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向こう3~4年のうちに、グローバル化は一気に加速する

久保 隼人 くぼ はやと さん (株)オプト 海外事業部長

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Part.4

 

■日本のマーケットは魅力的。しかし、参入は難しい。

 最終回となる今回は、オプト海外事業部でインバウンド案件を多数手がける吉田泰葉さんにも加わっていただき、外資系企業の日本市場展開について、実例を交えながら紹介する。吉田さんによると、多くの外資系企業は依然として日本という国を、アジア有数のターゲットとして捉えているという。

 

「手がけているのはほぼアメリカ企業の案件ですが、彼らは日本市場を、アジアで一番というぐらいに重要視しています。もちろん中国という巨大市場の存在はあるにせよ、日本は経済的に安定し、社会が成熟している。そして購買力が非常に高い。そういった点で、非常に大切なマーケットと位置づけている。でも、ネックとなるのがカルチャー。あまりに文化が独特で、本国で展開してきたプロモーションをそのまま持ち込んでも通じない。ゆえに、参入ハードルがとても高い。彼らはそう考えています」

 

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㈱オプト 海外事業部 吉田泰葉さん

 

 

オプト海外事業部における、インバウンド案件のノウハウ。その蓄積という点で最も大きかったのが、2013年にスタートしたビジネスだった。

 

「当時はまだ、海外事業部を立ち上げたばかりのころ。グローバルで展開している決済関連サービス企業の、日本におけるサービス展開のビジネスでした。まずはリスティング広告やディスプレイ広告といった策を施し、それなりの効果は上がりました。でも、期待したほどではなかった。やはりLP(ランディングページ)やバナーを日本向けに変える必要があることを痛感し、ローカライズをさらに加速させていきました」(久保さん)

欧米では、LPやバナーのデザインはとにかくスタイリッシュなものが好まれます。でも、日本は違う。いわゆるチラシのようなデザインが、意外と好まれていたりする。日本人は、情報量が多いことにお得感を覚えるからです。

 

例えば日本が他国と比べ、シンプルなデザインのGoogleよりもYahoo!を支持する人がたくさんいることからもわかりますよね。いわゆる"ポータル感"がある方が、受け入れられやすい。そこを理解し切れていないクライアントさんからは、たびたび『どれだけカッコいいページを作っても、日本人はぜんぜん食いついてくれない。なぜだ?』といわれます(笑)。

そのクライアントさんのLPも、もともとは非常に洗練された出来でした。ただし、この企業のサービス自体、日本ではまだまだ知られていないのが現状。そんな状況の中で、カッコよさばかりを追求しても上手くいかない。ここはまず、効果だけを見すえてLPを作ってみよう、と決めてサイトを再構築したことで、結果として上手くいきました。ポータル感が大事、という感覚は、このビジネスを通じてつかんだものです。

 

 インバウンド案件において最も難しい問題は、文化の違いだと思います。特に欧米諸国には、自分の感覚に自信があり、提案を受け入れていただけないことが多いです(笑)。彼らを納得させることは、本当に難しいです。なぜなら、彼らは自国と同じ感覚で考え『このカッコいいLPがなぜ効果を生まないのか? どこが悪いのかわからない』という気持ちになっているから。彼らには長年培ってきた感覚を捨て、文化の違いを理解してもらわなくてはいけないんです」(吉田さん)

 

page(●さん&久保さん)

 

「当時のLPを見て、明らかに足りてない部分は見えていました。日本人好みのLPに仕立てることが、直接的な効果を生む。その想定はできていたものの、理解してもらうまでに時間がかかりました。

クリエイティブには必ず、クライアントごとの"勝ちパターン"があります。彼らが全世界的に展開している勝ちパターンは踏襲しつつも、日本向けのローカライズを施す必要がある。つまり日本はそれだけ成熟した、難易度の高い市場。サイトがカッコいいだけではダメなんです。その考えの正しさを実績として示すことができた、最初の事例になりましたね」(久保さん)

 

また吉田さんによると、アメリカ企業は海外向けのプロモーション展開を社内ですべて行うことが多いという。

 

「日本展開に向けても、日本語ができる人を雇用するケースが増えているように思います。もしかすると、今後はそれが主流になってくるかもしれません。でも、日本でのプロモーションは確実に苦戦すると思います。仮に担当者が日本語を話せても、日本のマーケットに関する深い知見がないと、難しいからです。それならば、専門のエージェンシーに任せた方が合理的なのは間違いありません。

私達は週に何回も海外相手の電話会議をするなど、密度の高い情報交換を常に行っています。ゆえに多くの情報が集まってきますし、これまでのノウハウの蓄積もあります。また、他社に先駆けて海外案件に特化した組織編成を行っていますので、弊社ならではの強みを確実に出せると考えています」(吉田さん)

日本の文化は、やはり特殊。日本市場で成功するためには戦略的なローカライズが必要であり、その問題解決のための最良の選択肢としてオプトがある。それを、より多くの企業に知っていただきたいですね」(久保さん)

 

 

■今後は訪日需要により、アウトバウンド案件の比率がぐっと上がる。

 

 最後に久保さんに、オプト海外事業部の今後の展望をうかがった。

 

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「インバウンド案件に関しては今、毎期150%の成長をしています。クライアントは圧倒的にアメリカ企業が多く、当面その流れは変わらないでしょう。弊社は海外の拠点に営業機能を持っていないので、これまでは紹介もしくはお問い合わせをいただいてからビジネスがスタートしていました。でも最近はさまざまなクライアントさんとのビジネスを経て、ノウハウが蓄積されつつある。ですから、そろそろ攻めに転じていきたい。

その際、新規のクライアント開拓は、お取引先や、これまで築いてきた海外のネットワークを活かした紹介を主に、さまざまな方法を検討しています」

 

 そしてアウトバウンド案件については、現在の観光を中心とした訪日需要で、クライアントのニーズにどれだけ応えられるかが鍵だと考えている。

 

「中長期で見ると、訪日需要は落ちついてくるでしょう。訪日需要を見越したアウトバウンド案件においては、海外への広告配信こそ行っていますが、これはまだ、本当の意味での日系企業の海外進出ではない。

まずは訪日需要をきっかけに、海外マーケットの魅力を知ってもらうことから、ビジネスを広げていきたいですね。そして向こう3~4年のうちに、東南アジアのマーケットが伸び、グローバル化が一気に加速するタイミングが必ず来る。その際にコンサルティングの段階からクライアントに寄り添い、一緒に事業を成功させる。そんな展開に持っていけたらと考えています」

 

現状「海外事業はまだまだこれから」と語る久保さん。しかしながら海外事業部の成長率は昨年度の売り上げ比600%と、大きな伸びを見せているのも確かだ。

 

「現状のお取引の内訳は、インバウンド案件の割合が圧倒的に高いです。ただし今後は訪日需要によって、アウトバウンド案件の割合がぐっと上がるでしょう。アウトバウンド案件の割合はおそらく今年中にもう少し高まり、ゆくゆくは5:5、もしくは逆転すると推測しています。為替や国際情勢の変動などさまざまな要因が絡んでくるので、予測は難しいのですが」

 

成長を続けるアジア市場。特にアウトバウンド案件に関しては、他社に先駆けている大きな自負がある。確実に訪れつつあるグローバル化の波に乗り、オプト海外事業部は今後、大きく飛躍を遂げるに違いない。

 

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取材にご協力いただいた㈱オプト 海外事業部の皆さん。左から吉田さん、久保さん、坂口さん、鈴木さん

 

 

(終わり)

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プロフィール
久保 隼人

久保 隼人 くぼ はやと

(株)オプト 海外事業部長

1983年5月24日名古屋生まれ。高校卒業後、カリフォルニアのコミュニティカレッジに留学。卒業後帰国し、早稲田大に編入。2008年4月にオプト入社。不動産業界の担当を経て2013年1月、海外事業部の部長に就任。

※ 会社、役職、年齢など、記事内容は全て取材時のものです

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