原さんに学ぶ“届き方”の極意

千田 英史 [記事一覧]

株式会社PR TIMES PR・コミュニケーションDiv PRプランナー 1987年生まれ。熊本県出身。青山学院大学英米文学科卒業後、PR TIMES社入社。 企業の商品・サービスのPRプランニング、メディアプロモート支援に従事。

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Vol.2
「いまどきのPR」

 

 

こんにちは。
さっそくですが先日、グーグルのモバイルフレンドリーアップデートやFacebookによる「親しい友人の投稿と企業広告とのバランスを整える(親しい友人の投稿ほど上位に表示する)」アップデートがスタートしました。
マーケティング担当者やサイト運営者は、こうして「ルールが変わる(また、変える)」タイミングで「変化を望まないユーザー・顧客」にどう向き合うかが肝心だな、と感じた私のとある先輩、原さんにお伺いした体験談をご紹介します。

 

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原さん

 

原さんは2014年、とある「A商社」に転職し、マーケティング部で働きはじめました。「A商社」は、香水の販売を主軸事業とし、「B百貨店」と「C百貨店」にそれぞれ店舗を構えていました。

(百貨店ビジネスは、メーカーまたは商社が窓口となり、百貨店バイヤーへ商品や企画の売り込みをおこないます。)

 

 

マーケティング部の中で、原さんは「販促企画」と「CRM(顧客関係管理)」を担当し、

・企画が通れば、自分たちの顧客に、そのご案内をおこない、店舗への集客を図る。

・取り扱い開始となった新商品のご案内をおこない、店舗への集客を図る。

そんな仕事を担っていて、そうしたご案内にはすべて紙のDMを使っていました。

 

原さんは、そんな伝統化していたお知らせ体制に疑問を抱きます。

1回の情報をお知らせする作業費・郵送費等のコストが膨大にも関わらず、

誰ひとり効果検証をおこなっていなかった(正確には、手が回っていなかった)のです。

 

そこで、原さんはある日、もともとWEBプロモーションに明るかったこともあり、「郵送をやめ、電子メール[eDM]の開発をやってはどうか」というアイデアをまとめ、自社内、そして「B百貨店」、「C百貨店」へと持ちかけてみました。

 

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すると、原さんのアイデアは、社内はもちろん、両百貨店担当者にも喜んで受け入れられ、ほぼ全員が賛成という文句なしの状態に。一気に話が進みました。

 

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しかし翌日、原さんはふと冷静になります。

 

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『DMの「送付方法」の変更に、

顧客の了承を得るべきか、否か。』

 

 

 

 

すでに部署内では、

・長年続けてきた郵送を辞める理由を顧客にどう伝え、理解していただくか

・eDMに変えるメリットを顧客にどう伝え、理解していただくか。

そんな話だけが先行していました。

 

「変更のお知らせをしたうえでやれば問題ないでしょ、もともとDMだし。」

そんな意見もあったそうですが、なんとなくマーフィーの法則が起きそうな気も。。。やはりそんな話をする前に、「顧客はこの変化に満足してくれるか」を念のため調べておくべきではないか。

そう思った原さんは、初めて検証と調査に踏み切ります。

 

「B百貨店」「C百貨店」に出店している各店舗の顧客データをすべて洗い出し、

・紙のDMは、どの年齢層の顧客が持参して来店しているか

・各店舗でのメールアドレスの取得率と、年齢層はどうか

を指標に、調査をしました。

その結果、「B百貨店」にはeDMを望む顧客が圧倒的に多かった一方で、「C百貨店」には今まで通りの郵送を求める顧客が非常に多く、お知らせの受け取りかたひとつとってみても、その要望には大きな差が見られたのです。

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その差は紛れもなく「世代差」でした。

「B百貨店」の店舗は「20〜30代」が。「C百貨店」の店舗は「40〜50代」が主要顧客層であり、若年層ほど「メール」を望み、中高年層ほど「郵送」を望む結果だったのです。

 

 

 

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「こんなことすら

把握できていなかったなんて!」

 

 

原さんは、早急に改善を図りました。

顧客年齢層が高い店舗でも、メールアドレスの要望率が高ければ、試験的に紙とeDMの両方を配布するなど、「届け方」にこだわり、徹底して「届き方」を改善したところ、約数ヶ月で来店者数、売り上げにも好影響があったそうです。

郵送の廃止はもちろん撤回。

「紙だけ」から「紙もeDMも両方おこなう」ルールが決まったそうです。

 

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おしまい。

 

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このお話は、CRMの観点から、売上・顧客情報をしっかりと把握・分析することでコミュニケーションの最適化を行い、マーケティングコスト効率をあげることで売り上げに貢献したケースといえます。

 

私はいま、CRM系の新サービス「Tayori」に携わり、カスタマーリレーションについて考える機会が多いのですが、「(企業の決定事項を)顧客にどう伝え、どう理解を得るか」より、「(企業の決定事項が)どんな人に届きうるか、どう影響しうるか」をイメージするほうがどれほど重要で、また困難か、反芻してしまいます。

 

「お知らせしておく」ことが誰でも簡単にできてしまうからこそ、「届き方」が肝になる。

そんなことを考えさせてくれる、原さんのお話でした。

(注:原は仮名です)

 

 

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