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アイドルというカルチャーを、大きく育てていく
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アイドルというカルチャーを、大きく育てていく
今、人気のあるアイドルにおいても、コンセプトや成功の背景にあるものはさまざまだ。アイドルビジネスにおいて、こうすれば成功するという方程式はない。そう考えると、成功の鍵を握るのは、やはりプロデューサーの考え方なのだろうか。
「その辺もそれぞれですね。例えば秋元康さんは作詞、つんく♂さんは作詞作曲。もともとはモノ作りをしていた人達です。それに対して、ももクロの川上アキラさんやBABYMETALの小林啓さんは、もともとマネジャー。つまり、コンセプトや方向性を決める人です。
モノ作りは外注できるので、コンセプトを決める人がいればアイドルビジネスはしっかりと成り立つことは間違いありません。ただし秋元さんのように、頭の中に描いたストーリーを実際の詞で動かしていくことのできる強度が、AKB48の大きな強みになっているのも確か。ですから、アプローチは本当にそれぞれですね」
そして今のトレンドである、アイドルのライブカルチャーはしばらく続くと予測している。
「スマホアプリによって、アイドルを応援する形が多様化しています。例えば今、流行しているのが『CHEERZ』というアプリ。これは、さまざまなアイドルが自撮りをしてアップロードするのですが、それに対していいねを押すことで課金がされていきます。また『SHOWROOM』というアプリは、アイドルに対しておひねりを投げることができ、たくさん投げた人には相応のお礼が返ってくる、というものです。
つまり今は、アイドルを好きな気持ちを直接お金に換える活動支援ができるようになっているのです。そしてこれらは、海外決済も可能。海外からもアイドルを直接応援することができるわけです。ファンとアイドルの新たなコミュニケーション。その進化により、アイドルビジネスはまだまだ成長するでしょう」
ちなみに今、鶴見さんが注目しているアイドルビジネスの潮流は…。
「正確にはアイドルではないのですが、まず、僕も審査員として参加している『ユニドル』ですね。これは女子大生がアイドルの曲をカバーして踊る、いわば部活というかサークル活動のようなもの。多くの大学に多くのグループがあり、のべ400人ほどの女子大生が参加してライブを行っています。ほとんどの運営を、大学生が自分で行っているんですよ。彼らと出演側でチケットを手売りするので、ライブ会場は常に満員。実際にここからアイドルグループの一員としてデビューしている子もいます。
そして"自主制作系"アイドル。例えば『生ハムと焼うどん』という女子高生二人組ユニットがいるのですが、彼女達は演出、構成、台本など、すべてを自分達で手がけて赤坂ブリッツでライブを行いました。つまり、プロが作らなくても、才能さえあれば素人がスキームに乗ってビジネスを作ることができる時代になっているのです。
それらとは対照的な存在が、大手事務所が手がける劇場型ライブアイドル『原宿駅前パーティーズ』。これ最高です。ライジングプロダクションが竹下通りにオープンさせた『原宿駅前ステージ』をベースにしたアイドルユニットなのですが、劇場で見ると、めちゃくちゃ近くて、めちゃくちゃカワイイ(笑)。
ここの劇場は"アイドル劇場の最終形態"といわれ、今はチケット、ぜんぜん取れません。『ふわふわ』『原宿乙女』『原駅ステージA』『ピンクダイヤモンド』という個性がまったく違う4ユニットがあり、どこかに必ず自分好みのグループがいる、という…まるでトヨタのような、フルカバレッジ戦略を取っています(笑)」
着実にファンを増やし、メディアとしてのブランド力を上げつつあるTokyo Girls' Update。そんな中で今後、ALL BLUEとしてはどんな戦略で、アイドルというマーケットを盛り上げていこうと考えているのか。
「まず、訪日外国人に向けたインバウンドビジネスが一つの柱になるでしょう。要は日本に来てくれた方への会員サービスですね。例えば会員は日本で行われるアイドルのライブチケットを優先的に取ることができたり、専用のWi-Fiサービスを使うと、その日にどこでどんなアイドルがライブを行っているかなどの情報にアクセスできる、といった、日本に来てくれた方に向けたサービスを強化していきたいと考えています。
今のオタク市場規模は1186億円(2014年・矢野経済研究所調べ)ですが、この中で最も大きな割合を占めるのがアイドルマーケット。この市場はまだまだ伸びるといわれています。ではどこに伸びしろがあるのか。僕は、地方だと思います。
僕がこれから大事になると思っているのが"つなげる"サービスです。例えば僕らTokyo Girls' Updateは日本と海外をコネクトしていますが、つなげるものは他にもたくさんある。その中で大切なことの一つが、東京と地方をつなげていくこと。今は地方でも多くのアイドルグループが活動していて、細かいものも数えると東京に1000組ほどのアイドルが存在するといわれるのに対し、地方のアイドルはすべてを合わせて約700組といわれています。地方はアイドル文化がまだ大きくは育っていないのが現状ですので、大きな伸びしろだと思います」
今後はTokyo Girls' Updateにもっと大きな価値をつけて、大きな循環を作ることが大事だと考えている。
「アイドルとは結局、社会の縮図です。そして、いろいろな角度から感情移入できるから面白い。一度ハマるとやめられなくなりますよ。映画『モテキ』で、森山未來さんがももクロの曲を聞いて『弱っている時に聴くアイドルソングは麻薬』と言われるシーンがあるのですが、本当にその通りだと思います(笑)」
好きでたまらないアイドルというコンテンツを大きく広げて、マーケットを盛り上げる。そしてアイドルカルチャーを育てていくこと、それがみんなの繁栄につながる。鶴見さんはそう確信している。
(終わり)
※ 会社、役職、年齢など、記事内容は全て取材時のものです