日本の「あれ」がユーチューブで爆発的にシェアされた理由

内田 洋子 [記事一覧]

NewEdge PR LLC 代表(兼:ロイヤルアドバータイジング・ニューヨーク支部代表)、Teezler創設者、JinJour編集長。海外市場向けマーケター&新サービス企画・プロデューサー。 神奈川県藤沢市生まれ。15歳で留学のため単身渡米して以来、長い間現地で培ったアメリカ人の考え方やものの見方を活かし、ニューヨークで数々のマーケティングプロジェクトに携る。 2014年に日本の良いモノを海外に広めるためニューエッジPR社を設立。 現在はニューヨークで主に海外市場向けのEC・デジタル戦略やメディアプロジェクト、新サービスのプロデュース事業を展開中。(写真:ブロードウェイにて)

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Vol.10
「ニューヨーク発!マーケ最新事情」

さて、今年初のコラムとなる今回は日本の意外な動画が海外で話題をよんでいる件についておとどけします。ニューヨークにある非営利団体がYOUTUBEで配信した動画が他のソーシャルメディアを次々に巻き込み、1月末頃から2月中~下旬ごろの約1カ月以内に7百万回以上の閲覧数を獲得。バイラルビデオとなった日本のある動画が全米で話題となりました。

 

 

 

 (スクリーンショット:Youtube.com)
(スクリーンショット:Youtube.com)

 

気になる動画の内容はというと、日本人にとっては至って普通の小学校の給食の様子を撮ったもの。給食当番が給食を準備したりする様子や、その後のかたづけや掃除の様子までをシンプルに紹介したビデオですが、特にアメリカでは多くの人たちの関心と注目を集め話題となりました。

日本人であれば平凡な学校の給食の風景。なぜ海外でここまで話題になったのでしょうか?今回はこの動画をきっかけに多くの人の心に刺さるコンテンツの作り方のポイントでもある「コンテクスチャル・マーケティング」という考え方をベースに、この動画がアメリカはじめ海外で広く注目され、バイラルになった理由について考えてみます。

 

 

 (スクリーンショット:Youtube.com)
(スクリーンショット:Youtube.com)

 

コンテクスチャル・マーケティングとは?

コンテクスト(Context)の形容詞、コンテクスチャル(Contextual)とは「背景や状況を読み込んだ」という意味を指します。消費者のおかれている背景や状況、例えば消費者がいる場所や使っているデバイス、消費者好みの言語、カルチャー言語、宗教観やその他社会的な背景のほかに消費者の購入意向(Intent)、購入意思決定までの一連の段階等、を指します。

では、給食の動画なぜ短期間で爆発的に閲覧されバイラルになったかというと、この動画が非常にコンテクスチャルであったことが理由として挙げられます。

 

1. オーディエンスの明確化:

動画にも録音されていた通り、この動画はもともとニューヨークの人たちに向けた動画であったことが分かります。オーディエンスが明確だったがために、字幕は現地の人が分かりやすい英語になっていたこと、そして動画自体ユーチューブからの配信であったため、モバイルフレンドリーであったことにより多くのメディアでの動画の共有がし易かった事やシェアを促進した事は間違いなく大きな要因だったと思われます。この「誰に向けて」というのが明確であった事はバイラルになった理由の中でもまず一番大きな要因であった事が考えられます。

 

2. オーディエンスの背景と状況:

ここ数年、アメリカでは給食システムが肥満児を生み出しているという問題が深刻化。毎年300万人の子供たちが肥満と診断されるなか、給食の栄養価に関する批判が高まっており、ミシェル・オバマ大統領夫人による数々の食育促進活動からもこのトピックはアメリカでかなり関心が高まっているという背景があります。この動画が配信される前にもいくつか学校の給食を比較するようなビデオや食や栄養に関するドキュメンタリー等の多くのコンテンツが配信されるなど、給食に関する問題は多くの人が関心を高めると共に関連するコンテンツ量も増えてきている状況が分かります。

 

 

(スクリーンショット:グーグル。学校の給食に関するトレンドや関心が上昇中。)
(スクリーンショット:グーグル。学校の給食に関するトレンドや関心が上昇中。)

 

 

3. タイミング:

動画が多くの媒体にピックアップされ爆発的に話題となった前、実はアメリカでは学校の給食問題で大きなニュースがあったという背景もありました。学校の給食の栄養価を考えなおし、見直す法案に関してミシェル・オバマ夫人が大きな功績を遺したとして取り上げられたなど、学校給食のシステムの見直しに関するトピックは非常にタイムリーなものであった事もバイラルの要因であった事が考えられます。

 

 

(スクリーンショット:Bloomberg.com)
(スクリーンショット:Bloomberg.com)

 

 

4. コンテンツ以上の役割:

もちろん、コンテンツ自体が面白くシェアしたくなる動画であった事も要因の一部であると考えられます。給食以外の様子では子供たちが教室を掃除をしたり、先生の話をちゃんと聞いている様子など、アメリカではありえないような様子が「素晴らしい!」というコメントが多くみられ、「アメリカではありえない、見てみてー!」という感情的なシェアがバイラルにつながった事も大きな要因と感がえられます。Youtubeのコメントや動画シェア時のコメントを見るとアメリカの給食システムについてディスカッションが始まったりするなどして、この動画は情報を伝達以上の役割を担い、アメリカの給食システムに関してソーシャルメディアを通して考える場となった事も見受けられます。

コンテクストの重要性

コンテンツをベースにしたインバウンドマーケティングや、コンテンツをベースにしたマーケティング手法は今後増々注目されると思いますが、バズや認知度を狙ったマーケティングを企画する際、このようにコンテクスチャルであるかどうかが今後は成功のカギになると思います。本当の意味で消費者やオーディエンスの間で「話題」となり「重要視」されるようになるには、今後も消費者の立場から見た「コンテクスト」を知る事がより重要となる事は間違いないでしょう。

 

実際の動画はこちら:

 

この動画があまりにも流行ったため、アメリカvs日本の比較動画も配信されました。

 

Japan's school lunches put America to shame.Like ATTN: on Facebook.

Posted by ATTN: on Thursday, February 18, 2016

いかがでしたか?

さて次回は「フェイスブック社員から直接聞いた2016年に知っておきたい3つの事」をお届けします!

 

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