPODがファッションスタイルの中で定着し、今やガラケーと呼ばれる3Gケータイで着うたを含めたデジタル市場が900億円市場に達した2008年をピークに国内音楽ソフト市場は後退を始めます。
その後、ある意味ライフスタイルの価値観を変えた大震災2011年を底に、2012年音楽ソフト市場は一時的回復を見せました。このフィジカルの大幅な回復により日本は世界一CDが売れる市場に躍り出ました。
そして2013年再び録音ソフト市場は16%の大幅な減少を見せます。(図1)
一方で世界に目を向けると音楽ソフト市場はやはり緩やかに減少を見せています(図2)。
しかし、もう少し細部を見ると2010年から減少は緩やかになり、ほぼ下げ止まりを見せています。先に見たように世界第2位の市場である日本が2012年は減少を補てんし、逆に2013年は足を引っ張る格好になっています。
2013年世界第2位の日本音楽ソフト市場は16%超という大幅な落ち込みを見せますが、日本を除けば世界市場は回復したと国際レコード連盟(IFPI)は述べています。
さて、もう一つ興味深いグラフを見ていただきましょう。(図3)
こちらは2013年の日本と米国の音楽ソフトのフィジカル(CD/DVDなどパッケージ)とデジタル市場の比較です。
米国のデジタルソフトが全体の66%に対して日本はわずか13%
グローバルの平均でも50%超がデジタル売上となっていて、世界的に見るとCDやDVDなどのパッケージソフト(フィジカル)からデジタルへの市場変化が趨勢なのに対して日本だけは2012年から逆行のカーブを描いています。
電車の中で音楽を聴く人が減少していることを裏付ける数字が、全世界10億人アクティブユーザーを持つアンドロイド150万超のアプリ収入の90%がゲームからという数字が発表されていて、どうやらスマホユーザーのゲームシフトは日本だけの状況ではありません。この他にもほぼ2人に1人がやっているLINEなどコミュニケーションツール、ECやオークション、YOUTUBEなどの無料映像視聴に費やされる時間を考えると、ガラケーの時に着うたを公式サイトにアクセス、ダウンロードに費やした時間はスマホによって変化したことは明らかです。ガラケーは公式サイトから階層的に目的のソフトに辿りつきますが(階層行動)、スマホはトップ画面に必要なアプリのアイコンが表示され、オブジェクトオリエンテッド(目的にダイレクトに辿りつく)なUI(ユーザーインタフェイス)です。
スマホが登場して暫くはガラケーのサービスをWEBアプリで対応しようとしたり、キャリアもコンテンツパックという形でスマホ端末の店頭抱き合わせ販売を図るなどガラケーのモデルをそのままスマホでも移行しようとしました。しかしその事が逆にネイティブアプリ開発を得意とする海外との乖離を大きくし、ゲームの世界でもガラケーのゲーム勝ち組はその座をネイティブアプリの新興デベロッパーに譲渡しました。
ガラケー着うたもスマホに対応したダウンロードサイトや遅ればせながら定額制ストリーミングサービスも日本でも次々と登場させましたが、UX(ユーザー体験満足度)においてゲームやリアルタイムのコミュニケーションツールを超えるサービスは登場していません。
ゲームのUIはテクノロジーによってUXが最大化していて、もともとゲームの持つ射幸心や中毒性をコンソールゲームに匹敵するビジュアル、インタラクティビティを備え暇つぶしとして最高のツールとして進化しました。
(続く)