コロナ自粛、化粧品各社の秘策は?オンラインでの顧客接点づくりがカギに

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コロナ感染防止のための自粛期間を経て、化粧品メーカーにとっては重要な顧客接点であった店頭販売の機会縮小を余儀なくされたメーカーが大半だ。

販売員が実際に製品を使って、メイクやスキンケアを施すことで製品機能を実感させるタッチアップも、感染防止の観点から多くのブランドで禁止となり、顧客自身による製品試用も禁止じられるケースも見受けられた。

このような状況下で、オンラインを通して顧客にリーチし、製品理解や試用を促す施策に注力しはじめたメーカーが目立つ。

今回は、コロナ禍におけるオンラインでの顧客接点の創出の成功事例をいくつかピックアップする。

 

1.fracora(フラコラ)

~リアルでの顧客イベントをオンラインに切り替え。 Eコマース販売をメインとしながらも顧客へのリアル接点を重要視してきたからこそ、スムーズにパラダイムシフトの波に乗れた

 

 

「fracora(フラコラ)」は、2004年に誕生、長年カタログを通した通信販売をメインとしてきた高純度・高実感ブランド。良質な原料と高い機能を搭載した高品質の製品を開発、継続しやすい価格で提供し、熱狂的な指名買い顧客を多数獲得してきた。

元々通信販売であるがゆえに、従来は製品試用や理解を得るための機会創出に工夫を凝らす必要があった。その中で、ロイヤルカスタマーを中心に、顧客対象のスキンケアやヘルスケア等の講習イベントや新製品の説明会を“リアル”に、イベント仕立てで実施するというサイクルができあがり、顧客たちからもこのイベントが大変好評であったという。この、実際に顧客に会い、製品や美容に関する相談に応えたり、意見を吸い上げる

直接的なコミュニケーションの土壌ができていたからこそ、コロナ禍においての新製品発売にあたっても、顧客たちへの“オンライン”でのイベントを容易に呼びかけることができたという。

7月にfracoraは、オンライン形式での新製品発表会を実施。

fracora製品の定期購入者向けにメルマガを通じて参加を呼び掛けたところ、あっという間に定員50名の枠が埋まったという。オンライン新商品発表会は40分間、ZOOMのライブ配信によって開催され、2020年7月27日新発売の「ゴールデンVC原液」がいち早く紹介された。

参加者には事前にお試しサイズの新商品を送付し、イベント開催時に手に取って使用できるようにした。

イベントにおいてはスペイン産の美白効果の期待できるビタミンCがいかに優れているか、他にどのようなスキンケアアイテムをあわせて使用するのがおすすめかなどが、商品開発担当などから詳しく解説された。顧客は製品を手元で使用しながら解説を視聴し、最後に質疑応答タイムもあり、疑問点をその場で解決できる。

実際にfracora製品を愛用している40代後半の顧客も登場し、“美の先輩”として使用法のアドバイス、自身の美容テクニックなども披露。この愛用者は、2か月前から新商品を試用し、その実感をリアルに語る。画面に映る愛用者の素肌もとうてい年齢には見えない若々しさで、それ自体が説得力を帯びたプレゼンテーションになっていた。1つのコミュニティとしての一体感を醸すオンラインサロンの様相を呈していた。

 

 

フラコラは、まさに、化粧品販売の常套手段のパラダイムシフト(実店舗販売中心からEコマース中心へ)における先駆者といっていいだろう。

通信販売という販売手法をメインとしながらも、デジタル販売で陥りがちな数値分析などのみに注力したマーケティングのみではない、地道に“リアル”に1人1人の顧客へ真摯に向き合うコミュニケーションの賜物なのである。

 


愛用者も出演

 

fracoraでは第二弾、第三弾のオンライン発表会を予定している。
新生活様式に合わせ、回を重ねるごとに進化させていきたいと意気込む。

 

2.コーセー

~美容部員がメイクアップ術を公開

 

コーセーは、従来からあった総合美容情報サイト「メゾン コーセー」に、実店舗の販売スタッフである美容部員が、メイクやスキンケア商品の紹介画像を投稿できる「STAFF START(スタッフスタート)」を導入した。

 

 

タッチアップができない現状、店頭の美容部員がメイク画像やスキンケアアイテムの紹介画像の投稿などを公開することで、顧客の製品理解への欲求を満たす。

「年代(20代、30代、40代、50代、60代)」「肌質(普通肌、乾燥肌、脂性肌、混合肌、敏感肌)」「肌色(ブルーベース、イエローベース)」「まぶたのタイプ(一重、二重、奥二重)など、人によって異なる肌色や肌質、顔立ちの美容部員たちの投稿を通じて、顧客は自分に近しいタイプの美容部員を参考に、コスメを選ぶことが可能だ。

多様な顧客に対し、オンライン上でも最適な商品提案を実現している。

 

 

3.資生堂

従来より投入してきた「カラーシミュレーション」や「LINEで美容相談」に期待

 


「カラーシミュレーション」

 

オンラインでの販売促進でも常に先進的な施策を打ち立て続ける資生堂においては、コロナ以前から提供しているデジタルサービスが、ウィズコロナで真価を発揮しそうだ。

もともと化粧品業界では、コロナ以前からオンラインでの購入において、メイクアイテムの選択をサポートするバーチャルでタッチアップのための「カラーシミュレーション」というアプリを導入していた。

※現在は資生堂ウェブサイト「ワタシプラス」のオンラインショップ内、「カラーシミュレーション」のリンクから試すことができる。(アプリのダウンロードは不要)

店頭に行けず、リアルの場でのタッチアップができない状況をカバーすることに一役買うであろう。

 

「LINEで美容相談」

 

また、LINEでWebビューティーコンサルタントに相談できるサービス「LINEで美容相談」も提供しており、そこでメイクやスキンケアに関して相談が可能だ。

自粛期間、多忙なビジネスマンがリモートワークにより時間の余裕ができたことで、自身の「肌の状態」にフォーカスする男性も増えたという。実はコロナ禍で落ち込みがちである化粧品市場において、意外にも堅調だったのが男性スキンケア製品の売上だったともいわれる。

資生堂では「肌パシャ」という、自身の肌の水分量やキメなどを知ることができるアプリも提供しており、肌パシャを使用し、自身の肌を調べて適したスキンケアアイテムを購入するという男性も多いという。

たしかに、店頭で自分に必要なスキンケア製品を尋ねるのが照れ臭いという男性も多そうだ。もともとEコマースでの購入に抵抗が低く、合理的必要性を感じて購買行動をとる男性は、ニュースタンダードな化粧品市場に非常に親和性の高い顧客かもしれない。

 

新型コロナ感染拡大の収束が見えぬいま、ますますリモートでの販売促進手法の多様化・緻密化が進みそうだ。肌質や顔つきによりマッチするものを慎重に選択する化粧品をいう商材を、いかに納得感をもって購入してもらうか。ウィズコロナ時代の化粧品販売手法のニュースタンダードに注目したい。

 

 

《参照元》

「【化粧品業界初!】コーセーがSTAFF START導入。現役美容部員が自社通販サイト上でメイクアップ、スキンケアを紹介」(PR TIMES)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000015.000010183.html

資生堂「資生堂、「LINEで美容相談」サービスに「AIみみちゃん」を導入、Webビューティーコンサルタントとチャットボットの連携を実現」(PR TIMES)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001408.000005794.html

資生堂 肌パシャ
https://hadapasha.shiseido.co.jp/

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