彼女達が信頼しているのは企業の広告ではなく、個人の言葉。|マーケターの企みVol.41:LIDDELL㈱ 代表取締役 福田晃一さん(2/4)

 
昨今、多くの企業が「インフルエンサーマーケティング」に注目している。インフルエンサーマーケティングとは、商品やブランドがターゲットとするコミュニティやセグメント内において、周囲に影響を与える人物(=インフルエンサー)にアプローチし、商品の魅力やブランドメッセージを広げていく手法のこと。今回は、企業とインフルエンサーをつなぐSNS特化型プラットフォーム「SPIRIT」を運営する、LIDDELL株式会社代表取締役CEO・福田晃一さんにお話をうかがう。
 
文=前田成彦(Office221) 写真=三輪憲亮
 

Part.2
 
彼女達が信頼しているのは企業の広告ではなく、個人の言葉。

 
Profile|福田晃一(ふくだ・こういち)  
1979年高知県出身。2000年に前身となるTWIN PLANETを創業し、学生マーケティングとモデルエージェンシーのハイブリッド事業を開始。’06年にTWIN PLANETを法人化。ガールズマーケティング事業、芸能プロダクション事業、クリエイティブ事業、コンテンツ事業を展開。’14年にLIDDELL株式会社を設立。過去100名を超えるタレントマネージメント経験を生かし、マーケティング事業を展開。’16年にインフルエンサーと企業をつなぐプラットフォーム「SPIRIT」をローンチ。
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■ライバルのいないマーケットで、ナンバーワンになる。

 

「インフルエンサーマーケティング」という言葉が頻繁に使われるようになったのは、おそらくここ数年のことだろう。その中で福田さんは10代~20代の女性にターゲットを絞り、SPIRITを通じて彼女達を企業のプロモーションにキャスティングしている。

 
「僕はもともと、読者モデルや影響力のある女性を束ねて学生マーケティングとモデルエージェンシーのハイブリット型の事業で起業。そこからずっと、ガールズマーケティングや芸能プロダクション、コンテンツ事業などをやってきました。
 
ガールズマーケティングのスタートは、いわゆる”ギャル”からです。F1層や女子大生のマーケティングというと、大手を始めライバルは多数。そこで一番になるのは無理なので、当時トレンドセッターになっていた”ヤマンバ”や”ガングロ”などのギャルに特化していきました。彼女達は目立つので、当時マスメディアに取り上げられやすかったのです。例えばバスケットボールで世界一どころか日本一にもなれなさそうだけれど、フリースローだけ死ぬ気で練習したら、それだけならマイケル・ジョーダンにも勝てるんじゃないか。そんな発想でしたね」

 まずはギャルというライバルの少ないマーケットで、ナンバーワンになった。そこから少しずつ事業を広げ、次は原宿・渋谷にいる女の子ならお任せあれ、その次は秋葉原…というように「狭い所で一番を取る」という発想からのスタートだった。

 
「事業を立ち上げてしばらくたったころ、僕らの周囲には、若い人達に人気の『読者モデル』がたくさんいました。彼女達はいわばストリートにいるインフルエンサーで、雑誌の編集部が気軽に使える存在。大人は誰も知らないけれど、同年代からは強く支持されていた。でも、どこの芸能事務所にも所属していなかった。
 
そんな子達をウチで束ねて、様々なプロモーションやイベントにキャスティングしていきました。すると一部の子に対し『次も彼女にお願いしたい』というように、企業から継続的に声がかかり始めた。それならウチで囲っていこう、となり、芸能プロダクション事業をスタートさせていきました。いわゆる読者モデルを所属させたプロダクションは、おそらくウチが初めてだったと思います。
 
いわゆる有名タレントばかりじゃなく、読者モデルなど、さまざまな人をキャスティングしてコミュニケーションを作っていく。そんな『人を中心としたマーケティング』が、今も僕らの事業の核。インフルエンサーマーケティングという言葉がホットになってきたのはここ数年ですが、僕らは十数年前から、ずっとそれをやってきたことになります。今後、世の中はどんどん『個の時代』になっていく。インフルエンサーマーケティングは、その時代にふさわしい手法の一つだと思います」
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■必要なのは「委ねる勇気」。


 インフルエンサー達が情報を拡散するのは、Instagramがメイン。彼女達の多くは、1枚の写真を投稿する時、約40~50カットを撮ってからベストの一枚を選ぶという。

 
彼女達は本当に普通の女子大生だったりしますが、SNSという個人メディアのプロデューサーであり、職人に近い感覚の持ち主。著名人などよりも少ないフォロワーだがコアなフォロワーを抱えるような子達のアカウントの方が、ある意味、価値があると僕らは思っています。紙媒体で言えば、多くの雑誌は5万部実売すれば上出来という時代。例えばその雑誌の中の2ページに広告を出して、何人がその広告に目を留めるか…。そこから考えると、5万人のフォロワーを持つインフルエンサーの方が、情報拡散力はずっと高いと考えます。今、若い子達が重視しているのは、企業ではなく個人からの情報。企業の純広告の効果はどんどん薄れていて、個人からの情報を信じるようになっているからです。
 
それを裏づけるデータがあります。実は昨年2月、18歳から25歳の100人の女性に、ほしいものや興味のあるものを何で検索するか、というアンケートを行ったところ、答えはYahoo!やGoogleなどの検索エンジンが45%で、TwitterやInstagramなどSNSが55%と実はすでにSNSが検索エンジンを逆転してるのですが、同様のリサーチを昨年11月に行ったところ、この傾向はさらに進みSNSが65%と約3人に2人がSNSで検索しているという結果になったんです。これには驚きました。
 

18歳〜25歳の100人に聞いた「何で検索するか」のアンケート。2016年2月時点の結果。

18歳〜25歳の100人に聞いた「何で検索するか」のアンケート。2016年2月時点の結果。


 
 18歳〜25歳の100人に聞いた「何で検索するか」のアンケート。2016年11月時点の結果。SNSが検索エンジンを上回った。

18歳〜25歳の100人に聞いた「何で検索するか」のアンケート。2016年11月時点の結果。
SNSが検索エンジンを上回った。


 
彼女達でいえば、かわいいものを探すならInstagram。ゴシップやモノのレビューなどを見るならTwitter。そんな感じですね。例えば、いいネイルサロンを探すなら、まずはInstagramで写真からチェックする。そして店の名前がわかったら、そこで初めて検索エンジンに行って詳細を確認するわけです。でも、そこですぐにお店のホームページに飛ぶとは限りません。その前にまとめサイトや口コミサイトに飛び、その店の評判をチェックしたりする。つまり、彼女達が信頼しているのは企業の広告ではなく、個人の言葉なんです」

 その傾向が強まりつつある今、インフルエンサーマーケティングの必要性はますます高まっていくだろう。その中で、インフルエンサーを起用する側の企業としても、注意せねばならないポイントがある。

 
「企業がインフルエンサーに対して『これをこういう感じで撮って、こういう言葉でアップして下さい』といったことを指示してくることがよくあります。これは正直、何の意味もない。インフルエンサーマーケティングは、雑誌で例えるなら編集タイアップ記事。今の時代、彼女達に響くのは、企業が作る純広告ではありません。
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ですから、僕らもインフルエンサーに投稿へ指示は極力しません。しないというよりも、できません。しいて言えば大事なのは、確実に仕事をしてくれる人をちゃんと選ぶことでしょうか。つまり彼女達の投稿内容に干渉してはダメで、伝えるのはコンセプトやキーワードぐらい。あとはその人のセンスに任せます。前回言いましたが、インフルエンサーはメディアプロデューサー。自らのSNSの世界観を最もわかっているのは、彼女達自身。つまり、企業には『委ねる勇気』が必要なんです
 
 次回Part.3ではSPIRITの独自性とインフルエンサーの評価体制、そして今後の展開について話をうかがっていく。
 
 

※参考【SPIRIT】インフルエンサーFILE(その2)
 
YURIE|キャンプを趣味とした”キャンパー”として、Instagram公式アカウントにリポストされるなど国内外問わず話題を集めている。インフルエンサーアワードジャパン2016最優秀マイクロインフルエンサー。

 

(Part.3に続く)
 
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