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ウチの職人は、ハッキリ言って変態的。そこが魅力

齊藤 能史 さいとう よしふみ さん 松徳硝子(株) 取締役/クリエイティブディレクター

part.2

 

■ここはとにかく現場が黙々と働く。みんな、ドMじゃないか!? ってぐらい。

 

 齊藤さんはプロフィールにある通り、松徳硝子に入社するまで、広告制作会社と刃物メーカーでキャリアを積んでいる。特に前職では、ブランディングや広報、商品企画を手がけながら、新潟のいち刃物メーカーが世界で活躍するさまをつぶさに見ることができた。それは実に得がたい経験であり、扱う商品への愛情も実に大きなものだった。しかし会社が大きく成長するにつれ、次第に違和感を覚えていく。

 

「前職を振り返ると、刃物というプロダクトが好きすぎてしまったのかもしれません。会社の規模が大きくなると、時には生産性重視の戦略を取らざるを得ないこともある。そうなると、理想だけでは成り立たない現実も出てくるわけで、そこに難しさを感じていたのは確かです」

 

 松徳硝子とは、刃物メーカー勤務時代から交流があった。知り合ったのは7年前。愛用していた松徳硝子の製品を自社のホームページに紹介しようと考えたことをきっかけに、プライベートの時間を削って、ボランティアで広報活動のサポート、コンサルティングなどを行っていた。そして常々、現在の社長である三代目から「一緒にやらないか?」と誘いを受けていたものの、丁重に断っていたが、ある時、入社を決意する。

 

「実は当時、もっといい条件を出していただいた会社が複数あり、そのいずれかに行くつもりでした。でも松徳って、現場がアホみたいに黙々と働くんです(笑)。こんなの、ちょっとやそっとのMじゃできないだろ、ってぐらい。ちょっと変態的なんですよね(笑)。あっ、これ自分なりの、最大級のほめ言葉です。自分もドMですし(笑)、僕は変態的な職人が大好き。ある特定の部分にオタク的な細かい知識があり、おいおい大丈夫か!? ってぐらいの変わり者だけど、とてもいい腕を持っている。極端な言い方だけど、そういう熱のある職人達が、松徳にはたくさんいるんです。彼らと一緒にモノ作りてぇな、と思っちゃったんですよね(笑)

 

前述の通り齊藤さんはガラス作りをしたことはなかったが、前職の経験もあり、現場とのコミュニケーションは実に円滑だった。

 

「金属がガラスに変わっただけ。プロ野球選手が、セ・リーグからパ・リーグに移籍したようなものです(笑)」

工場の中央に陣取る「窯」。常時1,300度~1,400度の高温で焚き続けており、24時間365日火を止めることはない。
工場の中央に陣取る「窯」。常時1,300度~1,400度の高温で焚き続けており、24時間365日火を止めることはない。

 

「ガラスを見るプロ」の目を、デザインに生かす

 

 齊藤さんは商品企画において、最終的には必ず現場と一緒に考える。クリエイティブディレクターとしての意図を明確に伝えることで、現場の意識を高めさせる。それをスムーズに行うためには、今の従業員全45名という規模はちょうどいいのかもしれない。

 

考える人と作る人の役割は、なるべく明確に分けた方がいいと思っています。僕の役割は売れる商品を考え、デザインし、どう作るかを職人と一緒に頭をひねっていくこと。それに対して職人の役割は、こちらのオーダーに100%応え、高品質なプロダクトを数作ること。彼らは作家ではないので、自分が作りたいものを作ることにさほど興味はなく、『お題』があって初めてテンションが上がる。新しい型からモノを作ったり、誰にもできない技術を極めること。それが一番のモチベーションなんです。そんな状況の中、商品企画・デザインの担当は当初自分一人だったので、リソースが限られているし、立場的に商品企画ばかりをやっているわけにもいかなくて…」

 

そこで齊藤さんは、直属の部下である出荷担当の女性達から、商品の設計や企画に関するアイデアを募ってみた。すると、これが意外なほどハマった。

 

「毎日毎日、商品を見続けている彼女達から、アイデアを出してもらう。つまり『ガラスを見るプロ』を巻き込んだわけです。でも、特別なことは何もしていませんよ。『ウチの商品、ここがこうだったらいいな』とか『こういうのほしいな』というものを考えればいいんだよ、と伝えただけです」

 

もちろん、ゼロから商品を企画させるわけではない。前提となる、何のために作るのか、どんなマーケットを狙うのか、といった前提条件を提示し、彼女達がアイデアを発揮するベースをしっかりと固め、そこから彼女達に考えさせる。

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女性スタッフによるデザインの『8-hachi-』。そうめんやサラダボウルなど多目的に使えるガラスの鉢。

 

「もともと、しっかりとマーケットを分析した上で考えているので、そうそうはコケません。別に毎回ホームランを狙っているわけじゃないですから(笑)。シングルヒット、ツーベース、時にはバントでつないでいって、たまに、スリーベース、ホームランが出ればラッキー!!! みたいな開発方針です(笑)。

その上で、毎日見ている商品、家で使っている器などを参考に、みんなで考えてもらいます。でき上がったデザインは直すこともあるし、意外なほどイケていることもありますよ。彼女たちはユーザーに近い立場だし、毎日ガラスを見ている。こなれすぎた自分には気づかないピュアな面があったりして(笑)、こちらもすごく勉強になります。

まあ、会議は一人でバカスカ煙草をふかし、自分の存在も含めて”煙たがられ”つつ(笑)、ユルい雰囲気でやっていますが、楽しいですよ。ユーザーにその雰囲気が伝わったらいいな、と思っています。まぁ、製造部門といい、企画部門といい、スタッフあっての自分です。そして自分は、こんなんで酒飲みたい! 俺がほしい! って器を、道楽的にデザインする。そんなスタンスが理想ですね」


プロフィール
齊藤 能史

齊藤 能史 さいとう よしふみ

松徳硝子(株) 取締役/クリエイティブディレクター

1976年生まれ。北海道函館市出身。広告制作会社にて、グラフィックデザイナー、アートディレクター職を経て、モノ作り業界へ転身。ステンレス一体構造包丁「GLOBAL」を製造する吉田金属工業にて、ブランディング、宣伝広報、商品企画、営業統括職に従事した後に現職。ブランディング、プロダクトデザイン、商品企画から経営企画まで、あれこれやらざるを得ない典型的な器用貧乏。酒を飲んでは、グラスをデザインし、グラスをデザインしては、酒を飲む日々。

※ 会社、役職、年齢など、記事内容は全て取材時のものです

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