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マーケティングとは「おもてなし」である

福田 晃一 ふくだ こういち さん LIDDELL(株) 代表取締役

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Part.3

 

■ドライな投稿にならない理由


福田さんが手がけるSPIRITには、他のインフルエンサーのキャスティングサービスとは明確に異なる点が一つある。

 

「サービスのベースにあるのは、芸能事務所としての長い経験です。芸能やエンタメは少し特殊な世界で、コミュニケーションにおいて最優先されるのはタレント。クライアントさんから広告をいただき、その意向を聞きながらクリエイティブを作り込んでいきますが『タレントがこう言っているので…』というように、場合によってはクライアントさんより、タレントの意向が尊重されることがあります。そしてクライアントも、気を使ってくれる。僕らはそんな特殊な業界でやってきたので、束ねているインフルエンサーを最も大切に考えることが、当たり前になっている。

 

もちろん、横柄なやり方をしているわけでは決してありませんが、SPIRITでも一番はインフルエンサーです。目には見えない部分が大きいのですが、サービスはかなりインフルエンサーに寄った設計になっています。彼女達がいかに楽しく気持ちよくできるか。インフルエンサー目線で構築されたプラットフォームであることが、大きな違いだと考えています」

 

インフルエンサー管理画面img_4T
インフルエンサー向け案件管理画面。

 

 

中でも最大のポイントが、インフルエンサー本人が案件を選ぶこと。福田さんから『これをやって下さい』とお願いするのではなく、インフルエンサー本人が『この条件ならやってみたい』と考え、エントリーする。そんな風に、彼女達の意思を尊重する作りになっている。

 

「SPIRITではインフルエンサーの選考に当たり、案件ごとに意気込みを書かせるのが大きな特徴です。例えばおいしい水をPRするとしましょう。『私は水がとても好きで、いろいろな場所の名水をInstagramに上げています』『私のフォロワーには水に興味ある人がたくさんいるので、ぜひ御社の水をPRさせて下さい』『御社のお水が大好きで、子供のころからずっと飲んでいました。ぜひSNSに掲載させて下さい』というように、1万8千人のインフルエンサーから、商品をPRしたい人が意気込みを送ってくるのです。

 

企業管理画面内インフルエンサー選定画面
企業管理画面内インフルエンサー選定画面。インフルエンサーがやりたい案件に対してはその意気込みを書いてもらう。

 

 

実際に皆さん、とても熱量あるエントリーをしてきます。それが実際に企業の伝えたいポイントとマッチングすれば、ドライな投稿になることはまず、ありません。そういった思いが、実際のエンゲージメントにつながっていくのです


インフルエンサーの気持ちをつなぎとめる要素として、ギャランティの高さと透明性はSPIRITの大きな特徴だが、福田さんが彼女達に渡しているのは、必ずしもお金だけではない。

 

「彼女達って、ちょっと目立ちたい子だったりするワケです。だから、例えばシークレットパーティーにご招待して、そんな気持ちを少しくすぐってあげるとか。そういったインセンティブを渡すことで、僕らはまさに彼女達をマーケティングしているわけです。

僕は、マーケティング=おもてなしと考えています。彼女達をもてなして、経済を活性化する。それが、僕らがやっていること。ですからインフルエンサーには、お金やインセンティブを渡すだけでなく、例えば仕事が終わった時に『今回はありがとうね』とフォローの言葉をかけてあげます。それもまた、おもてなしの一部分。そこからまた彼女達の話を聞いていくことが、サービスの改善につながっていくのです」
 SPIRITのもう一つの特徴が、案件終了後に企業とインフルエンサーが相互評価を行っていることだろう。

「インフルエンサーには、案件の終了時に感想を書いてもらいます。例えば、コスメのPRがあったとして、インフルエンサーがInstagramで投稿が完了した後に、“今回の商品の使用感はとても良かったです!ですが、パッケージがもう少しオシャレだったらInstagramで投稿しやすかったです”などと、商品についてきちんと評価し、その感想はクライアントさんにクローズな形でフィードバックします。

そして企業は投稿のクオリティの他、時間を守ったか、連絡はきちんと取れたか、ハッシュタグのセンスはどうかなど、さまざまなポイントでインフルエンサーを評価し、今後のPRに活かしていきます」

 

SNS特化型プラットフォーム「SPIRIT」案件レポート画面
企業管理画面内案件レポート画面。商品について評価し、その感想はクライアントにクローズな形でフィードバックされる。

 

 

■「インフルエンサーがモノを売る」時代


福田さんはSPIRITのプラットフォーム事業に加え、まずはメディアの立ち上げを目指していくという。

「作っていきたいのは『インフルエンサーズメディア』。Part.1からお伝えしてきましたが、1万8千人のインフルエンサーの情報拡散力はすごいものがあります。例えばさまざまなニュースに対して、彼女達がひと言添えるようなメディアですね。それを自らのSNSに投稿してもらい、大幅に拡散されたらポイントをつける、などのメリットを与えてもいい」


クライアントの商品について告知をするメディアの次に、インフルエンサーが自らお勧めのモノを販売する、巨大な「商店街」を作る。

 

「僕は、インフルエンサーがモノを売る時代になると考えています。例えば海外では、Instagramに購入ボタンがつきました。今後、益々ソーシャルコマースが増えるでしょう。そして、僕らは今、SPIRITに1万8千人のインフルエンサーを抱えています。それは、店舗兼バイヤーを抱えているようなものだと考えます。影響力のあるインフルエンサーが集まった、巨大な商店街、“インフルエンサーズショッピングストリート”を作っていく予定です。
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インフルエンサー達の多くは自分のセンスや世界観に共感を得て影響力を持ちます。そんなインフルエンサーは、オシャレだとかカワイイ、イケてるという判断、所謂『目利き』ができるワケです。その目利きで、売れるもの売れないものを、もしくは“欲しいもの欲しくないもの”を選定して自分のSNSで販売する。つまり、ネット上に1万8千人のバイヤーが運営する小売店が誕生するわけです。そして僕らはそれを束ねる商店街=プラットフォームを整え、収益を得ていく。そんなビジネスモデルです。これは個人が創る新たな流通になるポテンシャルを秘めていると思います」

 

 そして今後は、インフルエンサーの育成も手がけていきたいと考えている。

 

「現在、企業を対象に、インフルエンサーマーケティングの概要や成功事例などをお話しするセミナーを毎月開催しています。それに加えて今後考えているのが、インフルエンサーへの講習会です。自分の個性・感性をいかにしてSNSの中で世界観を築くか、そのための創意工夫のレクチャーや、企業からの案件の依頼時にしっかりとした対応・マナーについて、あとは広告表示の必要性、ステマが何故ダメなのか、根本的な部分からもインフルエンサーのリテラシーを高めていきたい。

 

例えば『インフルエンサー検定』みたいな認定を出すのもいいですね。それがあれば、企業が安心してインフルエンサーに依頼できる要素のひとつになるかもしれません。

最終回となるPart.4では、引き続き福田さんが考えるSPIRITの今後、そしてこれからのSNS戦略について、さらにお話をうかがっていく。

 

※参考【SPIRIT】インフルエンサーFILE(その3)

しぴたん|カラフルなパステルトーンの個性的なファッションが人気のフリーランスモデル。トレンドを多く発信する。

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プロフィール
福田 晃一

福田 晃一 ふくだ こういち

LIDDELL(株) 代表取締役

1979年高知県出身。2000年に前身となるTWIN PLANETを創業し、学生マーケティングとモデルエージェンシーのハイブリッド事業を開始。
’06年にTWIN PLANETを法人化。ガールズマーケティング事業、芸能プロダクション事業、クリエイティブ事業、コンテンツ事業を展開。
’14年にLIDDELL株式会社を設立。過去100名を超えるタレントマネージメント経験を生かし、マーケティング事業を展開。
’16年にインフルエンサーと企業をつなぐプラットフォーム「SPIRIT」をローンチ。

※ 会社、役職、年齢など、記事内容は全て取材時のものです

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