MA(マーケティングオートメーション)の活用事例

塚本 あぐり [記事一覧]

バリューコマース株式会社 D&Tソリューション本部 コンサルティングプランナー 首都大学東京卒。アカウントプランナーとしてアパレル、メーカー、 小売・流通など様々な業種のクライアントをコレまでに50社以上担当。マーケティングオートメーションツールR∞(アール・エイト)の機能開発ディレクションにも携わる。R∞を通じた支援において、導入後わずか半年で売上全体で152%押し上げた実績をもつ。 現在はWeb広告の集客の領域からCRM領域までを含めて、年商1000万円から数10億円規模など幅広い規模のEC事業者を対象に顧客・購買データを活用したコミュニケーショ ン施策の企画・設計・提案を通じたクライアントの売上貢献に力を注いでいる。(2016年7月より、アール・エイトはバリューコマースが提供しております)

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Vol.4
「オートメーションなのに人が重要!?~MA(マーケティングオートメーション)選びのポイントとは~」

 

~導入前の課題から運用・課題解決まで~
メール開封率が約3倍の45%に増加、CVRも約1.9倍に。

 

本コラムでは、マーケターが陥りやすい点をご紹介しながら、今まで下記4つのMAを選定するポイントについてご紹介してきました。

 

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では、上述のポイントをふまえてMAを導入した企業は、どのようにMAを活用しているのか?実際に効果が出ているのか?皆さんが一番気になるところだと思います。本コラムのまとめとして、今回は上記のポイントをおさらいしつつ、実際に私がMA導入の支援を行い、現状MAを活用している日本生活協同組合連合会(以下日本生協連)の事例を皆さんにご紹介いたします。MA活用の成功イメージを持っていただければと思います。

 

■日本生協連について

日本生協連というのは全国326の生協が加入し、会員生協の組合員数2,830万人、総事業高は約3.4兆円という日本最大の消費者組織です。主な事業としては、コープ商品の開発と会員生協への商品供給(販売)を行っています。生協というと生鮮食品ふくめ飲料や日用品を販売しているイメージがあるかと思いますが、日本生協連では、「くらしと生協」という全国共通のカタログを発行し、洋服や家具、寝具など「非食品」と呼ばれる分野を扱う事業も行っています。また、カタログの発行だけではなく約10年前からカタログに掲載した商品をネット上で購入できるECサイト「くらしと生協」の運用に事業を展開し、現在利用者数約40万人の規模となっています。

今回、この「くらしと生協」ECサイトを運用している通販事業部において、MAを導入していただきました。

 

 

「くらしと生協」ECサイト
「くらしと生協」ECサイト

 

■MA選定のポイント①

~MAで実現したいこと=課題を明確にする~

第一の選定ポイントは、「MA=マーケティング活動の作業部分の自動化」というMAの役割をふまえた上で、「MAで何を実現したいのか?」マーケターが抱えている課題を明確にすることでしたね。日本生協連では、「くらしと生協」というカタログECサイトを運営しており、ECサイトから発行しているメルマガの開封率とクリック数が年々下がってきているという課題を抱えていました。

 
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というのも、生協には「コープみらい」や「コープこうべ」など地域ごとにも組織があり、組合員には日本生協連だけではなく、地域の会員生協からもメルマガが配信されているという状況が続いていました。双方からメルマガが送られるため、一人の組合員が受け取るメルマガの数が増加し、更に、同じ内容を一斉配信による手法の恒常化によって、徐々に情報を見られなくなってしまっていました。

上述のメルマガ施策を改善するために、メルマガの通数ではなく、質を上げる必要があると考え、そのためには組合員全員に一律の内容を送るのではなく、一人一人の興味に合わせた内容に変更しなければならない。「個別の接客=One to Oneコミュニケーション施策の実施が重要だ」、と認識し、その施策実現のためにMAの導入を検討し始めました。MAに対する要望は企業によって様々ですが、日本生協連の場合はまず「メルマガ施策の改善」という課題が明確だったため、その後のMA検討がスムーズに進んだように感じます。

 

 

MA選定のポイント②

MAで実現したいことを短期・長期視点で分解する

第二の選定ポイントにおいては、実は、導入までのフェーズで日本生協連も、実現したいことの分解・整理については方向性のみ決まっているような状態でした。導入に際し、どういったデータを連携して活用していくか、組合員に対するOne to Oneコミュニケーション施策のシナリオ(誰に・どのタイミングで・どんな内容を送り、アプローチしていくのか)をどう設計していくのかを考え、準備していく中で、「一度購入した顧客に、二度目も購入してもらう=リピート購入率を上げる」という新たな課題が見えてきました。

このように、実際に活用フェーズになり施策を考えていくと、新たな課題を発見したり、やりたい施策がたくさん出てきます。日本生協連の場合、第三の選定のポイント「MAに拡張性があるかどうかを見極める」を考慮してMAを選定・導入したため、導入後のフェーズでやりたい施策が増えても問題なかったのですが、洗い出せるようであれば事前に洗い出しておいた方が、とてもスムーズに導入ができるでしょう。

前回のコラムでお伝えしたとおり、実際の施策設計は事業へのインパクト(売上など)と実行のしやすさ(データ連携など)を考慮して設計します。日本生協連のこの新たに発見した課題ですが、細かく見ていくと初回購入時にある特定のカテゴリの商品を選択している顧客層のボリュームが大きいことが判明しました。そのため、One to Oneコミュニケーション施策の初めの施策として、この顧客層にターゲットを絞り、まず二回目の購入を促す施策を実行しました。

 

 

MA選定のポイント③&④

MAに拡張性があるかどうか&運用フローを簡単に構築・実践できるMAかどうかを見極める

上述の課題をもとにMAを検討していた日本生協連は、この第三、第四のポイントを非常に重視し、前回のコラムでもご紹介した「アール・エイト」を導入しました。様々なMAがある中で、アール・エイトを導入する決め手になったのは、3点ありました。

■日本生協連MA導入の決め手 3つ

 

◆1-
そもそも実現したかったOne to Oneコミュニケーション施策はもちろん、メルマガ施策の自動化という面で感じた簡易さ、利便性。

◆2-
導入・運用にあたり既存システムとの大規模な開発が不要で、運用担当者の範囲で導入準備や実際の施策実施を進めることができる点。

◆3-
現在行っているメルマガ施策以外にも、サイト上での行動や購買の嗜好性に応じたメールの出し分け、サイトログの分析など豊富な機能があり、データを連携することで多様な施策に挑戦できるという、今後の展開もふまえたMA活用をイメージできた点。

いくら課題を解決できるツールであっても、運用側が使いこなせないと意味がない。第一回のコラムでご説明したように、「MA≠魔法のツール」です。MAを活用するには人が介在する、ということを理解して、運用面に着目してMAを選定・導入を決定いたしました。

■日本生協連のMA活用の効果

メール開封率が約3倍の45%に増加、CVRも約1.9倍!

MAを活用して初回購入者のみを抽出し、二回目購入を促す個別でのメール配信したこの施策は、従来のメルマガ施策と比較して、開封率が約3倍の45%に増加、CVRも約1.9倍という高い効果が出すことができました。

 
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この施策において、MAが担った役割は≪初回購入者≫という「特定の対象者の抽出」と、その対象者を「設定したタイミングに自動で」抽出し、「指定したタイミングでのメール配信」という部分でした。この施策自体を考えたのは「マーケター=人」であり、実際に配信するメールの内容を考え、ツールにMAの施策を設定したのも「人」です。

日本生協連では、以前からこのような施策を行うことによってメルマガ施策を改善したいと考えていたものの、対象者の抽出や個別でのメール配信設定を手動で行うには手間がかかりすぎてしまい、なかなか実行に移せずにいました。日本生協連に限らず、リソースの問題で「やりたいけどできない」といった思いを抱えているマーケターはたくさんいると思います。その思いを汲み、「やりたいことを実現していく」その後押しをしてくれるのがMAだと私は思っています。

 

 

日本生協連の事例の詳細、またR∞(アール・エイト)を活用した別の事例など、MAの活用について詳しく知りたいという方は是非お問い合わせください。→【お問い合わせはコチラ】

これまで4回にわたりMA選定のポイントから実際の活用事例についてご紹介してきました。MAという言葉をWEBマーケティングの業界において、よく耳にするようになりましたが、第一回目のコラムに記載したとおり、まだまだ詳しく知らない、だからこそ導入に二の足を踏んでしまうマーケターも少なくないと思います。

ただ、日々施策の実行や効果検証に追われているマーケターの方々こそ、MAの活用によって、作業者としてではなく、戦略家としての活動にシフトしていくことができるのも事実です。

「やりたいことを考える・実現していく」という、マーケターとしてより貢献度の高い活動において皆さんがお力を発揮されますよう、私もMAを通じてご支援ができればと存じます。

ご購読ありがとうございました。

 

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