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変わりつつあるマーケットを見すえ、「広がる種」を蒔き続ける
現在の商品プロモーションは、テレビCMとイベントの2本柱となっている。スニッカーズはテレビCMに加え、これまで「ニケツロデオグランプリ」「男子力発電グランプリ」「世界同時催眠」など、多くのユニークなイベントを仕掛けてきた。
『ニケツロデオグランプリは、仲間で参加してもらって、二人乗りのロデオにどれぐらい乗っていられるかを競うタイムレース。これはコミュニケーションを再開したばかりのころ、スニッカーズのブランドストーリーを体感してもらうために行ったイベントでした。参加者の方達が自主的に仮装して来てくれたりで、すごく盛り上がりました。そして、この時のようすをそのままCMにしています。
東日本大震災があった2011年に行った男子力発電グランプリは、男子が自転車を漕いで発電し、作った電気を東北にクリスマスツリーをともすために使ってもらう、というイベント。そして世界同時催眠は『世界中の人がお腹がすけば、もっとスニッカーズが売れるのではないか』という考えのもと、催眠術でみんなを腹ペコにしてしまおう、というイベントでした。
【男子力発電グランプリ】
https://www.youtube.com/watch?v=Fts4ePMUm7Y
【世界同時催眠】
https://www.youtube.com/watch?v=WROASkcqgwE
催眠術って一度かかってみたいけれど、なかなかチャンスがない。そこで本当の催眠術師の方をお呼びして、イベントに集まった方達に実際に催眠術をかけていただき、来場できない方にもUstreamで体験していただきました。ライブでも、ネットを通じても多くの人が実際に催眠術にかかり、置いていたスニッカーズに群がる人もいらっしゃいました。こういう、馬鹿げたことを一生懸命やっちゃうのがスニッカーズなんです」
そういったユニークなイベントを、現在はテレビCMと連動させていこうと考えている。昨年行ったのは、CMと同じく内田裕也さんを起用した「謝罪会見グランプリ」。
「『あの時あんなことをしてしまったのは、お腹がすいていて、いつもの自分じゃなかったから。あの時の悪いことはすべて腹ペコのせいにして、みんなに謝ろう』というイベントで、アジア太平洋(APAC)エフィー賞の金賞をいただくことができました。私達のコミュニケーションの核はCMとイベント。その中で、今後さらに、「ハラが減ってるキミは、いつものキミじゃない。TM」というCMでのコンセプトをイベントにも広げていくことになると思います」
【謝罪会見グランプリ】
http://www.youtube.com/watch?v=nfzsmh4Jfpk
現在も若年層をターゲットに、変わらぬ味を提供し続けるスニッカーズ。そんな状況の中、マースは、2013年度末には世界中のすべてのマース チョコレートを、1食あたり250kcalで提供すると発表。これは、スニッカーズも例外ではなかった。
「一度に食べる単位で250kcal以上のものはなくなりました。具体的にはレシピをマイナーチェンジしてカロリーを250kcal以内に抑え、それでも250kcalを超える場合は減量するなどの工夫をこらしています。チョコレート事業の全世界的方針なのですが、生活習慣病の増加などを背景に、健康的でバランスのとれた食生活に配慮した結果です」
全世界的に高まりつつある健康志向、そして避けては通れない、少子高齢化の流れ。それらは今後の販売戦略に、どのような影響を及ぼしていくのだろうか。
「健康志向は以前からすでにトレンドとして存在し、その一方で『メガ~』や『ジャンボ~』という反動的なトレンドも生まれている。だから、実はそれほど意識していません。
今、チョコレート市場は、ほぼ横ばいです。そして確かに、少子高齢化の流れは止まりません。その中でスニッカーズも、量などを工夫することで、もう少し上の年齢層も取り込むことは可能だと思います。ひと昔前、お年寄りにはチョコレートを食べる習慣はほとんどありませんでした。でも、今のお年寄りは子供のころからチョコレートに親しんでいますからね。
ちなみに、日本の一人あたりのチョコレート消費量は年間で一人2㎏。それに対し、アメリカは5㎏。ヨーロッパには10㎏を超える国もあります。一人一人の消費量を上げるという意味で、日本はまだまだポテンシャルのある面白いマーケットだと考えています」
その中でスニッカーズは、質の高いコミュニケーションとユニークなイベントを連動させ、今後も勝負していく。
「これまでさまざまなテレビCMを手がけてきましたが、決して潤沢な予算の中で作ってきたものではありません。消費者の皆さんの間で話題となり、それらが自然とメディアに流れていくことで、PRバリューを取ってきました。
今はマーケットがどのように動くか、不透明な部分も多い。
その中で、私達は『広がる種』を蒔くしかありません。話題になることで、自ら大きく育っていく種。それがどのようなものなのかは、今までたくさんリサーチをして、実践と議論を重ねてきました。そうやって作られたスニッカーズのDNAを大事にしていきたいと思っています。もちろん今後も一所懸命、おバカなことをしていきますよ(笑)」
(終わり)