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ユーザーの反応を見ながら、徐々に最適化していく
メインサイトを持たず、Facebook、Instagram、YouTube、Twitter などSNSのプラットフォームから直接、情報を発信する分散型メディアは最近、徐々にメジャーな存在となりつつある。今回は動画メディアの運営、動画マーケティング事業を行う株式会社トピカ代表取締役・麓俊介さんのお話をうかがう。
写真=三輪憲亮
今後はGOHANで得たノウハウを、クライアント様に提供していく。最も評価されているのは、運用のノウハウである。
「例えばターゲットの選定、コストパフォーマンスの向上など、集客とオペレーション改善については特にいい評価をいただいています。最近の例としては、小学館様のアウトドア雑誌BE-PALのInstagramとFacebookページの運営サポート。具体的には動画コンテンツの制作、そして投稿と広告の最適化など運営のコンサルティングですね。
これまでは写真で投稿していたコンテンツを動画化。それをこちらで一部制作することで、これまでの1.5倍のエンゲージメントを得ることができています。同時に広告配信のターゲティングやクリエイティブ改善を行い、従来の約半分のコストでユーザーを獲得できるようになるなど、成果は多数。今後はハッシュタグの改善やキャンペーンの提案、新たな動画コンテンツの提供などを行い、さらにBE-PALファンを増やしていきたいと考えています」
他にはリケンのノンオイル青じそ、わかめスープ、ふえるわかめなどを販売する食品会社、理研ビタミン(株)のInstagram運営サポートも手がける。現在コンテンツ制作を行っており、トピカによるコンテンツ配信は10月から開始される。
「こちらもGOHANのエンゲージメント率の高さ、メディアグロースの実績を評価いただき、一緒に進めていくことになりました。そして他にも、お手伝いをするメディアは今後さらに増えていくと思います。
実は近々、GOHANに次ぐ新しい自社動画メディアを立ち上げる予定になっています。食とはまったく無関係の新しいジャンルですが、そこにはもちろんGOHANで得たノウハウをいろいろ投入していきます。もちろんコンテンツの作り方はまったく違いますが、集客や情報の拡散、ユーザーコミュニケーションはGOHANのノウハウを転用できる。あとは始まってみないとわかりませんが、そこはユーザーの反応を見てから、という感じです。
僕が考えるターゲティング設定の大事なコツは、深く考えないでスタートすること。例えばキャリアが長い人であればあるほどターゲットが明確になってるが故、めちゃくちゃ絞り込んだターゲティングをしがち。それが間違っているとは言いませんが、あくまでしっかり見ないといけないのはユーザーの反応。そこから絞っていく方がいい。
ちなみに、僕の最初のターゲティングはいつも"ガバガバ"。ゆるく設定して走らせ、反応を見ながら徐々に最適化していきます。一番大事なのは、その時の数字の見方や勘どころ。この数字の伸びは正しいのか、それともノイズなのか、といった見極め方で、そこにトピカの強みがある。僕らはいろいろな会社のデータを見ているし、自社メディアの実績も含めて知見がたまっている。そこは数字の解析も含めて、すべて自社で行っているこその強みですね」
現在手がけるオウンドメディアGOHANでは現在、いくつかのナショナルクライアントとのタイアップ案件が決まっている。それに伴って、月60本から90本へと配信数を引き上げる予定だ。
「ありがたいことにタイアップ広告が増えているので、広告と通常コンテンツの数のバランスを考え、通常コンテンツの本数を上げていきます。そのために体制を変え、これまで一つだった制作ラインを二つに増やします。どうしても労働集約型になりますが、そこは仕方ないと割り切っています。
そしてユーザーさんにさらに喜んでもらうため、月に1回『GOHAN会』というオフ会を開こうと思っています。ユーザーさんと直接コミュニケーション取りながら、過去のレシピを無料で提供する、というもので、ファンとの交流を図っていきます。オンラインで集めたユーザーさんがオフラインでも幸せになれる仕組みを作りたいですね。
僕は、マーケティングはオンラインで完結するものとしないものがあると思っています。僕らが大事にしているのはユーザー目線。彼らの気持ちを知らないと、いいものは作れない。そのためにはやはり、実際に会って話すコミュニケーションは不可欠です。僕が昔いたソーシャルゲーム業界は、オフラインイベントがよくあるんです。普段はネットワーク越しで遊んでいる人達に集まってもらい、そこで新機能を発表したり、限定アイテムを付与したりで交流してもらい、アイデアを交換し、より強いファンでありアンバサダーになってもらう、ということをやっていました。その考え方がベースになっています」
その上で、動画マーケティングは今後、どう変わっていくと考えているのだろうか。
「動画のよさは『難しいことをわかりやすく伝えること』に尽きます。マーケティングにおいて、動画はマジックアイテムのように思われている。実際はそんなことはなく、あくまで手段の一つに過ぎません。その役割って本当に動画? という議論が、これから増えるでしょう。
この先、動画の活用方法が増えていくと、効果を数値でしっかり測る時代になります。例えばビデオコマースをやりましょうってなった時には、今のフォーマットや配信経路はすべて見直されるでしょうし、僕らのようなメディアでは、滞在時間や視聴時間が重要になってくるかもしれない。そんな時代においては、動画を扱う人、動画マーケティングを手がけている人のリテラシーを上げる必要があると思います。
今若い人が動画を撮影、編集し、Instagramのストーリーに上げるのは当たり前の文化になりつつある。文字を書いていた時代から写真を撮る時代になり、今は映像を撮って編集する時代。そうなった時、動画をどう活用してどうマーケティングに生かしていくか。その方法を、みんなもっと勉強せねばなりません。
僕らはそのためにも『トピカラボ』というメディアを通じて、僕らが培った動画のノウハウや業界知識をオープン化し、より多くの人達に動画の扱い方を覚えてもらえるようにしていきます。動画マーケティングをやっていく中で感じたのが、世の中に生きた情報が少ないこと。リアルな情報を隠すことなく、より多くの人に提供してあげることで、制作側もクライアントも、きっと盛り上がっていくはずです」
GOHANの運営で得たノウハウをため込むことなく、オープンにして、惜しみなく提供する。その全体最適によって、皆が成長していく。それが、麓さん今の企みである。
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