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ミッションからビジョンを導き、トレンドに乗せる

滝村 雅晴 たきむら まさはる さん (株)ビストロパパ 代表取締役

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Part.3

 

■オンリーワンになるための、組み合わせを考える。

 

  2009年にデジタルハリウッドを退職。パパ料理研究家として、新たなキャリアをスタートさせた滝村さん。たった一人のスタートにあたって考えたこと。それは「オンリーワン」の存在になることだった。

 

「でもそれは『料理で一番を目指す』という意味では決してありません。僕は、お父さんが家族のためにする料理=パパ料理を広げたい。つまり『料理』ではなく『パパ×料理』で一番を目指しているわけです。それならばオンリーワンなので、一番になり得る。つまり、僕は料理というレッドオーシャンではなく、パパ×料理というブルーオーシャンに飛び込んだわけです。

オンリーワンになるため、2つ以上のワードをかけ合わせるのは、商売をしていく上で非常に大事なことだと思います。今はインターネットで発見してもらえる時代。オンリーワンは、見つけてもらえますから

 

では、その組み合わせをいかにして探していくのか。滝村さんは、例を挙げて説明する。

 

「例えばアロマセラピストとして独立したい、と思ったとします。でも正直、アロマセラピーだけなら、仕事にしている人は山ほどいます。今の時代、世界は1ワードで自分の存在や役割を担うには、あまりにも広すぎるんです。じゃあどうするか。その時に考えるのが、アロマに何をかけ合わせるのか、ということ。

例えば僕の知人は『アロマ』と『介護』をかけ合わせて『介護アロマ』というジャンルを創出しました。そして今『日本介護アロマ協会』を立ち上げて活動されています」

 

オンリーワンになるために考えた組み合わせ。それが本当に自分のやりたいことなのか。そして、それを続けていけるのか。まずはそれを検証することが大切だ。そのための一つの基準が、独立する前の準備として毎日ブログを書き、発信し続けることだという。

 

「実は、毎日ブログを書くことは『パパ料理を広げたい』という思いを伝える手段として重要だ、と言っているわけではないんです。独立するにあたり、もちろん思いは大切です。だからその思いを毎日ブログに書き綴るわけですが、だいたいひと月ぐらい書き続けたら、書くことがなくなるものです。熱く独立起業しようと思ったのに、ほんの1カ月書き続けただけでネタが枯渇し、思いの炎が弱くなってくる。結果『ああ、そんなにやりたくないことなのかも…』となります(笑)。

だから独立を考えている人は『これをやりたい!』という思いを、毎日ブログに書いてほしいんです。小出しせず、出して出して出す。それでもまだ思いが出てくる。そんな状態ならば、それをやった方がいい。掘っても掘っても出てくる、と思い込んでいたものでも、あっという間に何も出てこなくなるものです。それを知らずに独立した時ほど、キツいことはありませんからね。

アウトプットし尽くして、結局やりたくなくなった、テンションが下がった。それは自分の将来にとって、実はすごくいい話なんです。だから、一度枯渇するまで掘り起こしてほしい。そのためには、ブログを書くことがぴったりだと僕は思います」

 

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京都東山の人気のカバン屋“一澤信三郎帆布”と、ビストロパパのコラボのトートバックとエプロン

 

オンリーワンとしての自分を売っていいきたい。そのための要素を考えるにあたり、大切なのは「ミッション」そして「ビジョン」だという。

 

「まず『ミッション』は志。永遠に変わらないもの。軸ですね。これを達成するため、時系列で生まれてくる目標が『ビジョン』。僕のミッションは『パパ料理を通じて、家族の幸せを創造する』というものです。そのためにはどうすればいいのか。それがビジョンですね。僕の場合は『日本パパ料理協会』を立ち上げ、同じ思いを持った同志(『パパ飯士』という)を募って活動したり、レギュラーのラジオ番組を持ったり、ということがビジョンです。ミッションを達成するために必要な要素が、ビジョンなんです。だからビジョンは失敗してもいいし、変えてもいいし、なくなってもいい。でも、ミッションだけは変えてはいけません。

 

オンリーワンの存在になるには、まずミッションをはっきりさせること。そしてそこから、あなたのパーソナリティに根差したオリジナルの組み合わせを生み出すことです。大資本ならば大量の広告投下をして、いろいろな会社を吸収合併してサービスをスタートする方法もあります。でもあなたが一人でやっていくとしたら、あなただけのオリジナルの切り口を探さないと難しい。何せ世の中には、売りたいモノもサービスも、あふれ返っていますからね。

オンリーワンが生まれたら、それがトレンドと上手くシンクロすれば、波に乗れる可能性は大きくなります。僕の場合もそうで、2009年に独立すると2010年にイクメンブームが来た。『イクメン料理研究家』と勝手に言われたりもしましたが、ブームが結果的に自分を押し上げてくれました。トレンドをとらえることも、非常に大事なことです」

 

■『広報リテラシー』は、今の時代に必須。

 

滝村さんはブログを書き続けることで、パパ料理研究家として認知されるための足がかりを作った。ブログを始める時に考えたのが、ルールを作り、世界観をはっきりさせることだった。

 

「まず、外で食べたものはいっさい載せない。そして、食に関係のないことも書かない。書くのは自分で作った料理のレシピと、それを作ったバックボーンです。そして写真は料理だけ。自分は基本的に登場せず、料理の背後には必ず、家庭の食卓の雰囲気を入れ込むことを心がけました。

そして何より重視したのが、決して変なものでも恥ずかしいものでもない、どこに出しても大丈夫な内容にすること。登場人物を特定させることもありませんし、誹謗中傷など決してない。広報の仕事で、対外的なリリースを書く時のような気持ちで『サザエさん』のような安心安全なコンテンツを僕は目指しました。パパ料理という世界観がまさにそうですから。

 

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子ども等が描いた絵を、データで読みこみタグに刺繍し生地に縫いつける世界で1つだけの「こまもりエプロン」と、おなじイラストが刺繍された「こまもり」

 

不特定多数の人が見るSNSやブログの投稿で、思いがけず人に迷惑をかける可能性がある、ということは気にかけたほうがいいですね。書いている本人はそれほど深い気持ではないこともあるのでしょうが、見ている側は、意外と心に残っているものです。これをしたら誰にどんな迷惑がかかるのか。そのシミュレーションが常にできていなくてはダメです。その時だけの面白さを求めて好き勝手に書いてしまうと、取り返しのつかないことになりかねません。それは、社会で一番してはいけないことだと思っています。

僕のそういった、感覚はデジタルハリウッドの14年間で訓練されてきたものです。ブログやSNSの投稿は、思わぬところで意外な人が見ているもの。その自覚がないと、明日いきなり炎上する可能性だってある。誰にでもあり得ることなんです。そういった『広報リテラシー』は今の時代、学校の必修科目にしていいぐらい、大切なことだと思いますね

 

 最終回となる次回は、引き続き滝村さんの考えるセルフブランディングのノウハウについて語ってもらうとともに、これからの展望についても話を聞いていく。

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プロフィール
滝村 雅晴

滝村 雅晴 たきむら まさはる

(株)ビストロパパ 代表取締役

1970年京都府出身。採用PR会社勤務後、デジタルクリエイターを育成するデジタルハリウッドの設立とともに入社。広報、宣伝、新規拠点立ち上げ事業などを行う。在籍中からパパ料理研究家として、パパ料理を通じた啓蒙活動を行い、2009年退職。同年、株式会社ビストロパパを設立。

※ 会社、役職、年齢など、記事内容は全て取材時のものです

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