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立ち上げたのは「日本一高い靴磨き店」

長谷川 裕也 はせがわ ゆうや さん (株)BOOT BLACK JAPAN 代表取締役

Part.3

 

■ありそうでなかった、カウンタースタイルの靴磨き店。

 

 丸の内の路上からスタート。品川駅港南口へ移り、一気に売り上げを伸ばしていった長谷川さん。品川に移って間もなく、勤めていた洋服店を辞め、靴磨き一本で生計を立てていくことを決意したきっかけ。その一つが、路上での活動と並行して靴磨き専門サイトをオープンしたことだった。
「お客さんに経営コンサルタントの方がいらっしゃって、そのつながりで『靴磨き.com』というサイトを作っていただきました。主なサイトの構成は、靴磨きのさまざまな技法を教科書的に紹介するページと、ブログ。当時、靴磨きのノウハウが載っているサイトはありませんでしたので、それを作りつつ、インターネットを使った靴磨きの宅配サービスを開始。そして、自分の活動をブログに上げていきました。ブログでは受注を増やすため、いろいろな人の興味を引くような内容をアップ。例えばオートバイに乗って旅に出て、全国いろいろな場所で靴磨きをする模様をレポートしたりしながら、徐々に注目を集めていった感じです。1年ぐらいで、月4~5千のPVを集めるサイトになりましたね。(※現在はクローズ)

同時に、雑誌にもいろいろと取り上げていただきました。ある男性誌では『日本を足元から変える』という特集で6ページ。なんとジョージ・ルーカス、みのもんたさんと並んで、表紙にも取り上げていただいたんです。そして、それを見た村上隆さんがラジオ番組に呼んで下さり、村上さんとの対談も実現。これは本当に素晴らしい機会でした。

そしてもう一つ増えていったのが、イベントへの出店です。もともと、僕のブログを見たイベント会社の方が声をかけて下さったことがきっかけで、百貨店などのイベントで、靴磨きをパフォーマンスとして行うようになりました。それが徐々に広まり、大切な収益源になっていきました。これらのおかげで、独立してもしっかり食っていけましたね」

 

品川駅前の路上に移り、1年が経った。長谷川さんは22歳となり、路上を離れることを決意。2008年にブリフトアッシュを立ち上げることになる。どういう靴磨き店にするか。それを考えた時、打ち出したのが現在のバーカウンタースタイルだった。

 

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「バーテンダーが立ってお酒を造るように靴を磨く。このスタイルが、イベントなどで非常に好評だったのです。実はこれ、もともとはお客さんのアイデアでした。

その方との出会いは忘れられません。路上に紹介で来て下さったあるファッション関係の方なのですが、来るなりイスに座って『カッコ悪いね』とおっしゃる。当時、僕は革ジャン姿で靴を磨いたりと、身なりには気を使っているつもりでしたから、カチンときました。でも、その方がこう続けたのです。『小さく縮こまって磨くのではなく、テーブルを置き、立ってお客さんと顔を合わせながらできないの?』。

すぐさま『ああ、これはありそうでなかったスタイルだな』と思いました。
そこで、百貨店さんのパーティで、そのスタイルを試したみたところ、大変好評で
。そのスタイルを店に本格導入しよう、と考えたわけです」

 

特にこれといった勝算なく、立ち上げた店舗だった。しかしオープンするやいなや、以前から雑誌やブログで長谷川さんのことを知っていた人達が「待ってました」とばかりに駆けつけた。そして、ブリフトアッシュは上々のスタートを切ることになる。

 

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■しっかりと利益が出れば、その分、質の高いサービスを提供できる。

 

 南青山の骨董通り沿いに店舗を立ち上げたことで、客層は大きく変わった。

 

価格の変更で、明らかにきれいな高い靴を扱うことが増えました。お客さんの社会的地位や年齢は、路上のころとそう変わっていないのですが、靴にこだわりを持ち、大切に扱う人達がいらっしゃるようになった。

路上でやっていたころは『汚いものを踏んでしまったので、きれいに磨いてくれ』というようなオーダーもよくありました。でも、ここに店を構え、今のようなスタイルで始めると、そういうお客さんはほぼ来なくなりましたね」

 

前例のない靴磨き専門店だけに、価格設定の基準はない。路上では一律500円という価格設定だったが、これも当然変更。1500円、3500円、6000円の三つのコースを作った。

 

この時に決めていたのは『日本一高い値段にしよう』ということ。僕が知っている当時の最高値は1200円。これよりもエントリー金額を高く設定しつつ、3500円のゾーンをメインで狙う。そして、たまに6000円もあったらいいな。そんなイメージでした。

ところが蓋を開けてみたら、お客さんの95%が1500円コースでした。当時から1足3040分をかけていたのですが、1500円でそれは厳しい。正直この仕事は、1000円を10分程度で稼げないと採算が成り立たない面がある。でも当時、靴磨きに1500円以上お金を払うことをまだイメージできず、この価格で仕方ないと思いました。ですから、立ち上げから3年は、めちゃくちゃ忙しいのになかなか売上が上がらず苦労しましたね。

そこからいろいろな方に、価格に関するアドバイスをいただき、考えました。やはり、きちんと利益が出るだけの価格を設定しないとダメ。しっかりと利益が出れば、その分、お客さんに質の高いサービスを提供する余裕ができるんです。それがわかりました。

 

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同時に、店の内装も変更。店内はもともと、受付も受け渡しも磨きもすべてロングカウンター1本でやっていたので、多くのオーダーを抱えてやや雑然としていた。そこで受付と磨きのカウンターを分け、内装をリニューアルしました。そのタイミングで価格も一律2500円に統一したのです。

為替など、不可抗力的な要素のない価格値上げは、なかなか難しいですね。正直、2500円であっても、対面での靴磨きだけでは十分な利益は出にくい。そこは預かりや出張訪問、イベントなども合わせて採算を考えるイメージです。そして、客層もさらに変わりました。2500円を払ってもいい、と考える方だけが、いらっしゃるようになりました

 

採算面の向上で余裕ができた分、より心を込めたサービスを提供できる。
それにより、クレームやトラブルも減っていく。そんな相乗効果もあり、ブリフトアッシュはますます売り上げを伸ばしていった。
最終回となる
Part.4では、長谷川さんが考える今後の展開について、話を聞いていく。


プロフィール
長谷川 裕也

長谷川 裕也 はせがわ ゆうや

(株)BOOT BLACK JAPAN 代表取締役

1984年千葉県出身。営業マンを経て2004年、20歳の時に、日銭稼ぎ丸の内の路上で靴磨きを始める。
1年後に品川駅前の路上へと移って徐々に顧客を増やし、2008年、南青山にBrift H(ブリフトアッシュ)を開店。
新たな靴磨きのスタイルを模索し続ける。

※ 会社、役職、年齢など、記事内容は全て取材時のものです

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